防犯設備を充実させた、2・3階建て賃貸住宅発売
2010年8月、大和ハウス工業(株)は2階建て賃貸住宅「セジュールウィット-S」と、3階建て賃貸住宅「セジュールオッツ-S」を発売。以来、好評を得て目標を上回る販売をしたことから、11年6月には、これらの商品をベースに、女性向けに防犯設備を充実させた2階建て賃貸住宅「セジュールウィット-SW」と3階建て賃貸住宅「セジュールオッツ-SW」(SW仕様)を新たに開発、販売を開始した。 本稿では、報道陣向けに行なわれた、SW仕様のモデルルーム見学会の様子をレポートする。
防犯に配慮した設備
大和ハウス工業では、昨今、30歳未満の単身世帯では1ヵ月当たりの可処分所得が男性より女性の方が多いことや、暮らしを大切にし、住まいにお金をかける単身女性が増加していること(総務省調査)、住まいを決める際に約7割は女性の意見が反映されている(同社調査)ことなどを受け、同社の手がける賃貸住宅の入居者ターゲットを20~30歳代の女性に設定。女性が“安心”して“キレイ”に暮らせる住まいとして、2011年6月、2階建て賃貸住宅「セジュールウィット-SW」(坪35.7万円台~)と3階建て賃貸住宅「セジュールオッツ-SW」(坪39.7万円台~)を発売した。
商品には「セーフティ&セキュリティ」「ビューティー」「収納」「デザイン」の4つのコンセプトを設け、防犯設備を標準で搭載。美容のための空間やアイテムなども提案し、年間1万世帯の販売を目標にしている。
見学会が行なわれた賃貸住宅「ブラン・ピエール」(東京都三鷹市、総戸数14戸)は、JR「吉祥寺」駅・「三鷹」駅からバスで約20分の場所にある。同社の3階建て賃貸住宅商品「セジュールトレビナ」をSW仕様にしたもので、各住戸の専有面積は45~50平方メートル。賃料は11万円程度。
住居には、ALSOKのホームセキュリティシステムが装備されており、外出時にセンサーが異常を感知すると、ALSOKガードセンターに通報が入り、ガードマンが駆け付ける。必要に応じて緊急連絡先に通報・連絡も行なう。在宅時の警備も行なうため、就寝後の防犯対策にも有効だという。月額3,000~4,000円の費用がかかる戸建住宅と同じセキュリティサービスを採用。オーナーとの一括契約により、入居者は共益費として2,000円程度を支払うことで割安で利用することができる。
警備の開始と解除の操作は暗証番号で簡単に行なえるとのことで、カードを持ち歩くわずらわしさや、紛失の心配もない。ただ、外出する時は、警戒モードにセットしたら、速やかに家を出て行かなければならない。セットした数分間の時間が過ぎてしまうと、センサーが作動して通報してしまうからだ。帰宅した時もすぐに暗証番号を打ち込んで警戒モードを解除する。習慣になってしまえばいいが、外出時に忘れ物を思い出したり、帰宅時に重い荷物を持っている時などは、少し焦ってしまいそう。毎回暗証番号を打ち込むのは手間もかかり、入居者によっては面倒に思う人もいるのではないかと感じた。
戸建住宅や分譲マンションでは普及しているホームセキュリティサービスだが、賃貸住宅においても、賃料にプラス2,000円程度で利用ができるのなら、ホームセキュリティ付きの物件を希望する女性は多いだろう。
その他にも、タイマー付き照明を標準で搭載。出かける前に留守番タイマーをセットすると、セット時間に自動で照明が点灯し、留守でも在宅を装うことができる。また、録画機能付きカラーテレビインターホンも備えてあり、呼び出しに応じて自動的に録画し、留守中の訪問者を確認できる。
さらに、1階住戸には、目隠し対策として、通風や採光を妨げずに視線を遮ることができる植栽を配置。また、外から洗濯物が見えないように、低い位置に干せるバルコニー腰壁用物干金物や、室内物干金物も設置している。
こうしたさまざまな配慮がなされていれば、ストーカー対策やのぞき見を防止することができ、女性が安心して暮らすことができる。セキュリティがしっかりした物件であれば、今後は物件選びの際、1階でも構わないと考える女性も増えていくのではないだろうか。
女性のためのアイテムが満載
