国土交通省は17日、社会資本整備審議会住宅宅地分科会の63回目の会合を開いた。今回は、住生活基本計画の改定に向けて、学識経験者や不動産業界団体トップらがストック社会における住宅・住環境・市場のあり方についてプレゼンテーションを行なった。
まず、学識経験者として明海大学不動産学部教授の中城康彦氏と、明治大学政治経済学部教授の野澤千絵氏がプレゼン。中城氏は「長寿社会の居住を見据える」と題して、不動産の資産性や住宅利用の権利と価格について発表。土地と建物を分けて不動産価格と所有権について考える日本の制度と、土地と建物を一体として考える欧米の考え方の違いなど、住宅資産の価値を維持するための制度や取り組みのあり方を提案した。
野澤氏は「ストック社会の本格化に向けた住宅政策のフレーミングの方向性」についてプレゼンした。同氏は、2030年・40年の持家の相続発生が予測の統計データと、実需層世帯数のエリア分布データを用いて解説した。
業界団体からは、(一社)全国住宅産業協会会長の馬場研治氏と(一社)不動産協会理事長の吉田淳一氏が実務者の立場からプレゼン。馬場氏は、「これからの住宅供給の方向性」に住宅供給の今後の方向性について説明。ライフステージやライフスタイルに応じて個人が最適な住み替えができる環境が必要であり、一律の面積基準はなじまないと指摘。また、日本の住宅市場では、「美しさ・豊かさ」や「コミュニティと持続性」といった数値化することが難しい要素の資産価値への反映が不十分だと指摘し、消費者への理解度向上を促すべきだとした。
吉田氏は、「人生100年時代における住まいづくり」「2050年カーボンニュートラルの実現に向けた住まいづくり」「バランスのとれた新築住宅の供給と既存住宅の機能更新」といった3つのテーマでプレゼン。既存住宅の機能更新に関しては、耐震性不足の住宅も700万戸存在するという推計から、リフォームだけではなく建て替え等による性能向上が必要と指摘。不良な既存住宅の除却も重視すべきだとした。また、環境性能の向上や防災性能向上に向けては多様な機能を持つ良質な新築住宅の供給がより必要になると語った。
これらに対して委員から、「既存住宅の性能向上に対して補助・融資が揃ってきたのになかなか進まない。補助金がすぐに埋まってしまうことや申請が煩雑なことが大きな要因だ」「良質なストックのロングライフ化も重要な視点では」といった声が挙がった。
次回の同分科会は5月29日に予定。その後、7~9月にかけて中間とりまとめ案を検討し、11月ごろに中間とりまとめを公表。26年3月に新たな住生活基本計画(全国計画)の閣議決定を見込む。