国税庁が1日に発表した「令和7(2025)年分路線価」について、業界団体のトップから、以下のようなコメントが発表された(順不同)。
(公社)全国宅地建物取引業協会連合会会長 坂本 久氏
(公社)全日本不動産協会理事長 中村裕昌氏
(一社)不動産協会理事長 吉田淳一氏
令和7年分の路線価は、標準宅地の評価基準額では全国平均が4年連続で上昇しており、上昇幅も前年を上回る2.7%となった。都道府県ごとの状況でも上昇都市が35に増加し下落都市も減少するとともに、これまで下落が継続していた都市において下落幅の縮小や増加に転じるなど、全国的な地価の上昇傾向が拡大している。
一方、物価高や資材高騰による住宅価格の上昇により住宅ローン金利も上昇傾向にあることから、消費者の住宅取得意欲に影響を及ぼす懸念点が顕在化しているところである。
こうした中、全宅連では令和8年度税制改正要望において、住宅ローン減税や本会が創設に尽力した低未利用地の活用管理に係る100万円特別控除等の各種特例措置の適用期限延長の実現に取り組んでいきたい。さらに、社会課題である空き家問題に対応するため、本会では不動産総合研究所内に「空き家対策推進プロジェクトチーム」を設置した。さらに、本年4月に各都道府県協会において空き家相談体制を構築するとともに適切な空き家相談対応に資する知識・スキル習得を目的とした研修システムを構築したことから、今後もハトマークグループ一体となり全国の空き家、空き地の流通活性化を図っていく。
この度発表された令和7年の路線価では、評価基準額の対前年変動率全国平均値が4年連続して上昇しており、かつ上昇率も上向いている。都道府県庁所在都市の最高路線価については上昇地点が前年の37都市から35都市と微減、横ばいが9都市から11都市と微増、下落は前年同様1都市の状況で巨視的にはゆるやかな上昇基調が続いていることが窺われる。
個別的には、昨年から引き続き11%以上の上昇率を示したさいたま市、千葉市に加えて、本年、京都市と奈良市の上昇率が10%台となっており、インバウンド需要が地価に如実に反映された結果と考えられる。他方、三大都市圏は大阪、名古屋で上昇率が縮小、また地方四市にあってはいずれも縮小している点で地方圏の地価上昇傾向が遠からず一服する兆しも見て取れる。
上述のさいたま市及び千葉市は、それぞれ大宮駅の「グランドセントラルステーション構想」に基づく一帯的整備や千葉駅東口エリアで進む再開発事業が地価を押し上げている典型事例とみられるが、こうした大規模なプロジェクトのみならず、一戸一戸の住まいのレベルから“まちの新陳代謝”が円滑に進むことで地域価値が向上し、そこに住まう人、また行き交う人のWell-Beingな暮らしが体現されると考える。その点において我々宅地建物取引業者の役割は決して小さくないことを実感している。
・今回発表された路線価では、標準宅地の評価基準額の対前年変動率の全国平均は4年連続で上昇し、上昇率は前年よりも大きくなった。多くの地域において上昇率の拡大や下落率の縮小が見られるなど、我が国経済の緩やかな回復が地価に反映されたものと認識している。一方、ウクライナ紛争が長期化し、中東情勢が混迷する中、諸物価の高騰に加え、金利の上昇傾向や、米国による通商政策の影響等により、経済の先行きの不確実性が高まっており、今後の地価動向について十分に注視していく必要がある。
・他方、我が国は、頻発化・激甚化する自然災害や急速に進展する少子化・人口減少等の課題にも直面している。こうした課題に立ち向かいながら、我が国経済の持続的な成長とより豊かな国民生活を実現するには、イノベーションの促進や生産性の向上、構造的・継続的な賃上げ等を通じて、国内外の様々な環境変化に対応できる強い経済構造を構築するとともに、国内投資を拡大させていく必要がある。
・そのためには、都市の国際競争力の向上やGX及びDXの加速等に資する都市再生の着実な推進に加え、多様化する住宅ニーズに対応し環境性能に優れた良質な住宅ストックの形成、不動産市場の活性化を進めていくことが重要である。