防犯に配慮する一方で、キレイに暮らしたいという女性の願いを叶えるため、SW仕様では、美容に関する多数のアイテムも装備している。
例えば、同社の通常の洗面台は、幅が60cmだったのに対し、SW仕様では倍以上となる126cmを採用。大型鏡やメイクの際に便利な拡大鏡も備え、座ってゆっくりとメイクすることができる化粧台の機能を持たせた。メイク道具やヘアケア用品等もすっきり収納できる埋込収納棚や、電動歯ブラシやヘアアイロンを充電しながらドライヤーが使える2口コンセントも2ヵ所設置している。
さらに、女性から要望の多かった収納にも力を入れている。同社の調査によると、賃貸住宅の収納について満足している入居者が1割に過ぎないことが判明。そこで、玄関には、靴以外にもゴルフバッグなどさまざまな物を収納できる、大きなシューズクロークを設置。居室には広々としたクローゼットを設けたほか、玄関・廊下や、洗面所には、毎日使う物を収納できる「デイリークローク」を設置した。洗濯機の上の空間を無駄なく使える二段可動棚も装備するなど、床面積の約10%に当たる収納面積を設けている。しかも、ただ収納を増やすだけではなく、使う場所にきちんと物をしまえるスペースを設けているなど、細かい工夫が見られた。
その他にも、絵や小物などを置ける小さなニッチ(壁を凹状にくりぬいた飾り棚)を設け、空間のアクセントとしたり、壁に穴を開けなくても絵や写真を飾れるピクチャーレールを設置。
また、手軽に空間を仕切れる可動間仕切り「ライトスルースクリーン」も備えている。半透明で光をとおすので、閉め切っても部屋の中は明るく圧迫感がない。戸建てや分譲マンションでは見かけるが、賃貸住宅ではあまり見ない設備。急な来客でも寝室を隠せたり、リビングと部屋をつなげた一体的な空間にもできるうえ、人気のカラークロスも採り入れるなど、防犯機能に加えて、女性を惹きつける細やかな工夫がなされていた。
女性を意識した商品展開
同社では、新たな営業戦略として、SW商品の広告を女性向けのファッション雑誌に掲載するという新たな試みを行なった。女性の入居者に人気が高い商品であることをアピールでき、オーナーからの問合せも増加、新規受注につながっているという。
SW仕様にすることで、施工費は1住戸当たり約10万円のアップとなるそうだが、同社本社技術本部集合商品開発部内装住設設計グループグループ長・千葉由美子氏は「初期投資が多少高くなっても、付加価値を付けることで、入居者に長く住み継いでいただける。高い入居率を維持でき、資産価値が落ちない物件として、オーナーさまにはご提案できる」と話す。
SW仕様は、単身女性だけではなく、カップル・ファミリー世帯においても人気は高い。7月15日から入居が開始された「ブラン・ピエール」では、賃料は周辺の相場よりも8,000円程高くなっているそうだが、成約も順調で、入居者のほとんどがカップルとなっているという。
同社では昨年、女性が自分専用の空間を要望する声が多かったことから、スキンケアブランドの「SK-II」とコラボレーションし、女性のための新しい住空間「コクームスペース」を開発した。共働き世帯をターゲットに据えた戸建住宅商品「xevo CLEVA(ジーヴォクレバ)」に標準搭載するなど好評を得てきたが、賃貸住宅においても同様に、「自分らしくキレイに過ごしたい」という女性の声が多いことから、メイクや着替えをスムーズにできる設備・機能も強化した。
一人暮らしの場合、部屋が狭いうえに、化粧台を置くスペースも取れないことも多いが、幅の広い洗面化粧台を装備し、外出する際の前身チェックなどをスピーディーに行なえる動線を提案したSW仕様は、女性の心を掴み、「物件を見学した顧客は、すぐに気に入って成約されるケースが多い」(千葉氏)とか。
仕事や家事、子育てなど、忙しい日々のなかでも、美しく自分らしく過ごしていたいという女性の思いを実現するSW仕様。同社は、女性の満足度を高めることで入居率の向上、維持を図っていこうという展開を、今後も拡大していく方針だという。女性の支持を集める魅力ある商品展開が期待される。(さ)
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