「事故物件」。過去に自殺や孤独死などが発生した物件を指すこの言葉には、今もなお市場での敬遠という厳しい現実がついて回る。2021年10月、国土交通省が「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定し、告知基準が明確にされたものの、依然として取引は難航し、相場を下回る価格や賃料で流通することが多い。そのため、不動産業者やオーナーには大きな負担が強いられている。
実際に事故物件の現場で対応に携わった経験者からは、「発見時の強烈な匂いは忘れられない」「警察が来ることで野次馬が集まり、周辺対応が一苦労になる」などの声が聞かれる。また、「特殊清掃だけでは不十分で、床や壁をはがし、薬剤を使って清掃し、さらに間取りを変えて風通しを良くする」など、物件をその後流通させるためには多くの工夫と努力が必要だ、とも。さらには、オーナーのリノベーション費用負担の強い希望に対して、遺族への原状回復費用請求が精一杯という現実もあるようだ。
一方で、「オバケ調査」で有名な(株)カチモードの児玉和俊氏は、「お化けが出る部屋はむしろ稀であり、付加価値と希少性が期待できる。心理的瑕疵による流通阻害や賃料減額のマイナスを上回る可能性もある」と語る。
そんな「事故物件」に果敢に取り組む事業者が集まり、座談会を実施。児玉氏のほか、横浜市で賃貸仲介・管理業を営む(株)おかだハウジング代表取締役・岡田 日出則氏、年間数件の事故物件に対応するベルデホーム(株)代表取締役・熊切伸英氏、事故物件を総合的に扱う「成仏不動産サービス」を手掛けるマークスライフ(株)代表取締役・花原浩二氏が流通の課題や解決策、そして業界の未来について議論を深めた。
その模様は、『月刊不動産流通2025年5月号』にて「座談会:事故物件に立ち向かう!」として特集されている。