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国際不動産ファイナンス研究会、「第1Tokyo大会」開催

-世界における不動産投資・不動産金融の最新の動向から-

 国際不動産ファイナンス研究会(以下、WCPR :World Conference for Property Research)は7月19・20日の2日間にわたり、早稲田大学国際会議場 井深大記念ホールにて、「第1Tokyo大会」を開催した。  今回は同シンポジウムの模様をレポートする。

両日、基調講演を行なったFisher教授
20日に行なわれた基調講演2は、飛入りスピーカーのテリー マーシェ氏(写真右)を迎え活発な議論が交わされた(写真左は川口教授、中央はFisher教授)

 同シンポジウムは、早稲田大学大学院ファイナンス研究科と米国Realm社(Realm Business Solution,Inc.)の共催により、昨年に開催された国際シンポジウム。「世界における不動産ビジネスとITビジネスの最新動向」と題し、不動産情報に関するアカデミック組織の確立と、米国でスタンダードになっている不動産分析汎用ソフトウェア「ARGUS(アーガス)」の100%日本語化、という2点が強く望まれたことを背景に開催された。

 これらの要望の実現に向けて、「2バイト問題」により不可能とされていたARGUSの100%日本語版をRealm社が開発。また、不動産情報に関するアカデミック組織としてWCPRが設立され、主催者の1人である川口有一郎氏(早稲田大学大学院教授)が日本不動産金融工学学会(JAREFE)の会長に就任したことから、WCPRがJAREFEに協力を依頼、同シンポジウム開催にいたった。

 シンポジウムでは、米国の不動産ファイナンスの名著の著者であり、さらに米国不動産投資インデックスNCREIFの指導者でもあるインディアナ大学のJeff Fisher教授、全米不動産鑑定協会会長のBruce A.Kellogg氏をはじめとして、海外からも不動産投資と不動産金融における専門家が招かれ、世界および日本における不動産投資と不動産金融の最新動向についての情報が提供された。

 開催初日の19日は、主に不動産投資、AM(アセットマネジメント)・PM(プロパティマネジメント)分野の発表が行なわれた。
 Fisher教授の基調講演「不動産ファイナンスと不動産情報インフラの最新動向」をはじめとして、「不動産投資市場の最新動向」、パネルディスカッション「不動産BI(ビジネスインテリジェンス)の展望」のほか、標準化されたソフトウェアやデータの連携などの効用が発表された分科会1‐1で3報告、AM/PMシステムによる不動産ポートフォリオのリスク管理と不動産金融情報データの連携を含めたリスク管理について分科会1‐2で3報告、合計9講演が行なわれた。

 主に不動産鑑定評価、不動産融資に関する発表が行なわれた20日は、Kellogg氏の「世界の不動産評価のトレンド」についての基調講演をはじめとし、「不動産投資におけるリスク分析」、「金利上昇局面における不動産市場の将来展望」のほか、不動産投資におけるリスク分析や不動産評価のあり方について検討された分科会2‐1で3報告、ツールの標準化による便益について検証し、海外不動産ビジネスの実態を通じて今後の日本における不動産ビジネスの課題について検討した分科会2‐2で3報告、合計9講演が行なわれた。

 2日間の開催を通して、日本においても不動産情報のインフラの重要性を認識するとともに、またそれを用いたリスク管理を行なっている企業が多数あることがわかった。日本の不動産金融ビジネスにおけるリスク管理の高度化・情報化は急速に進展しているのである。
 今後、このようなリスク管理が行なわれるAM/PMと行なわれないものとの格差は、ますます拡大していくだろう。(タ)


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