海外トピックス

2004/11/19

vol.23 都心か郊外か?

都心で続々と建設される分譲住宅。新しい素材、仕様、工法で、まちが様変わりしていく(イリノイ州シカゴ市)
都心で続々と建設される分譲住宅。新しい素材、仕様、工法で、まちが様変わりしていく(イリノイ州シカゴ市)
新聞広告も建築ブームを反映(シカゴトリビューン紙日曜版)
新聞広告も建築ブームを反映(シカゴトリビューン紙日曜版)
シカゴ市内のど真ん中の歴史的なビルも分譲住宅として様変わり。「分譲中」の横断幕が建物いっぱいに張られている
シカゴ市内のど真ん中の歴史的なビルも分譲住宅として様変わり。「分譲中」の横断幕が建物いっぱいに張られている
郊外でも住宅開発が続く(Sun City Huntley イリノイ州ハントレイ市)
郊外でも住宅開発が続く(Sun City Huntley イリノイ州ハントレイ市)
広々としたガレージを持つ典型的な郊外住宅(イリノイ州ハイランドパーク市)
広々としたガレージを持つ典型的な郊外住宅(イリノイ州ハイランドパーク市)

ホリディシーズン、今年は特に厳しい不動産市場

シカゴの秋は木々の紅葉が美しい。しかし葉が舞い落ち、刻々と夕暮れが早くなり、帽子や手袋なしでは出歩けなくなって、否応なく厳しい冬の訪れを知らされる。だから人々は賑やかにハロウィーンにはしゃぎまわったり、感謝祭に備えたりして、短い秋を精一杯楽しむのである。そしてすぐにクリスマスがやってくる。ホリディシーズンの開幕である。人々は家の補修、飾り付け、新しい家具の購入などに目を向ける。だから毎年この時期は不動産売買は低調だ。さらに今年は、イラク戦争、テロ、オイル価格値上がりなどが追い打ちをかけ、不動産業界は厳しい冬の様相が予想される。

都心ではターゲットを絞り、強気の供給

それでもシカゴ近辺の業者は強気。都心には続々と分譲マンションが建ち、郊外には新築の住宅が供給されているのが見受けられる。開発し尽くされた市の北側に代わり、南側の都市再開発が近年注目を浴びている。 市の南側、State Street Associatesにより建設された24階建て、243戸の分譲マンションは3,400万円からの価格帯。銀行、ドラッグストア、アスレティッククラブが1階の店舗に入居している( 08/31/03 シカゴトリビューン紙)。都心で忙しく働く若い人々の姿がターゲットとして目に浮かぶ。 「3,700万円以上の分譲マンションは動きが鈍いが、それ以下の物件は現在活発」とPrudential Prefereed Propertiesのコンサルタント、クレイグ氏も指摘(11/14/04 シカゴトリビューン紙)するように、売れ筋価格が見えてくる。 シカゴ市の老舗開発会社、Jameson Developmentの社長、ヒューゼニス氏は「価格をはっきりと上下に分けて設定し、購買客を絞った。中間層は現在、雇用が不安定な状況のため買い渋っている」と言う。同社は市の南側にジェファーソンタワーと名付けられた24階建て、198戸、2,688万円~4,500万円の分譲マンションを供給中。若い一次取得者層が対象だ。 一方で、シカゴ市の中心に2億6,000万円から4億円近い34戸の高額物件も販売しているが(08/31/03 シカゴトリビューン紙)、これらの高額物件はEMPTY NESTERSとよばれる子供達が巣立った夫婦が主なターゲット。彼らは家の手入れが簡単で、周辺にレストランや美術館や劇場など楽しむ場所が多く、交通が便利、などの理由で郊外から都心に移るのを望むのだが…。現在住む郊外の持ち家を売って都心に豪華な分譲マンションを買えるかどうかは、郊外での不動産売買の状況いかんにかかってくる。

郊外の住宅は、見た目重視?

郊外は家も道路もゆったりとスペースがとられており、「安全」でもある。安全であることは不安定な状況に住まう我々にとって強い魅力だ。家がモダンな内装で、価格さえ適正であれば、都心から郊外に移りたいと望む若い人々にすぐに売れるそうだ(02/29/04 シカゴトリビューン紙)。 バード&ワーナー社の不動産エージェント、ピエリニ氏によれば、閑静な中流層の住宅地グレンヴュー市では、中古物件の主流は5,000万円から8,000万円。彼らの親の世代は家を購入してから自分たちで時間をかけて修理改装したが、今の若い人々は自分たちの好みの家に即入居を望む。だから売る側では新築、中古物件にかかわらず、いかに外装、内装を今風の好みにしつらえるかに知恵を絞る。”今風”というのはCrate & Barrel社やPottery Barn社の商品にみられるカジュアルでシンプル、モダンなデザインをさす。「以前は、家を見に来た人々がまず質問するのは、建物の構造がしっかりしているか、屋根はどうか、固定資産税はいくらぐらいか、などだったが、現在は家に入るなり、一目見て表面的な外見で判断する人々が多い」と前述ピエリニ氏(11/14/04 シカゴトリビューン紙)。 ターゲットである30歳代から40歳代前半の人々は、子供時代、それぞれ自分の個室で自分のテレビやコンピューターに囲まれ育ってきたので、これから購入する家も、従来と比べ基本的なデザインからして違ってくるのは当然なのかもしれない。

数年前の不動産ブームに変わり、現在は建てればすぐ売れる、という状況ではなくなった。厳しい状況のなか、都心も郊外も購買層のターゲットをはっきりと絞り込み、彼らを惹きつける要素を分析し、それをどのように形としてあらわすかが成功への鍵のようだ。

明美コーン

コーン 明美
横浜生まれ。多摩美術大学デザイン学科卒業。1985年米国へ留学。ルイス・アンド・クラーク・カレッジで美術史・比較文化社会学を学ぶ。 89年クランブルック・アカデミー・オブ・アート(ミシガン州)にてファイバーアート修士課程修了。 Evanston Art Center専任講師およびアーティストとして活躍中。日米で展覧会や受注制作を行なっている。 アメリカの大衆文化と移民問題に特に関心が深い。音楽家の夫と共にシカゴなどでアパート経営もしている。 シカゴ市在住。

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