HEMS搭載のスマートハイム居住者に聞く
東日本大震災後から全国各地で強まる節電意識。特に、東日本などでは梅雨が明け夏本番を前に計画停電の行方がどうなるのかなど不安を隠せない状況が一般消費者まで及んでいる。 そのようななか、いかに電気使用量を抑えられるかは喫緊の課題。ハウスメーカー各社が「スマートハウス」の開発に凌ぎを削るなか、積水化学工業(株) 住宅カンパニーも、4月29日に同社独自のコミュニケーション型ホームエネルギーマネジメントシステム(以下、「HEMS」)「スマート・ハイムナビ」を標準搭載した「スマートハイム」を発売した。同社が施工・販売した「スマートハイム」の実邸を見学する機会を得たので参加してきた。
電気使用料・料金の「見える化」
最近よく耳にするHEMSとは、「home energy management system(ホームエネルギーマネジメントシステム)」の頭文字をとったもので、家庭におけるエネルギー使用のモニタリングを主とする「表示型」と、家電製品などの遠隔操作・エネルギー使用の最適化をめざす「制御型」があるという。同社が提案するのは「表示型」に同社独自のコンサルティング機能を加えた「コミュニケーション型」のHEMSだ。
分電盤に接続された測定装置で、消費電力量を測り、情報収集装置に情報を蓄積(約1ヵ月分は蓄積可能)。それらの情報をインターネットを介して外部のデータセンターで蓄積・管理する。
家の中で使用した電気使用量を測定し表示できる機能(「見える化」)では、リアルタイムでの表示のほか、日別、月別、年別での表示が可能となり、月別で過去10年間のデータの蓄積もできる。また、家電ごとの電気使用量の表示も可能なため、どの家電が電気量を多く使うのかなど詳細な把握もできる。さらに、一般的には消費電力量を「kWh」で表示するが、「スマート・ハイムナビ」では金額でも表示される。
今回訪れたF邸は、床面積129.24平方メートルの2階建てのお宅。家族構成はご主人と奥さまと長男・次男の4人家族。PV搭載は4.44kw。もともと省エネ意識が高く、展示場でのオール電化セミナーをきっかけにPV搭載を決めたという。
「kWhを金額に換算してくれるのでとても助かります。どれくらい使ったかの実感がわきますし、子供も興味を持ってくれます」と奥さまは話す。
「スマート・ハイムナビ」では、クラウド技術を活用し、それぞれの家の契約料金体系で、夜間料金や電気料金改定などの情報も自動更新した計算が可能となり、煩雑な電気料金の計算をしなくて済むというのも大きな特徴だ。
また、どこからでも見える手軽さも一般消費者にとっては受け入れやすい。パソコンやスマートフォンに表示できるため、外部でもメール感覚でチェックできるという。
コミュニケーション型でほかの家と比較
「スマート・ハイムナビ」のもう一つの大きな特徴として、自動コンサルティングがある。全国の「スマート・ハイムナビ」搭載住宅の電力使用情報などを、同社のデータセンターで一元管理し、ほかの家の電力使用状況と比較できるしくみだ。ほかの家の「お手本消費量」と自分の家を比較することで、自分の家の無駄が見てくる
自邸と同社の「スマート・ハイムナビ」搭載住宅のデータを見比べ、手本とする消費電力モデルに近づけていくなど、ほかの家と比較することで更なる節電意欲も湧いてくるのではないだろうか。
創エネで売電、地域貢献も
同社では、太陽光発電システム(PV)を搭載する住宅には「スマートハイムナビ」を標準搭載する。PVで余った電力は、電力会社に売電可能となる。
次に訪れたN邸は同社の社員のお宅。N氏と奥さまと長男の3人家族で、床面積126.14平方メートルの2階建ての家に、5.73kWのPVを搭載する。
N邸では、昨年1年間では9万5,000円電力を使用し、27万円の売電となったため、17万4,000円分が黒字に。発電できない夜間は電力会社から電力を購入し、発電できる日中には売電しているという。
「ピークカットすることで地域に貢献もできますし、楽しみながら節電しています」とN氏は話す。
今後は蓄電機能も必要に
「スマートハイム」の今後に進化について、先日開催された記者発表の席で、同社取締役 専務執行役員 住宅カンパニー プレジデントの高下貞二氏は「来年度には蓄エネも実現していきたい」などと話していたが、今回の東日本大震災で、原発に頼らない電力が注目されるなか、“発電”に加え“蓄電“が今後注目されていくのは間違いないであろう。
実際、同見学会から間もなくの7月7日、同社では蓄電池付ソーラー住宅の実証実験を開始すると発表。同実験では、蓄電池付き次世代スマートハイムの先行テスト販売も視野に入れながら、今後1年半にわたり全国5電力会社管轄地域におけるHEMSやPVとの連動性、深夜電力利用によるピークカット、さらには将来的な電力の自給自足の検証も行なっていき、12年度中の蓄電池付住宅の本格販売を予定している。
できる限り原発に頼らない発電方法が検討されるなか、一般消費者でも比較的導入しやすいPVのさらなる進化に期待したい。(tam)