国土交通省が18日に発表した「令和7年地価公示」について、業界団体・企業のトップから以下のようなコメントが発表された(以下、順不同)。
(公社)全国宅地建物取引業協会連合会 会長 坂本 久氏
(公社)全日本不動産協会 理事長 中村裕昌氏
(一社)不動産流通経営協会 理事長 太田陽一氏
(一社)不動産協会 理事長 吉田淳一氏
三井不動産(株)代表取締役社長 植田 俊氏
三菱地所(株)執行役社長 中島 篤氏
住友不動産(株)代表取締役社長 仁島浩順氏
東急不動産(株)代表取締役社長 星野浩明氏
野村不動産(株)代表取締役社長 松尾大作氏
東京建物(株)代表取締役 社長執行役員 小澤克人氏
森トラスト(株)代表取締役社長 伊達 美和子氏
令和7年の地価公示は、景気が緩やかに回復している中、全国平均、三大都市圏、地方圏とも、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも4年連続で上昇した。
住宅地は、引き続き住宅需要が堅調に推移し、また、商業地も旺盛なインバウンドによる観光客の増加により、高い上昇を示す地点がみられるなど、地価上昇が続いている。
また、全宅連不動産総合研究所が実施する不動産市況DI調査でも、直近の土地価格は実感値でプラス8.1ポイントと高水準となっており、依然として好調を維持していることがうかがえる。
こうした不動産市場の好調さの一方、一部では過熱感も意識されるなか、日銀では昨年3月から数回にわたる利上げを実施し、住宅ローン金利にも影響が出始めており、今後、市場にどの程度影響が及ぶか注視すべき局面にきていると認識している。
そうしたなか、全宅連では、不動産価格の高騰や住宅ローン金利の上昇により、特に若年層の住宅取得が困難となりつつあることから、住宅ローン減税制度の見直し内容がより充実したものとなるよう要望していく。また、地方圏の不動産流通活性化のため、「低未利用地の適切な利用・管理を促進するための特例措置(100万円控除)」の延長を強く要望していくとともに、引き続き、空き家の解消に向けた相談体制等の強化に邁進し、地方創生を後押ししていく所存である。
令和7年地価公示では、全国平均において、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも4年連続で上昇し、かつ上昇幅も拡大している。
圏域別にみると、地方四市の平均変動率が全用途平均・住宅地・商業地ともに12年連続で上昇するなど堅調を維持しつつも、これまで地方四市の上昇基調を牽引した札幌市及び福岡市において上昇幅はやや縮小しており、目下の金利上昇下において調整局面に差し掛かっていると見ることもできる。そして、この傾向は名古屋圏でも同様である一方、東京圏及び大阪圏では引続き上昇幅が拡大しており、都市部において圏域差が生じ始めている点も興味深い。
個別の動向としては、流山おおたかの森駅をはじめとした「つくばエクスプレス沿線エリア」など千葉県流山市において平均変動率13.6%と前年に続いて10%超の上昇を見せた点が目に留まる。同市では“待機児童ゼロ”の達成に加えて「送迎保育システム」などの子育て支援施策や回遊性のあるウォーカブルなまちづくりで近年注目されており、こうした取組が周辺の既存住宅地まで波及し沿線外のエリアも含めて広範に地価の上昇をもたらしている。他の自治体のまちづくりプランでも参考とすべき好事例と思われる。
今回の地価公示によって鮮明になったとおり、圏域による差はあるものの、「金利ある世界」の到来によっても足元の地価は全国的に上昇基調を留めている。そうした中、かねてより続く建築費の高騰と相俟って、首都圏を中心に新築物件価格は一部富裕層を除きもはや手が届かない領域に達している。マンションのリノベ市場は既にある程度形成されている反面、既存戸建住宅についてはいまだ後れを取っており、上質なストックの有効活用とさらなる流通の活性化による市場形成が今後の住宅政策の要諦となると見ている。
本会では、こうした観点から、そしてまた「全日空き家対策プログラム」の方策の一つとしても、会員による買取再販事業の支援をはじめとして既存戸建住宅の流通促進について積極的に施策を講じて参る所存である。
