


空室率高まるアメリカ中西部の賃貸アパート
町を歩くとアパートの「空室あり」の看板が目について久しい。シカゴ市内の賃貸空室率は4年前の1%~2%から7%(2003年)にはねあがった。シカゴの特徴として2所帯から4所帯入居の一戸建ての建物が多いのだが、そのタイプの賃貸空室率でさえ、2001年に8%だったのが、2003年には何と9.4%に上昇している(12月7日シカゴトリビューン紙)。 西に目を向けるとコロラド州デンバー市でも同様で、失業率の増加に伴い、1987年以来現在まで最悪の状況だという(Apartment Association of Metro Denver)。 先日、ラジオを聞いていたら、2005年にはさらに空室率は上がると予測していた(National Public Radio、Market Place)。 要因はさまざま考えられるが、ローンの低利融資で賃貸から家を購入する人々、不景気により財布を引き締めるため、親元へ帰ったり、ルームメートと家賃をシェアしたり、町を離れる人々も多い。結果として借り手市場となったものと思われる。
入居者囲い込みに、アノ手コノ手
この厳しい状況にどう対処するか? 応急対策としてはまず、現在入居中のテナントを確保するのが何よりも最優先である。家賃の据え置きどころか値下げ合戦さえ繰り広げられている現在、新規の入居者募集には、アパートにテレビ、DVDを備え付ける、100ドルのギフト券をプレゼント、当初1ヵ月分の家賃は無料、手付金なし、等など、各物件人々をひきつけるためにさまざまな工夫をこらしている(National Public Radio、Market Place)。 デニス・ロドキン氏によると、「どんなところでもいいからできる限り入居者募集の広告を出す」「インターネットを利用する」「値下げはマイナスイメージが強いので注意:12万円の家賃を10万円に下げるより、最初の月の家賃を無料にしたり駐車料金を無料にする方がよい」「短期の滞在者を探す:近くの病院、大学など訪ねてみる。長期の入居者は家を購入してしまう可能性が多いので」、さらに「借り手は自分が有利な立場にあるのを知っているので、部屋を見に来た時、彼らはどこまで値下げしてもらえるか、聞くだろう。貸し手はどこまでなら妥協できるか、どれだけオファーできるか、すぐに答えられるように準備をすることが大切」などとアドバイスする(12月7日シカゴトリビューン紙)。
焦らず、良い借り手を見つけたほうが…
私自身の経験では、焦って空室を埋めるよりも、良いテナントを見つけることが一番大切だと思う。裁判に持ち込んだり、心ならずも保安官によって強制退去させるのは苦い思いが残るものだ。シカゴ市では建物を賃貸から分譲(マンション)に変えるケースが激増しているので、必ず数年後には賃貸アパート不足が起きるだろう。がんばってここ数年持ちこたえれば賃貸状況の流れは変わると信じているのだが…。
コーン 明美
横浜生まれ。多摩美術大学デザイン学科卒業。1985年米国へ留学。ルイス・アンド・クラーク・カレッジで美術史・比較文化社会学を学ぶ。
89年クランブルック・アカデミー・オブ・アート(ミシガン州)にてファイバーアート修士課程修了。
Evanston Art Center専任講師およびアーティストとして活躍中。日米で展覧会や受注制作を行なっている。
アメリカの大衆文化と移民問題に特に関心が深い。音楽家の夫と共にシカゴなどでアパート経営もしている。
シカゴ市在住。