不動産ニュースと不動産業務のためのサポートサイト

地所H、FMT構法採用の木造賃貸

FMT構法初採用の賃貸住宅の施工現場
3.1mのキャンチスラブを実現

 三菱地所ホーム(株)は6日、「都有地活用による魅力的な移転先整備事業」の初弾として開発を進める賃貸住宅(東京都足立区、総戸数16戸、他店舗2区画)の施工現場を報道陣に公開した。

 同事業は、「防災都市づくり推進計画」に基づいた木造住宅密集地域の改善の取り組みをさらに加速するため、都が2018年度に開始したもの。木密地域の住民が近隣との関係を保ちつつ移転できるよう、民間事業者とともに進めている。今回対象となった足立区江北地区は20年に募集を開始。同社と(公財)東京都都市づくり公社(代表法人)、(株)スタジオ・クハラ・ヤギ、(株)ハウスメイトパートナーズのグループで事業を提案したところ、「木造による温かな外観に路地空間を計画し、コミュニティを創出する設計」などが評価され、21年3月に提案が選定され、都と定期借地権設定契約を締結し、事業に着手していた。同社は施工を担当する。

 建設地は、日暮里・舎人ライナー「江北」駅徒歩約11分に立地。敷地面積776.99平方メートル、準耐火木造の地上3階建て。2~3階は、木造軸組工法+CLTパネルを、店舗スペースとなる1階には、木と鉄骨によるハイブリット構法「Flat Mass Timber(FMT)構法」を採用した。実物件での採用は今回が初となる。

 同構法は、壁や梁などの構造要素が空間内に出てくることが少ないシンプルな構造躯体で、高い耐震性能を保ちながら、従来の木造建築にはない自由なファサードデザインや空間デザインを実現する。集成材厚板パネルを水平、垂直構面に使用し部分的に鉄⾻梁を用いることで、木の性能を最大限に⾼め、既存⼯法では難しかった最⼤6.6mの⼤スパンや最⼤3.1mのキャンチスラブを実現。軒下空間を創出した。構造材や仕上建材の一部に多摩産木材を使用し積極的にあらわしとすることで、木造による温かみのある外観デザインとした。建物中央は吹き抜けの路地空間とし、住民の交流促進や地域の回遊性向上を図る。

 間取りは、ワンルーム~3LDKを用意。木密エリアからの住み替え者が確定してから、一般募集をかける予定。16戸中5戸を木密地域からの移転用住戸としているが、希望者が定員を下回った場合は、一般募集へ組み入れる。16戸中6戸を占めるワンルーム(29.58・35.88平方メートル)で、賃料は6万9,000~7万2,000円、同じく6戸の1LDK(37.36・37.65平方メートル)は8万7,000円。管理はハウスメイトパートナーズが担う。1階の店舗区画は141.33平方メートルと164.95平方メートル。賃料やテナントは未定。竣工および入居開始は23年8月の予定。

 説明会では、4月1日付で就任した同社代表取締役社長の細谷 惣一郎氏が登壇。同氏は「FMT構法は、住宅で引き合いが来ている。今後は、非住宅中大規模建築物の開発にも注力していく。統合木材会社であるMEC Industry(株)をはじめ、三菱地所グループのシナジーを生かしながら、木造化・木質化のトップランナーとして都市における中大規模木造建築物を増やしていきたい」と述べた。

 なお同社は、デザイン性の高いFMT構法とコストメリットの高い2×4工法を掛け合わせた、耐火建築物仕様の5階建て建築モデルの技術開発を進めている。同モデルによってさまざまな規模と用途に対応する仕組みを構築する考え。

「グループシナジーを生かして、都市の木造化・木質化を進める」と話す細谷新社長


最新刊のお知らせ

2024年5月号

住宅確保要配慮者を支援しつつオーナーにも配慮するには? ご購読はこちら