本年の地価公示では、全国平均の全用途、住宅地・商業地がいずれも4年連続で上昇し、上昇率が拡大した。圏域別では、上昇基調を維持している三大都市圏や地方4市に加え、その他地方圏においても、昨年の商業地に続いて、本年は住宅地の地価上昇地点数が下落地点数を上回ったことが特に注目に値する。
東日本不動産流通機構の先月(2月度)の統計によると、首都圏中古マンション・中古戸建の成約件数はともに4ケ月連続で前年同月を上回った。特に2月度においては、首都圏中古マンションの成約件数は前年比プラス23.9%、首都圏中古戸建の成約件数は前年比プラス44.8%と、ともに大幅増となり足元では活発な取引が続いている。
堅調な住宅需要が続いているなか、物価上昇、通商政策などのアメリカの政策動向や日本銀行による金融政策運営等が、今後どのように住宅需要に影響を及ぼすか十分注意する必要がある。
我が国経済が、ゆるやかな景気回復とあいまって地価が底固く推移し、サスティナブルな成長を継続することが望ましい。このためにも、本協会として住宅・不動産流通市場が内需の牽引役として厚みのある市場となるよう、引き続き力を尽くしてまいりたい。
今回発表された地価公示では、全国平均は、全用途平均、住宅地、商業地のいずれも4年連続で上昇し、上昇率も拡大した。地域や用途により差があるものの、全体として上昇基調が続いている。我が国経済の緩やかな回復が地価に反映されたものと認識している。一方で、諸物価の高騰に加え、金利の上昇や米国の政策動向、海外経済の下振れ懸念等によって、経済の先行きは不透明な状況にあり、今後の地価動向についても十分に注視していく必要がある。
少子化・人口減少といった構造的な問題にも直面する中、我が国経済が持続的な成長を実現するには、物価上昇を上回る賃上げの実現や企業による未来に向けた成長投資の積極的な実施等により、コストカット型経済から高付加価値創出型経済へと移行していかなければならない。
とりわけ、まちづくりを通じたDX・GXの加速やイノベーションの創出に加え、都市の国際競争力の一層の強化や防災性能の向上、良質な住宅ストックの形成、不動産市場の活性化に取り組んでいくことが不可欠だ。
今般公表された地価公示では、全国の全用途平均・住宅地・商業地のいずれも4年連続で上昇し、上昇率が拡大しました。三大都市圏、地方圏ともに上昇傾向が続き、地域や用途により差があるものの、全体として上昇基調が鮮明となりました。景気回復の影響が全国的な地価上昇に波及した結果といえます。経済活動の活性化に伴い需要が創出され、日本の産業競争力強化、そして国富増大に結び付いているといえます。
都心部においては、大規模再開発事業が進展するエリアの地価上昇が顕著となりました。大規模再開発事業は、日本の国際競争力の強化に貢献し経済成長を牽引する役割を果たしており、我が国の未来を担うものとして、一層その必要性・重要性を高めています。また、オフィス空室率の低下や賃料が上昇傾向にあり、継続する住宅マーケットの好調さや、活況なインバウンド等から商業・ホテルの需要が堅調であり、地価上昇に反映されました。
地方圏では、引き続き、半導体関連企業の進出が進む地域や、物流施設需要が高まる地域での地価上昇がみられます。各地域の特色を活かした産業創造を進展させ、新しい時代の新しい形での地方創生が求められています。
世界では、トランプ政権の政策等のインパクトが各国経済および日本の経済・企業に与える影響をはじめ、様々な地政学リスクが懸念されます。日本経済においては、継続する賃上げにより賃金・物価の好循環への確度が少しずつ高まっています。日銀の利上げにより「金利のある世界」が戻り、デフレから脱却し成長型経済へ向かう「時代の転換点」にいます。
デフレの時代は付加価値が正当に評価されてきませんでした。付加価値を評価し、物価と賃金のプラスの連鎖を生み、成長型経済の実現につなげたいと考えます。
