リヴァックスのリノベーション新ブランド「Rosa」始動
いまや、百花繚乱の感があるリノベーション物件。だが、リノベーションほど入居者の好みが分かれるものも少なくない。100人のユーザーがいれば100通りの提案がある。しかし、コストと手間の問題から、どこまでターゲットを絞り込み、そのターゲットに合ったリノベーションを提案できるかが事業者の腕の見せ所でもある。そうした考えから、ターゲット別のリノベーション提案に乗り出したのが、リヴァックス(株)(東京都渋谷区、代表取締役:齋藤信勝氏)。このほど、その第一弾として新ブランド「Rosa(ローザ)」を立ち上げた。ターゲットは、ズバリ「ガールズ」。どんな提案なのか取材してきた。
「女子力」あるシングル女性向けに特化
リヴァックスは、ワンルームマンション販売大手の役員を務めていた齋藤氏が2005年設立した、リノベーション物件の企画・販売会社。全物件に独自の鑑定書を添付するなどして差別化するほか、リノベーションコストを引き下げるための汎用型リノベーションも提案。これまでに、15物件のリノベーションを手掛けている。
今回、新たに立ち上げた「Rosa」は、これまで取り組んでこなかったワンルームマンションのリノベーションでターゲットの幅を広げることと、リノベーションで収益性を高めた物件を投資家に販売する買取再販事業を積極化させることを目的としたもの。
同社はこれまで、DINKSやシングル男性向けに専有面積40~60㎡程度のマンションをリノベーションし販売してきた。今回、ワンルームをベースとすることで、リノベーションコスト、販売価格・賃料を引き下げ、新たな顧客層を開拓。同時に、低価格で高利回りの収益物件として、個人投資家等に販売していく。
「Rosa」というネーミングから、なんとなく女性、それもシングルがターゲットであることはおおよそ予想がついていたが、同社はターゲットとする女性像をもっと細かく分析していた。そのターゲットとは「ガールズ」だという。
は?ガールズってナンダ?、と頭を抱える記者に、同社で広報を担当する河野慎平氏が解説してくれた。
「ちょっと前流行った言葉を使えば、“女子力のある人”というイメージです。たとえば、携帯電話やノートにワンポイントのデコレーションをしているような。決して派手ではないけれど、20歳、30歳と歳を重ねていっても、少女のようなかわいらしさを忘れない人、女性であることを大事にする人、とでも言いましょうか…」。
齢40歳の記者は、この解説でますますわからなくなってきた…。そこでさっそく物件を見てみることにしよう。
ピンクのキッチンにシャンデリア、徹底的に「女子」な部屋
この企画の対象物件として選ばれたのは、東京メトロ丸ノ内線「新宿御苑前」駅徒歩5分に位置する築24年のワンルームマンションの一室(専有面積23㎡)。某大手ディベロッパー販売だけあって、ワンルームとしては珍しい管理人常駐のマンションで、大規模修繕も完了し外観も綺麗に整っている。築年数が古くても、そのまま月額賃料8万円程度で賃貸できそうだ。
リノベーションデザインを手がけたのは、坂田夏水氏。04年武蔵野美大を卒業後、工務店や不動産会社で設計・デザインを手がけ、今年自身のデザイン事務所を立ち上げたばかりの新進気鋭のデザイナー。女性らしさを前面に出したデザインと、ローコストのリノベーション提案がウリだという。
なるほど室内に入ってみると、隅から隅まで、徹底的に「女子」な空間であった。「リノベーション物件は数多いけれど、その多くが男性デザイナーの感性で作りこまれているもの。この物件では、とことん女性の感性にこだわってみました」(河野氏)。
玄関(分譲マンションのリノベーションの常として、まったく手つかず)を入ってまず目に飛び込んでくるのが、向って左側の壁全面に張られたローズ柄のクロス。「バラ」というとケバケバしいイメージもあるが、このクロスの柄は淡いピンクのバラ(フレンチローズと呼ぶらしい)で、派手さはない。よく見ると、縦に一ヵ所だけ濃いピンクのローズ柄があしらわれ、かつその中の1つに「スワロフスキー」のクリスタルがはめ込まれていたりする。これが「携帯電話にワンポイントのデコレーションをする」ような、女子の感性というわけか。
部屋の中心にあるのは、ピンクのモザイクタイルが貼りこまれたダイニングキッチン。現地施工の一点モノだという。その真上には、ピンクホワイトのシャンデリアが輝いている。よく見ると、値の張るような代物ではなかったが(実際5万円だとか)、そのインパクトは相当のものだ。ユニットバス入口と洗濯機置き場の扉もやや濃厚なピンク仕上げ。ただ、それ以外は、床のPタイルをはじめ、オフホワイト系であっさりとまとめている。
リノベーションコストを抑えるための工夫も見られる。たとえば、ユニットバスは今では珍しい「3点ユニット」、それも建設当初からのものをそのまま使う。バブル時代に建設されたマンションであるため、タイル貼りのユニットがおごられていることもあったが、「スペック重視の男性と違い、女性は『水回りはきちんと使えればいい』と考えるらしく、文句をつける人は1人もいなかった」(河野氏)という読みらしい。また、収納類も最低限。下駄箱のかわりに設けられているのは、スチールパイプが渡されたスペース。靴底をひっかけてむき出しのまま使う、「魅せる収納」的しつらえ。ハイヒールが多い女性を意識したもので、要は、機能的であればいいのだ。
いずれにせよ、どこから眺めても「女子の部屋」、それも記者のような中年男性がイメージする女性の部屋とはまた違うイメージの、これが「ガールズ」の部屋なのだろう。間違いなく言えるのは、「ここに男性が住め、といっても無理」ということだけである。
次は「男性向け」にもチャレンジ
今回のリノベーションコストは、材料費・工事費・デザイン費すべて合わせて150万円。ワンルームマンションということもあるが、改修部位を絞り込むことと、ローコストの部材をうまく使うこと、著名なデザイナーの登用を避けたことで実現した。投資用として売る以上、利回りに直結する改修コストは低いに越したことはない。
同物件は9月上旬からオープンルームを開催し、同時に月額9万5,000円で入居者を募ったところ、1週末で20組の来場を集め、狙い通り30歳代の(同社が言うところのガールズ系の)女性が契約したという。現在、投資家向け物件として、1,600万円台で購入者を募集、無事売却を完了している。
同社は現在、この「Rosa」と対をなすような「男性向け」をはじめ、ターゲットを大きく限定したワンルームリノベーションを展開していくという。同性の記者でさえ「男性向け」というイメージは沸かないが、完成するのを楽しみにしておこう。(J)