(公財)不動産流通推進センターは27日、「良質な不動産コンサルティングの普及・定着に向けた検討委員会」の初会合をビジョンセンター赤坂(永田町)で開催した。
同検討委は、空き家対策や相続対策をはじめ、多様な領域で不動産コンサルティングへの期待が高まる中で、中小不動産事業者らによる良質なコンサルの普及に向けた課題や対応等を検討することが目的。2024年6月の「不動産業による空き家対策プログラム」において、コンサルティングの推進が明確に打ち出されたことを受け、国土交通省との連携によって設置した。委員として、不動産業界団体や有識者、実務者らが参加。委員長には明海大学不動産学部長の中城康彦氏が就任。中城氏は「バブル崩壊直後にスタートした不動産コンサルティング技能登録制度だが、現在も超高齢社会や人口減少といった、バブル崩壊に匹敵するような変化が起こっている。そうした変化に対応する不動産コンサルの在り方について検討していきたい」などと述べた。
その後、事務局を務める同センターが、不動産コンサルをめぐる最近の動きや現状・課題、支援方策等について説明。同センターや国交省が行なった不動産実務者や公認 不動産コンサルティングマスターらを対象としたアンケート調査の分析結果を紹介。媒介報酬以外での金銭を受領することの難しさや、広範な知識が求められる業務負担の大きさ、そもそもコンサルティングが主たる業務になりにくいことなどの実態が示された。それらを踏まえ、(1)コンサルティング業務の普及、(2)スキルアップ、(3)報酬・契約という3つ論点があると提案した。
(1)では、社会的認知度が低く、依頼者側にもコンサル業務への認識が不足しがちな不動産コンサル業務の認知と信頼向上に向けた取り組みを探っていく。(2)では、幅広い業務にニーズに対応できるコンサルタントのスキルアップのためのリスキリングツールや講習の提供、(3)についてはコンサル報酬を受領することの難しさを解消するため、報酬規程の整備や契約書等の支援ツールの検討が必要だとした。
これを受けて、各委員が問題意識を共有。「どこまで仲介業務の一環なのかという線引きが必要ではないだろうか」「今は無資格者でも『不動産コンサルタント』を名乗れてしまうし、しかもそのスキルにバラつきがあることも問題」「『相談』と『実務』は切り分けて考えるべきではないだろうか」「『不動産コンサル』は非常に幅広い分野をカバーしているが、その実、実務者には得意分野がある。さらに地域によって事情も大きく異なっている。分野別や地域別でのコンサルタントのネットワークができないだろうか」などといったコメントが挙がった。
同センターでは、これらの意見も踏まえて論点をさらに整理していく。次回の検討委は9月25日ごろをめどに開催し、実務家ヒアリングとして、有識者の委員によるプレゼンテーションを実施する予定。その後、数回の会合を重ね、年度内をめどに中間とりまとめを策定する予定。また、支援ツールの作成に向けたワーキンググループも別途設置する。