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住生活基本計画改定、中間とりまとめ素案を提示

 国土交通省は30日、社会資本整備審議会住宅宅地分科会(分科会長:大月敏雄東京大学大学院工学系研究科教授)の65回目の会合を開き、住生活基本計画改定に関する中間とりまとめ素案について議論を行なった。

 今回の住生活基本計画改定では、2050年に目指す住生活を踏まえ、当面の10年間で取り組む施策の方向性やその具体イメージ等を検討している。中間とりまとめ素案では、議論の経過を示すと共に、(1)住まうヒト、(2)住まうモノ、(3)住まいを支えるプレイヤーの3つの視点でそれぞれの現状や検討の方向性についてまとめた。(1)~(3)のそれぞれに合計11項目の課題を設定し、50年の住生活像や当面の施策を提案している。

 (1)では、「若年層や子育て世帯が希望の住まいを確保できる社会の実現」「過度な負担なく希望する住生活を実現できる環境整備」など4つの課題を設定。「過度な負担なく希望する住生活を実現できる環境整備」に関しては、都心部を中心に居住する中所得者層や子育て世帯などが手ごろな価格で購入・賃借できる良質な住まいの供給促進や、使用されない相続空き家が流通していくための環境整備等などを当面の施策の方向性として提案。具体的には、官民連携による空き家の活用促進や買取再販も含めた既存住宅流通の促進などを掲げた。また、海外のアフォーダブル住宅政策の調査も必要だと指摘している。
 これに対して、出席委員から「アフォーダブル住宅を開発するのではなく、空き家などのストックをうまく活用する方向性が必要ではないか」「将来の住宅ローン支払いに対する不安を解消する政策も必要では」などの指摘を受けた。

 (2)については、「多世代にわたり活用される住宅ストックの形成」や「住宅ストックの性能や利用価値が市場で適正に評価され、循環するシステムの構築」など5課題を設定。循環システムの構築については、当面の施策の方向性として、点検・リフォームなど適切な維持管理の推進や、それに着目した住宅ローンの提供、維持管理状況の開示など、既存住宅の取引環境整備、少人数家族向けの床面積40平方メートル程度の住宅の流通促進などを提案。具体的な政策として長期優良住宅制度の拡充や、リバースモーゲージ等による住宅資産の流動化促進、インスペクションや瑕疵保険の活用などが必要だとした。
 委員からは「床面積要件の引き下げは、市場での供給がそこに偏ってしまう可能性もある。バランスを重視した供給を重視する文言を加えるべきでは」などの声が挙がった。

 (3)では、「担い手の確保・育成や国際展開を通じた住生活産業の発展」など2項目。一人親方対策や、BIMの活用・普及について提案している。

 出席した委員からは、全体を通した意見として、「ストックの活用・マネジメントを目指しているのは分かるが、もう少し全体像をはっきりさせたい」「50年を考えると、省庁を越えた対応が必要になる」「『市場に任せる』という表現があるが、裏を返せば放っておくということに捉えられる。行政の役割をもっとはっきり示すべき」などといった意見が挙がった。同省でもこうした意見を踏まえた中間とりまとめ案を検討していくという。

 次回の会合は9月19日、中間とりまとめ案を提示し、意見交換を行なう予定。11月頃に中間とりまとめを策定。その後、新たな住生活基本計画(全国計画)について2回程度の検討を行ない、26年3月の閣議決定を目指す。


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