当社グループとしては、このような転換点を大きなチャンスととらえ、付加価値の創造力において圧倒的な力を発揮していきたいと考えています。「不動産デベロッパー」の枠を超えた「産業デベロッパー」として、日本の国際競争力の強化・新産業の創造に貢献し、新たな社会的価値と経済的価値の創出を両輪で実現してまいります。
令和7年の地価公示では、全国平均で全用途平均・住宅地・商業地のいずれも4年連続で上昇し、上昇率も拡大した。特に、交通ないし生活利便性に優れたエリアや、インバウンド需要が見込まれるエリアでの地価上昇が顕著であった。また、オフィス市場においては空室率低下と賃料上昇の傾向が継続し、地価の上昇に反映されている。
住宅需要は堅調で、分譲マンションの価格が引き続き上昇を続けているほか、賃貸マンション等を含め今後も好調が続くものと見込んでいる。当社事業では、昨年発表した「ザ・パークハウス 武蔵小杉タワーズ」の販売が順調に進んでおり、大阪エリアでも「ザ・パークハウス 心斎橋タワー」など、交通利便性の高い好立地の物件は人気だ。
商業地に目を向けると、インバウンド需要の増加を背景に、ホテル事業やアウトレット事業も好調を維持。当社が空港事業を手掛ける宮古島エリアでウルトラ・ラグジュアリークラスのホテル「ローズウッド宮古島」が本年3月に開業したほか、2025年度中には当社グループの三菱地所ホテルズ&リゾーツが運営する「ロイヤルパークホテルズ」ブランドの運営客室数が6,000を突破予定。今後も積極的に全国各地のインバウンド需要を取り込んでいく。
オフィス市場では賃料の上昇が進む。丸の内エリアの空室率は昨年12月時点で1.97%と低水準を維持しており、当社グループの事業戦略として、各企業の経営資源たるオフィスへの付加価値提供を進め、賃料水準の底上げに一層取り組んでいる。また、昨年9月には大阪駅前の「グラングリーン大阪」が先行開業し、既に多くの来場者を迎えているが、本年3月21日には南館のオフィス棟が開業し、本格的な街の稼働が始まる。みどりとイノベーションをコンセプトに掲げるプロジェクトとしてここからが真価を問われる局面であり、求められる価値を徹底的に考え、提供していく。
日本経済では賃上げの定着や日銀の追加利上げなど、グローバルレベルのインフレを前提とした大きな動きがある。こうした時代の流れを味方につけ、不動産の本質的な価値を高める取り組みを加速させ、業界全体の成長へとつなげることで好循環を生み出していく。
世界各国の景気や通商政策などの動向により、為替や株価が変動し、先行き不透明な経済情勢が続く一方で、物価や賃金の上昇とともに国内景気は緩やかな回復基調が持続している。
こうした中、商業地では、旺盛なインバウンド需要を中心にホテルや商業店舗の需要が一段と拡大したほか、東京のオフィスビル市況も、企業の優秀な人材確保に向けた、働きやすいオフィス環境整備を目的とする移転、増床需要により、賃料上昇を伴って需給改善が続いている。
住宅地は、資材や労務費の上昇などを反映して、マンション販売価格の上昇傾向が特に都心で顕著となっているものの、ローン金利の上昇が小幅にとどまるとともに、住宅取得支援策などが下支えとなり、交通や生活利便の高い地域を中心に一定の需要が保たれている。
今年の地価公示では全国の全用途平均が4年連続で上昇した。東京や大阪など主要都市でオフィスや商業施設の需要が堅調であること、インバウンドをはじめとする旅行客数の増加でホテル需要が拡大していること、低金利環境の継続などで都心を中心に新築、既存住宅とも住宅需要が底堅いことなどが背景にある。今後も世界経済の先行き不安、資材価格や工事金の高騰、金利上昇などのリスク要因の動向を注視していく必要があるが、当面、不動産市況は好調が続くだろうとみている。
