大阪市住吉区にあるシェアハウス「コモンフルール」(総戸数9戸)。ここでは、20歳代の韓国人、ベトナム人、インドネシア人などの外国人女性、そして、2人の日本人女性が「アジア料理交流会」や「ネイル教室」などイベントを楽しみながら、共同生活を送っている。
ここまで読んで、皆さんは若者のシェアハウスをイメージしたのではないだろうか。が、同物件で暮らす日本人女性2人は、いずれも“60歳代以上のシニア世代”だ。
わが国の高齢化率(総人口に占める65歳以上の人口の割合)は1950年以降一貫して上昇。総務省が発表した「人口推計」(2024年10月1日時点)によると、24年の高齢化率は29.3%となった。一方、内閣府による「高齢社会対策大綱」(24年9月13日発表)には「我が国の平均寿命は世界で最も高い水準となり、高齢者の体力的な若返りも指摘されている」と記されるなど、心身の健康が保たれ活発な社会活動が可能な高齢者=アクティブシニアも増加している。
シニアの生活が変わると、当然住宅のニーズにも変化が見られる。「コモンフルール」は、不動産仲介・コンサルティング会社(有)西都ハウジング(大阪市阿倍野区、代表取締役:松尾弘子氏)がその変化を捉え、60歳代以上のシングル女性と外国人が共に暮らすシェアハウスとして21年6月にオープンした。「アクティブシニアシニアは“シェア”といった住まい方や、異文化との交流など、新しいことに対する好奇心が旺盛なのではないかと考え、住まいの選択肢の一つとしてこのシェアハウスを始めました」(同社・松尾重信氏)。
運営を開始すると、現入居者を含め、実際に何人ものシニア女性が「夫が亡くなって住み替える部屋を探したが一人暮らしは不安だった」「これまで接したことがない外国人との暮らしに興味があった」「シェアハウスで暮らしてみたかった」など、さまざまな理由で入居。外国人の若者との交流に「人懐っこい性格で好感が持てる」「コーヒーの文化の違い1つとっても新鮮」と刺激を受けながら楽しんで生活を送っているという。
松尾氏は「地域や社会とのつながりが加われば、アクティブシニアのセカンドライフがより充実したものになる」と考え、今後は同物件を地域に開放し、地域住民とのつながり強化に取り組む計画だ。第二の人生を新天地で楽しみたいというアクティブシニアのニーズに応えるためには、そうしたコミュニティの創出も重要になるのだろう。
「月刊不動産流通2025年9月号」の特集「シニアのニーズに応える住まい」では同社を含め、アクティブシニア向けの物件を運営し、その暮らしのサポートにも取り組む不動産事業者を4社取材した。各社、手掛ける物件は、分譲、賃貸、シェアハウスとさまざま。事例からは、田舎暮らし、新しい刺激、資産性など、イマドキのシニアが持つ多様な住宅ニーズも見えてくる。詳細は本誌にて。
※本文中の画像は、「Canva」のAIサービスを用いて、編集部がプロンプトを入力し出力した生成AIによるイメージ画像です