海外トピックス

2004/3/19

vol.7 緑の暮らし グリーンビルディング(1)

シカゴ河に面した西よりの中心地に、零下20度の寒さにもめげず、新らしい分譲住宅が続々と建ちあがる。「グリーンビルディング」は近年の傾向、購買意欲をそそるコンセプトでもある
シカゴ河に面した西よりの中心地に、零下20度の寒さにもめげず、新らしい分譲住宅が続々と建ちあがる。「グリーンビルディング」は近年の傾向、購買意欲をそそるコンセプトでもある
環境保全を基本に建築されたサッカ&ビリングス家(ヴァーモント州)。シンプルなデザイン、降雪量の多さに対応した傾斜屋根など、典型的なニューイングランド風のつくりだ。背後にソーラーシステムが配置されている
環境保全を基本に建築されたサッカ&ビリングス家(ヴァーモント州)。シンプルなデザイン、降雪量の多さに対応した傾斜屋根など、典型的なニューイングランド風のつくりだ。背後にソーラーシステムが配置されている
サッカ&ビリングス家。ベランダは夏も深いひさしで涼しい。ハンモックで昼寝したり、読書、食事等家族全員ベランダで過ごす時間が多い。子供たちは夜ここで眠ることも…。この家にクーラーはない
サッカ&ビリングス家。ベランダは夏も深いひさしで涼しい。ハンモックで昼寝したり、読書、食事等家族全員ベランダで過ごす時間が多い。子供たちは夜ここで眠ることも…。この家にクーラーはない
暖房はこのストーブだけ。写真を撮ったのは夏だったが、冬はシチュー鍋がのる
暖房はこのストーブだけ。写真を撮ったのは夏だったが、冬はシチュー鍋がのる
サッカ氏はアイビーリーグのひとつ、伝統あるダートマス大学にビデオ作家として勤める。夏の間にひと冬分のマキを割って積み上げる。子供たちも学校から帰ると手伝ったり、小屋をつくったり…。テレビを見る時間はないとか…
サッカ氏はアイビーリーグのひとつ、伝統あるダートマス大学にビデオ作家として勤める。夏の間にひと冬分のマキを割って積み上げる。子供たちも学校から帰ると手伝ったり、小屋をつくったり…。テレビを見る時間はないとか…

環境問題への関心高まるアメリカ人

最近、「みどり(green)」という言葉をよく耳にする。日本には「緑の日」というのがあるそうだから、緑に関する関心の高さという点では、アメリカ人より日本人の方が先駆的といえるのかもしれない。アメリカでは、現在さまざまな分野で多くの人々が環境問題や地球の限りある資源について目を向けている。「環境問題」と一口に言っても領域は広い。突き詰めれば地球上のすべての事柄が含まれ、関連がある。ここではあえて住まいの問題だけに絞る。

快適さ、便利さをどこまで捨てられるか

これまで快適さと便利さを追求してきたアメリカ人達が、実際問題として環境保全のために生活を変えるのは、アイディアとしてわかってはいても自分のこととなると難しい。真冬でも暖房の効いた室内でTシャツ一枚で過ごし、外へ出かける時は家から直接続くガレージから車で出かける。ある友人は、室内からリモコンで車のエンジンをかけ、車の室内が充分暖まった頃おもむろに乗り込むと聞いた。 また、芝生を緑に保つためにどこの家でも夏は何時間も散水機を回す。やたらガソリンを喰う大型四輪車(ジープやハマーのような)の増加、一家に一台どころか一人に一台の車を持つのが現代の実像だ。 エネルギーを大量消費する生活習慣を変えるには、よほどの覚悟が必要、発想の転換が必要だが、うれしいことに個人レベルではわりあい可能性がありそうだ。なぜならすでにシックハウス症候群やガンの原因物質となる恐れのある素材など、身近な問題への意識が高まってきているからだ。まわりを見渡しても自分の身を守るために環境保全を考える人々が増えてきた実感がある。

環境を破壊せずより良い住環境を

エネルギー、水、建築資材などをどのように賢く使えば、環境破壊なく、あるいは最小限度にとどめつつ、より良い住環境が得られるのだろうか?  著書“Good Green Homes:Creating Better Homes for a Healthier Planet”の中で、ジェニファー・ロバーツはいろいろな住宅の例をあげ、わかり易く説明する。家を建てるにあたって、1.エネルギーを効率よく使い、公害をさける、2.できるだけフォーマルなスペースを作らない、3.安全な素材を選ぶ、4.住む場所の選択/公共交通手段の選択(車での通勤をさける)などを満たすことにより、環境保全が図られ、結果として我々の子供達により健康な環境を手渡す事ができるだろう、と述べる。

グリーンビルディングで光熱費75%節約

ロスアンゼルスの大手住宅供給会社のパーディホームズ社は、昨年サンディエゴに2,200軒のグリーンビルディング系の住宅を建設供給したが、蛍光灯の使用やタンクを使わない温水暖房などに切り替えることにより、従来の光熱費に比べ、何と75%の節約が実現できるという。今のところ、グリーンビルディングのコンセプトを喜んで受け入れる顧客層は主流ではないが、今後は増えるだろうと同社は述べている(02/09/04シカゴトリビューン紙)。

採算面ではまだまだ課題も

だが、住宅用建築に比べ、たとえば図書館や役所などのような公共建築物や、商業用・工業用建築物に関してはなかなか企業は足を踏み出せない。グリーンビルディング系にする場合、まず建築コストを懸念するのは経営者として当然であろう。特にコストパフォーマンスを考えた場合に、グリーンビルディング系は採算をとるのが難しいようだ。環境保全を考慮した素材を使用しても、実際、見ばえは従来の素材使用と特に変哲がないのである。 グリーンビルディングは、単なるトレンディな動きにとどまるのだろうか? 政府や関連団体がどう企業にアプローチしているか、追ってレポートする。

明美コーン

コーン 明美
横浜生まれ。多摩美術大学デザイン学科卒業。1985年米国へ留学。ルイス・アンド・クラーク・カレッジで美術史・比較文化社会学を学ぶ。 89年クランブルック・アカデミー・オブ・アート(ミシガン州)にてファイバーアート修士課程修了。 Evanston Art Center専任講師およびアーティストとして活躍中。日米で展覧会や受注制作を行なっている。 アメリカの大衆文化と移民問題に特に関心が深い。音楽家の夫と共にシカゴなどでアパート経営もしている。 シカゴ市在住。

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