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東急リバブル小林新社長、富裕層取り込み強化へ

「社員のやりがいやエンゲージメントを向上させていきたい」と語る小林新社長

 東急リバブル(株)の代表取締役社長に就任した小林俊一氏が22日、専門誌記者らと会見した。同氏は、1988年に同社に入社した初のプロパー社長として、社員のやりがいやエンゲージメントを重視していくと話した。

 現在の不動産流通市場について同氏は、「リテール市場は良質な既存ストックがかなり蓄積されてきた。新築マンションの価格高騰も相まって、特に都心部では需要が増加している。一方、郊外に目を向けると、需要は一巡した感があり、エリアによっては価格が高止まりしている」と話した。出店計画に関しては、首都圏・中部圏にまで出店余地があるとして年間4~5店の出店を計画していく。
 また、ホールセールに関しては、「私募ファンドの取引が活発だが、米国をはじめとした国際情勢の不安定さから様子見を決め込むところも出てくるだろう。一定規模の資産売却ニーズはあるので、しっかりとそうした需要をとらえていきたい」と述べた。

 そうした中で同氏は、「景気に左右されない事業体質を構築していくこと」が重要として、富裕層の需要取り込みを図っていく方針を示した。ウェルスアドバイザリー本部をさらに強化し、例えばリテール部門と取引のあった富裕層顧客を中長期的にフォローするなど、事業間連携による富裕層の取り込みを強化していく。「このほか、リテール部門でもサービスレベルを向上して顧客満足から『顧客感動』を実現し、紹介やリピーターにつなげることができれば、景気に左右されない事業が可能となる」と話した。さらに中長期的には、「富裕層の投資ニーズ獲得を狙い、当社の不動産小口化商品や区分マンションのオーナーチェンジ案件の取り込みなどを強化していく。30年を最終年度とする次の中期経営計画の成長ドライバとして期待している」などと話した。

 鍵となるのは事業間連携やグループ連携だという同氏。25年に新設した社長直轄組織であるMVC推進部を中核に、社内やグループ会社からの情報を集約する。それらの情報を材料に新たな戦略を立案・実行していく。「昨年は社内の情報連携により60億円規模の売上効果があった。今後は、東急不動産をはじめとしたグループ各社とも連携していく」。

 同氏は自社の強みを人材の豊富さだと分析。「業界全体を見渡すと、管理職層が不足していると言われるが、当社では7~8年前から管理職候補者に対してトライアル的にその職務を行なわせるという試みを行なっている。そのため、管理職が不足することはなく、店舗展開についてもスムーズに進められる。今後の課題は女性社員の活躍。土日出勤や時間外労働などがハードルとなって結婚や出産といったライフイベント後の営業職の継続が難しくなっている。過去5年ほどの採用の女性比率は約3割と、営業スタッフでも大きな割合だ。彼女たちを失うわけにはいかない。休職しても復職しやすい土壌づくりを行なっていく」。

 同氏は最後に、「社員のやりがいやエンゲージメントを高めるために取り組んでいきたい。当社の長所は何ごとにも挑戦しやすいDNAがあること。社員には失敗を恐れず、チャレンジしていくことを忘れないでほしい」と抱負を述べた。


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