再開発事業が進展している地域では利便性の向上で来街者が増え、地価上昇が継続している。当社では渋谷駅周辺の半径約2・5キロメートルを『広域渋谷圏』と定義し、東急グループで連携して『100年に1度』の再開発を進めてきた。2024年7月に「Shibuya Sakura Stage(渋谷サクラステージ)」が街びらきを迎え、渋谷駅周辺の再開発が一段落して地域の課題だった渋谷駅周辺のバリアフリー化が進み、街全体の魅力向上につながった。再開発の結果、渋谷駅周辺の大型のオフィス床面積の少なさも解消し、IT・コンテンツ企業などを中心とする渋谷のオフィス需要は旺盛なこともあり、他の都内の都市と比べ空室率も低く、賃料も高い状態が続いている。そして、渋谷の利便性や魅力向上で京王電鉄神泉駅近くの住宅地の地価が大幅に上昇するなど、再開発事業を進めた成果が出ている。広域渋谷圏ではこれまで大型複合ビルなど「ハード」の開発が主だったが、今後はスタートアップ育成、都市観光など「ソフト」面での事業展開に力を入れ、更なる都市力の向上を図りたい。今年1月にはマサチューセッツ工科大学「MTI」と協力しディープテック領域のスタートアップ育成拠点を渋谷サクラステージに内に開設するなどスタートアップの育成体制も整えている。ハード・ソフト両面で世界に通用する「国際都市渋谷」を目指していく。
地方では大手半導体メーカーの工場が進出している地域で、関連企業も含めた従業員向けの住宅需要のほか、関連企業の事務所やホテル、店舗等の需要も旺盛な状態が続いている。当社でも半導体メーカーの工場が進出している北海道千歳市で事業用地を複数取得するなど事業機会の拡大を図っている。北海道内では従来の札幌市内での分譲マンションや商業施設開発のほか、釧路市での太陽光発電や小樽市や松前町での風力発電などの再生可能エネルギー事業の積極展開、石狩市内での再生可能エネルギー100%のデータセンターの開発、インバウンド需要の根強い国際リゾート地のニセコでの大規模開発計画「Value up NISEKO 2030」など事業拡大を進めている。今後も広域渋谷圏開発で培った不動産開発のノウハウを地方圏での社会課題解決に生かしていく。
中長期的な不動産市場については、少子高齢化による単身世帯の増加や空き家問題、「働き方改革」によるオフィス環境の変化等、不動産市場を取り巻く環境の変化はあるもののしばらく安定して推移するだろう。国内外で環境への意識が高まるなか、不動産の環境対応を進め、今後の不動産市場で差別化を図りたい。当社は1月末時点で開発中も含め全国に126事業、発電能力を示す「定格容量」で1,893メガワット分の国内有数の再エネ発電をできる体制を持っている。この再エネ電気で2022年に保有不動産(一部除く)の再エネ切り替えを終え、2024年4月に国内事業会社で初めて国際イニシアチブ「RE100」を達成した。今後も再エネ電気活用や、ZEBやZEHなど環境配慮型のオフィスビルやマンションの開発を進めるなど、積極的に環境対応を進めていく。
今回の地価公示は、全国平均で全用途平均・住宅地・商業地のいずれも4年連続で上昇し、上昇幅が拡大した。
一方で、資材費や労務費を含む建築費の高騰が当面継続すると想定されるため、各事業セクターは厳しい事業環境にある。当社としては、動向を注視しながら、多様な用地取得方法の推進や、ハード・ソフト両面で価格上昇に見合う商品の開発等により今後も対応していく。
住宅市場に関しては、建築費の上昇により、厳しい事業環境が継続する見込みのため、急激に供給量が増えるとは考えづらい。しかし、昨今の賃上げ率拡大とそれに伴う世帯年収の増加により住宅取得意識は継続して強く、需給のバランスは当面崩れないと見ており、利便性の高い都心物件や郊外の駅近物件などを中心に、売れ行きが依然好調である。住宅ローン金利は上昇傾向がみられるが、世帯年収の増加に伴い、現時点では顧客の購入マインドへの影響は軽微である。今後も引き続き動向を注視してゆく。
オフィス市場に関しては、出社や採用の増加により、当社主力ブランドのPMOに加えてサービスオフィスのH1Oでもテナント企業の拡張移転ニーズが増えている。また、インフレ局面において、賃料増額へのテナント企業の理解は得られる傾向がある。2025年に東京での新規供給が集中するため、一時的にマーケット全体で影響が出る可能性があるが、23区全体のマーケット規模と過去からの供給量に鑑みると、需給バランスが急激に悪化するとは考えにくい。
