国土交通省は1日、都市緑地の役割をまちづくりの視点から考える「まちづくりGXシンポジウム~都市の未来が緑で変わる~」を赤坂インターシティAIR(東京都港区)で開催。オンライン併用で実施され、関係官庁や企業の関係者など800人超を集めた。
都市緑地をめぐっては、5月22日に「都市緑地法等の一部を改正する法律」が成立。今回のシンポジウムは、まちづくりに携わるステークホルダーが「“緑”דまちづくり”」を考える場とするべく、都市の緑地に関する専門家の基調講演や、緑地創出に取り組む企業担当者らと専門家のパネルディスカッションが実施された。
冒頭、国土交通省前都市局長で国土交通審議官の天河宏文氏が「日本の大都市は、世界と比べ緑地の充実に差が見られ、また緑地が減少傾向にあるというデータもある。官民を挙げて、緑地創出の取り組みを進めていくことが重要だ」と挨拶。その後、同省前都市局都市計画課長で大臣官房参事官(人事担当)の鈴木 章一郎氏が、都市緑地法の改正について、概要を説明した。
基調講演では、まず、千葉大学大学院 園芸学研究院 教授の柳井重人氏が「なぜ、いま都市の緑なのか?─ひと・暮らし・まちをつなげる緑のはたらき─」をテーマに、緑地の整備や管理の重要性などについて事例を交えて紹介。柳井氏は、「温室効果ガスの吸収や固定、ヒートアイランドの緩和など、緑にはいろいろな役割と効果がインフラとして期待できる。緑は多面的な機能を持っているため、一つの課題だけでなく、複数に同時に対応できる可能性を秘めている」と言及した。次に、MS&ADインシュアランスグループホールディングス(株)サステナビリティ推進部 TNFD専任SVPの原口 真氏が、「ネイチャーポジティブに向かう世界の潮流と都市の緑」と題し、地球環境を考えることを前提条件にビジネスを組み立てていくことの必要性を指摘した。
続けて、大日本印刷(株)サステナビリティ推進委員会 事務局 局長の鈴木由香氏、東急不動産ホールディングス(株)グループサステナビリティ推進部 部長の松本 恵氏、(株)三菱UFJフィナンシャル・グループ経営企画部 ブランド戦略グループ 部長 チーフ・コーポレートブランディング・オフィサーの飾森 亜樹子氏が、緑に関する自社の取り組みについて報告。その後、柳井氏をコーディネーターにパネルディスカッションが開かれた。原口氏、鈴木由香氏、松本氏、飾森氏、鈴木 章一郎氏がパネラーとして登壇し、「成果が見えにくい緑に対する取り組みを、それぞれの企業がなぜできたか」「どう次の取り組みにつなげていくか」「地域との関係性」について意見を交わした。
パネルディスカッションの終わりに、原口氏は「資本関係のグループでもない企業が、同じ目標に向かって一緒にやる、行政を動かすというのは、世界的にない動き。つながりをさらに広げ、また今までやってこなかった企業は先進企業から学んでいってほしい」と話した。柳井氏は「行政が明確な目標をセッティングしてそこに乗っかるというよりかは、むしろ企業の取り組みが先にあって、それを行政がうまくオーソライズしたり、制度の中で企業に活用してもらったりという方向になっていくように思う。効果測定やスタンダードづくり、人材育成において、学の役割を果たしていきたい」と述べた。