(一財)澄和(理事長:村石久二氏)は27日、東京會舘(東京都千代田区)において「第10回澄和Futurist賞」表彰式を開催した。
同賞は、「平和を願い、自然と調和し、和む世界を目指す」とする同財団の理念に沿う「非戦・平和関連」「環境保護」「社会貢献」などをテーマとした活動を継続する個人・団体を毎年表彰するもの。2025年は「澄和Futurist賞」に小説家の浅田次郎氏、現代美術家の奈良美智氏、原爆の図 丸木美術館、「Next Futurist 奨励賞」にアーティストの瀬尾夏美氏が選ばれた。同奨励賞は4年ぶり2人目。
浅田氏は、「鉄道員(ぽっぽや)」「地下鉄(メトロ)に乗って」「蒼穹の昴」など幅広いジャンルで多くの名作を生み出し、長く第一線で活躍。早くから戦争文学にも力を注いでおり、戦争の悲惨さに終始するのではなく、登場人物を通して一人ひとりの尊厳を描きながら戦後世代としての歴史継承に取り組んでいる。
奈良氏は、現代美術を代表する作家。少女や動物をモチーフとした独自の絵画や造形作品は、観る人のさまざまな感情を呼び起こし、国境を越えて多くの人に共感されており、「NO WAR」「NO NUKES」など反戦や脱原発をテーマにした作品でも知られている。
「原爆の図 丸木美術館」は、故・丸木位里(水墨画家)・俊(洋画家)夫妻が原爆投下直後の広島を描いた「原爆の図」を58年にわたり展示。代表として表彰を受けた同美術館専務理事の岡村幸宣氏は、01年より25年にわたり同美術館の学芸員として、企画・発信を牽引し、平和の願いを次世代につなぐ活動を続けている。
瀬尾氏は、東日本大震災でのボランティア活動を機に、その記憶を後世に残す活動を開始。数百名の名もなき語り手に話を聴き、それを文章や絵画、映像やオンライン配信など、さまざまな表現で伝えている。時間の経過とともに孤立しがちな各地の語り部をつなぐなど、対話を軸としながらネットワークを築いてきた。
懇親会の挨拶で、浅田氏は「私は1951年生まれで、戦争というものを全く知らない。私が戦争小説を書くというのは、大変おこがましい話だが、できるだけ正確に使命感を持って書いていこうと考えている。このような評価をいただき大変うれしく思っている」などと述べた。
村石理事長は、「先人のご尽力によって、幸いにもこれまで戦争に巻き込まれずに済んできた日本だが、国内外の情勢を見る限りこの平和が長く続く保障はどこにもない。本日の表彰式にご参加いただくことで、平和への願いを共有する機会になれば幸いに思う」などと挨拶した。
会場には、政界、スポーツ界、芸能界、メディアなどの関係者が多数参加し、盛会となった。