ホテル市場に関しては、高い水準でインバウンド顧客の利用が続いており、当社運営ホテルにおいても直営ホテルとグループのUDSが運営するホテルが共に好調。「フェアモント東京」も開業することから、市況の活性化しているタイミングで多様なホテルタイプを提供することが出来る。
物流市場については、EC市場の需要増加と運転手の労働時間規制により人手不足が課題。一方で拠点分散の必要性により、賃貸ニーズは拡大している。当社では首都圏に加えて中間物流適地での事業拡大や、物流施設の開発のみならず、カテゴリーマルチの深化や物流オペレーションの自動化機器導入などの商品企画により、顧客ニーズを踏まえた付加価値を今後も提供していく。
今年2月末にはいよいよ「BLUE FRONT SHIBAURA」 TOWER S が竣工。3月には竣工式と、同日にJR浜松町駅から芝浦エリアをつなぐ緑のアプローチ「GREEN WALK」も開通。7月にはラグジュアリーホテル「フェアモント東京」、8月にはオフィスフロア、9月には商業店舗と順次開業を予定しており、当社の本社移転も予定している。オフィスフロアでは1フロア約1,500坪の都内最大級の「テナント企業専用の共用フロア」も提供する。他にも、多様な働き方に対応した多くのワークスペースを用意し、立地特性である空・海・緑に恵まれた自然環境を活かした水辺ならではの新しい働き方を当社自らが実現していく。
2030年をターゲットとする野村不動産グループビジョンに「まだ見ぬ、Life&Time Developerへ」を当社グループで掲げている。 そこに暮らす、働く、時を過ごす一人一人のお客様の生活「Life」や時間「Time」をさらに豊かにしていくために、新たな付加価値を創造し、お客様に多様な付加価値を提供できる不動産関連商品・サービスをこれからも提供していく。
地価公示は、不動産の取引動向や中期的な展望を反映したものであり、様々なマクロ指標と合わせて今後も重要指標のひとつとして注視していく。
今回発表された地価公示は、地域や用途によって差はあるものの、全国全用途平均で4年連続上昇、上昇幅も拡大した。分譲マンション市場の堅調さの持続に加え、国外からの観光客の増加によりホテルや店舗需要が好調であったこと、オフィス需要の回復基調が鮮明となってきたこと、さらには再開発の進展により利便性や賑わいの向上が期待されるエリアが増加したことが背景にあると考えられる。
オフィスマーケットは、好調な企業業績などを背景に業容拡大、人材確保を目的とした好立地・ハイグレードオフィスの需要は引き続き底堅く、空室率も低下傾向にある。特にワーカーの心身の健康に着目したウェルビーイングへの対応やサステナビリティに配慮した高付加価値のオフィスビルの需要は今後も一層増大すると見ている。当社は、本社を構える東京駅の東側、八重洲・日本橋・京橋エリアを中心に複数の再開発事業を地権者の皆様と推進しているが、八重洲で進める「TOFROM YAESU TOWER」ではオフィスフロアのコンセプトを「ウェルビーイング」とし、ワーカーのウェルビーイング向上をサポートする機能を多数実装する予定である。これらウェルビーイング向上施策に加えて東京駅前という立地特性を多くの企業さまからご評価いただき、竣工が来年であるにも関わらず、隣接する街区「TOFROM YAESU THE FRONT」と合わせたオフィスフロアの内定率は既に約60%に達している。
ホテルや商業施設においてはインバウンド観光客の増加などにより、東京・大阪・京都をはじめとした観光地・全国主要都市を中心にホテルの稼働率や飲食店舗の売上が増加するなど、今後も拡大が期待できる。当社においては昨年、ヒルトンのフラッグシップ・ブランド「ヒルトン・ホテルズ&リゾーツ」として京都初進出となる「ヒルトン京都」を河原町三条にオープンした。313の客室を有するラグジュアリーホテルであり、先斗町や祇園至近という利便性も相まって、京都観光の拠点の一つとして大変ご好評をいただけている。
物流施設は、ECの拡大や人手不足などを背景とした企業側の物流拠点網の再整備に伴う需要が底堅く、今後、需要の拡大が期待できる。当社は今後、千葉県船橋市で冷凍・冷蔵物流施設、神奈川県厚木市で危険物専用倉庫併設の物流施設開発に着手するなど、さまざまなニーズに対応した競争力の高い物流施設を提供していく。
