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世界の都市総合力、東京は「経済」「環境」が課題

 (一財)森記念財団 都市戦略研究所は9日、「世界の都市総合力ランキング(Global Power City Index)2023」を発表した。世界の主要48都市を対象に、都市の総合力を構成する6分野(経済、研究・開発、文化・交流、居住、環境、交通・アクセス)・70指標で複眼的に評価し、順位付けを行なうもの。今回が16回目。

 総合トップはロンドン(1,646.7)で、以下、2位ニューヨーク(1,506.4)、3位東京(1,375.8)、4位パリ(1,363.7)、5位シンガポール(1,264.7)。トップ5都市の順位に変化はなく、特にスコアが僅差である東京とパリは共にスコアを落とし、逆転は起きなかった。

 東京は、「居住」が11位から3位に上昇。為替変動の影響を受け、生活コストの安い都市として「住宅賃料水準の低さ」(20位)、「物価水準の低さ」(24位)の順位の上昇が影響した。「交通・アクセス」は、東京の強みである「駅密度」(5位)や「公共交通機関利用率」(1位)で高順位を維持し、10位から8位へと上昇した。
 一方で、16年調査時点で1位だった「経済」は10位へと転落。「GDP成長率」(47位)、「優秀な人材確保の容易性」(40位)、「法人税率の低さ」(43位)など例年の課題が改善されなかったほか、コワーキングスペースやインターネット速度を測る「ワークプレイス充実度」(22位)でも順位を落としたことが響いた。また、「環境」は13位から16位まで低下。「環境への取り組み」(15位)や「都市空間の清潔さ」(10位)で順位を落としたことが影響した。

 併せて、4指標グループ14指標で構成する「金融」分野を加え、各都市の国際金融センターとしての競争力を評価、ランキング。1位はニューヨーク(211.6)で、「上場株式時価総額」「株式市場売買代金」「世界トップアセットマネージャー」「国際弁護士事務所」の4指標で1位を獲得した。次いで、2位ロンドン(203.0)、3位東京(116.2)、4位北京(96.3)、5位上海(96.3)。東京は「大手保険会社本店」「世界トップ年金ファンド」の2指標でトップを獲得したが、トップ2都市との差は大きく、金融仲介機能以外、とりわけ高度専門人材の評価を高めることが求められている。

 同財団理事で明治大学名誉教授の市川宏雄氏は、東京の都市競争力向上のカギについて、「『経済』は行政主導で進めるもので、すぐに改善を図るのが難しい。まずは民間が手掛けやすい『文化・交流』の底上げに力を入れるべきだ。東京の弱みに、ナイトタイムエコノミーが不足している点が挙げられる。例えばシンガポールは夜になるとライトアップが始まり、ベイサイドに人が集まる。こうした夜間の観光拠点を充実させることで、かなり順位を上げられるはずだ」等と語った。


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