海外トピックス

2004/4/20

vol.9 緑の暮らし グリーンビルディング (3)

続々と新しいビルが建つシカゴ市内。環境保全や光熱費を考慮に入れたグリーンビルディングが目立つ。
続々と新しいビルが建つシカゴ市内。環境保全や光熱費を考慮に入れたグリーンビルディングが目立つ。
コーティングしたガラス全面窓や健在に環境保全を考慮したハーンカンパニーのビル(イリノイ州エバンストン市)。保険会社やクリニックをはじめとする健康・安全関連の業種がテナントに入っている。入り口は緑色に塗られ、アーケードも渋い緑色。
コーティングしたガラス全面窓や健在に環境保全を考慮したハーンカンパニーのビル(イリノイ州エバンストン市)。保険会社やクリニックをはじめとする健康・安全関連の業種がテナントに入っている。入り口は緑色に塗られ、アーケードも渋い緑色。
裏から見たハーンカンパニービル。屋上は一面植物で埋められた緑の屋根となっており、夏は熱の吸収率を低下させる。
裏から見たハーンカンパニービル。屋上は一面植物で埋められた緑の屋根となっており、夏は熱の吸収率を低下させる。
オプティマヴューズ。グリーンビルディングであるためか、トレンディなカフェを持つ本屋やベジタリアンレストランなどがテナントとして入っている(イリノイ州エバンストン市)。
オプティマヴューズ。グリーンビルディングであるためか、トレンディなカフェを持つ本屋やベジタリアンレストランなどがテナントとして入っている(イリノイ州エバンストン市)。

WTC跡にも「グリーンビルディング」が

「グリーンビルディング」は、商業物件にかかわる不動産エージェントや土地開発業者にとっても魅力的な輝きを帯びてきたようだ。 「9.11」のテロによって破壊されたニューヨーク市のワールドトレードセンター(WTC)は現在大規模なグリーンビルディングとして着々と再建工事が進んでいる。テロ勃発の数日前にワールドトレードセンターをポートオーソリティ(交通局)から買い取った土地開発業者のシルバーステイン氏だが、いくら偶然とはいえ驚くべき事態に陥ってしまった。 グラウンドゼロの区画にはモニュメントであるフリーダムタワーとオフィスビルが建てられるが、シルバーステイン氏と関係者はこのプロジェクトのゴールを「環境保全を考慮したニューヨーク市の中の『新しい市』建設」としている。環境保全の学位取得者のダニエル・ティッシュマン氏が建設を請け負った。

建築工事中から環境保全対策

具体的にはどう「グリーン」なのだろうか?  確認したところ、建築工事中にクレーンやブルドーザーを使う場合には、大気汚染の元となるディーゼルを極端に汚染度の低い燃料に切り替え、三重のフィルターをつける。雨水は屋上のタンクにためてトイレの水洗に使用するといった取り組みがされている。また、建設業者は建材の再利用や石油系の建材を避け、コーンオイル系接着剤使用に切り替えるよう勧められているという。ビルは、それぞれのオフィスで光熱量を計測できるように設計されている。従来はビル全体で払っていた光熱費を個々で払うことになり、自然の成り行きとしておのおの光熱費を抑えるようになるだろうとの目論見だ。結果として全体の光熱量もセーブできる。 さらに52階建てのオフィスビルでは、床から天井まで新素材のガラス使用で太陽光線を適量取り入れ、室内温度はコンピューターで細かく調整調節。これらによって、従来に比較し、3%~5%光熱費を縮小できる見込みだという。

オフィスリースにも有利なコンセプト

確かに初期コストは従来の建築方式に比べ増大するが(約12億円)、長い目でみればグリーンにかかるこの余分の投資額は回収できる予定だそうだ(Chicago Tribune紙、2001年4月25日)。ニューヨークタイムズ紙のアンソニー・デパルマ氏によれば、「環境保全という視野から見ての芸術作品」だそうだが、それにも増して「地球環境を考慮したグリーンビルディング」というポリシーは多くの人々の共感を呼ぶので、シルバーステイン氏と関係者は、オフィスをリースする際にビジネスとして充分に通用すると判断したのではないだろうか?

建築コストも高いが、入居率も高い?

ボストン、ヒューストン、デトロイトに支店を持つ大手のハインズカンパニーは環境保全に力を入れているパイオニア企業だが、工事費に限ってみると、従来の建材使用に比べ約70円~160円(1フィート四方あたり)高くつくという。また、メリーランド州ロックビル市に「タワーコス」とよばれる商業用ビルディングがある開発業者により建設されたが、総工費は約74億円ですでに85%はテナント入居。反射ガラスや金属窓枠などの使用により環境保全と光熱節約に取り組んだ結果、工事費は1フィート四方あたり約14,900円で従来の施工方法より約240円高いという。いずれもまだ金銭面での見返りについては結果が出ていないそうであるが…(Chicago Tribune紙 2001年3月19日)。

都会のオアシスを演出する「グリーンビルディング」

現代はなにもかもがややこしく、人々は仕事だけでなく私的な時間も忙しい。特に30歳代から40歳代にかけての世代は、シンプルで健康的な暮らしを願いつつ日々忙しく暮らしている。グリーンビルディングは、例えばスターバックスやヘルスクラブ、ヨガクラスなどをテナントとしてひきつけつつあるように見受けられるが、ビルのコンセプトとそれらの店舗のコンセプトは「健康を守る」という点で同じゴールであるから当然であろう。これらテナントはグリーンビルディングの中の店、という付加価値により、客に都会のオアシスとしての役割をさらに強調できるのだ。 さまざまなことが地球規模で広がりつつある現在、自分自身の健康を含めた地球の健康と安全に関心を持つ人々が増え、「グリーンビルディング」は、ゆっくりではあるが、大きな動きになりつつあるような気がする。

明美コーン

コーン 明美
横浜生まれ。多摩美術大学デザイン学科卒業。1985年米国へ留学。ルイス・アンド・クラーク・カレッジで美術史・比較文化社会学を学ぶ。 89年クランブルック・アカデミー・オブ・アート(ミシガン州)にてファイバーアート修士課程修了。 Evanston Art Center専任講師およびアーティストとして活躍中。日米で展覧会や受注制作を行なっている。 アメリカの大衆文化と移民問題に特に関心が深い。音楽家の夫と共にシカゴなどでアパート経営もしている。 シカゴ市在住。

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