



エネルギッシュな不動産エージェント、メリージョー
コ-ルドウェルバンカ-社で働く不動産エージェント、メリージョ-とはアートを通しての友人である。エネルギッシュでセンスもよく、鮮やかな色どりの美しいキルトを制作し、多くの展覧会に出品している。中古住宅物件を扱うエージェントとしてこの世界に20年以上の経験をもつメリージョ-。若い頃は週7日、毎日12時間は働いたという。しかし69歳の誕生日を間近にし、現在は仕事を減らしつつある。といっても、メリージョ-個人の顧客は今でも200人位。サービス代行者に依頼し月々はがきで彼らに様子など知らせている。現在進行中の物件も4件あり、週に2回は顧客と電話で話すという。
個人の“能力”がすべての世界
アメリカの不動産業には女性が多い。National Association of Realtors(全米リアルター協会)の調査によると 典型的なエージェントのプロフィールは、既婚女性、年齢52歳、年収手取り564万円、この道13年、ということだ(シカゴトリビューン紙2003年7月27日付)。就労時間に柔軟性があり、かなりの部分は自宅で仕事が出来るからだろうか。アメリカでは日本のチームワーク的なシステムと多少違い、顧客の開拓、すべての打ち合わせや契約、事務処理など最初から最後まで個人で取り扱う。所属している不動産会社から固定的なサラリーなどが直接支払われるわけではなく、彼らが関わった物件の売買取引が成約した時にのみ、歩合収入がある。だからより多くの顧客を独力でつかまねばならない。また、良い顧客は彼らの財産といえる。顧客の子供達から親戚、友人達、孫の代まで長いつきあいがある有能なエージェントも多いが、それらは「信頼」によって培われるようである。人生経験の豊かさが役立つ仕事
不動産売買に関わる何人かの友人達を観察していると、不動産エージェントとして第一線で働くにはプロフェッショナルとしての知識の深さは勿論のこと、個人の人生経験の豊かさが役立つような気がする。人間相手の仕事ということとも大いに関連するだろう。メリージョ-の場合、以前はソーシャルワーカーだったそうで、仕事の大半は家庭内、学校、コミュニティなどにおける問題解決だったそうだ。不動産売買仲介という現在の仕事での彼女の得意技は「交渉」だという。トラブルが生じた時、物事であれ人と人であれ、その間に立って解決するのが何よりも好きなのだそうだ。 メリージョ-に「人間が好きなのね?」と聞いたら、「キルトを制作する静かな時間もたまらなく好き」とのこと。見せてくれた製作中のキルトは、オレンジ、赤、ピンクなど鮮やかな彩りで、みずみずしい躍動感にあふれていた。そんな彼女の感性は、仕事の場では顧客に言葉を超えた「生きる喜び」みたいなものを伝えているに違いない。
コーン 明美
横浜生まれ。多摩美術大学デザイン学科卒業。1985年米国へ留学。ルイス・アンド・クラーク・カレッジで美術史・比較文化社会学を学ぶ。
89年クランブルック・アカデミー・オブ・アート(ミシガン州)にてファイバーアート修士課程修了。
Evanston Art Center専任講師およびアーティストとして活躍中。日米で展覧会や受注制作を行なっている。
アメリカの大衆文化と移民問題に特に関心が深い。音楽家の夫と共にシカゴなどでアパート経営もしている。
シカゴ市在住。