国土交通省は26日、社会資本整備審議会住宅宅地分科会の会合を開き、「ストック社会における住宅・住環境・市場のあり方」について、住生活基本計画の改定に向けた委員からのプレゼンテーションと意見交換を行なった。
今回は、(公社)全国賃貸住宅経営者協会連合会会長の宮野 純氏、(公社)全国宅地建物取引業協会連合会副会長の桑原弘光氏、(一社)不動産流通経営協会流通政策検討委員会委員長の森 憲一氏が実務上の課題などを指摘しつつ、将来的な住宅ストック市場について展望を示した。
宮野氏は、住宅セーフティネット法で定められる「居住サポート住宅」への期待として、居住支援法人等による安否確認や見守り・死後事務委任等であると説明。居住サポート住宅の数を確保しつつ、持続的に運用するためにソフト面に適切な補助が必要だと訴えた。また、高経年賃貸住宅の更新対策についても、分譲マンションの更新・再生対策と比較しながら、定期借家契約への柔軟な切り替え等が求められると説明した。
桑原氏は空き家流通に関する問題を指摘。都市部に所在する空き家については、用途制限や敷地の最低面積が活用の妨げになっていると説明し、一定の住環境の保護を前提として課題解決の視点から柔軟な運用も必要ではないかとした。また、地方部については市街化調整区域での用途制限が課題だとし、さらに2023年12月施行の改正空き家対策特別措置法で位置付けられた「空家等活用促進区域」も、地方自治体が速やかに区域指定ができるように指定を促進するべきだとした。
森氏は、同協会等の調査データを引用しながら、最近の住宅ニーズや購入行動の変化について説明。50平方メートル未満のコンパクトなマンションを購入する層が増加していることを指摘しつつ、ダウンサイジングの住み替え意向がシニア世代の約8割を占めることなどに言及。住宅ローン減税等の面積要件を40平方メートル以上に引き下げることで、ユーザーがより厚みのある市場の中から物件選択ができるようになると訴えた。
これらに対して、他の委員からは「入居者だけでなく家主も高齢化しているので、賃貸住宅の更新を考えた場合に家主への配慮も必要では」「将来、コンパクトシティ政策が進んで『人が住まない』地域が出てきた場合も考慮して、賃貸住宅の除却も視野に入れて考えなくてはならない」「空家等活用促進区域を指定促進するには、市町村のマンパワーも考慮に入れたい」「最低居住面積が40平方メートルになった場合、単身者を増やす懸念がある」などといった意見が出された。
なお、会合では住宅宅地分科会長の互選も行なわれ、会長には大月敏雄東京大学大学院工学系研究科教授、同代行に谷口 守筑波大学システム情報系社会工学域教授が選出された。次回会合は25年4月17日に行なわれ、今回と同じテーマで委員によるプレゼンテーションが行なわれる。数回の議論を重ねた後、同年11月をめどに中間とりまとめを行ない、新たな住生活基本計画(全国計画)案を策定。26年3月の閣議決定を目指す。