分譲マンションマーケットは、建築費の上昇や住宅ローン金利の動向など懸念はあるものの、共働き世帯(いわゆるパワーカップル)や富裕層からの利便性が高く良質な住宅への需要は依然として高く、特に都心部においては価格の上昇基調が継続している。一方で郊外においては需給のバランスにより価格上昇が落ち着き始めているエリアも見られ、エリアによる価格トレンドの強弱が出始めている状況である。
金利については日銀の金融政策による動向を引き続き注視すべき状況にあるものの、それほど大幅な上昇にはならないと見ており、当面不動産市場への影響は少ないと思われる。その他、地政学的リスクや為替変動の影響、国内外の物価動向や人手不足問題等、今後の景気への不安要素もあるが、経済活動がさらに活発化し、原材料上昇分の製品価格転嫁や賃金の上昇などがさらに進むことで、用途を問わず利便性の高いエリアを中心に、地価の上昇基調が継続する可能性がある。
当社としては、地価動向には引き続き注視するととともに、いつの時代もマーケットを重視し、お客様のニーズを的確に捉え、お客様にご満足いただける商品やサービスの提供を通じて、人々が安全・安心・快適に過ごせるまちづくりを推進していく。
商業地の全体感と見通し
商業地の地価は、全国平均、三大都市圏(東京圏、大阪圏、名古屋圏)平均、地方圏平均いずれにおいても4年連続で上昇し、上昇率が拡大した。日本の不動産市場の堅調さは、国内外の投資家からの高い注目を集めていると考えられる。
東京都心部では、23区全体の地価は4年連続で上昇し、全ての区で上昇率が拡大した。オフィス市場においては、企業業績の回復基調や、オフィス戦略アップデートによる需要の変化などを背景に、プライムオフィスの需要が堅調に推移している。空室率は低下傾向にあり、賃料上昇に伴い収益性が向上しているため投資需要の高まりが生じ、地価上昇の大きな要因となっている。今後についても、増床含めオフィス需要は拡大すると見込まれ、需給が引き締まることから市場は堅調な成長が期待される。また、分譲マンション市場についても、大都市圏を中心に需給逼迫が解消される見込みは小さく、引き続き好調である。
地方圏においては、年間として過去最高を記録したインバウンドの影響もあり、外国人を含めた観光客が増加した地域では、地価の上昇基調が強まっている。特に、長野県白馬村は、+33.0%と高い地価上昇が継続しており、当社グループが運営する「コートヤード・バイ・マリオット 白馬」では、昨年12月から今年2月のインバウンド比率が60%程度となった。同様に観光需要増加に伴い、奈良県奈良市においても地価上昇幅が拡大し、当社が2023年に歴史的建造物を活用して開業した「紫翠 ラグジュアリーコレクションホテル 奈良」においても、年々インバウンド比率が増加しており、2024年はおおよそ30~40%で推移した。
近年、従来の主要観光地だけでなく新たな観光地への分散が着実に進んでおり、都心部だけでなく、地方においてもより一層ビジネスチャンスが生じていると考える。2025年のインバウンド需要は、2024年以上の訪日外客数・消費額になると予測され、国内外からの観光客の受け皿となるべく、「古くからある観光エリアの再興」、「不足する二次交通・労働力の確保」、「宿泊税など観光振興財源の確保」といった社会の持続的な発展に資する取り組みの推進が急務である。
今後の不動産開発の動向
米国の政策発動と世界経済への影響や地政学リスクの動向、国内金融政策の行方に引き続き注視する必要がある。金利上昇による国内不動産市場への影響は、諸外国と比較すると低金利であり足元では限定的であるが、中長期的にはさらなる上昇に留意する必要がある。また、建築費高騰や深刻な人手不足は今後も継続するとみられ、建設コスト上昇は懸念材料である。
当社は今後も、長期的な視点に立ち、都心部での大型複合開発や日本各地での国際水準のホテル開発を通じて、都市の価値向上、持続的な観光産業の発展に貢献していく。