海外トピックス

2004/12/2

vol.24 ユダヤ人と不動産ビジネス(1)

ユダヤ教はクリスマスは祝わない。12月にはハヌカと呼ばれる「光の祈り」の時を1週間持つ。ろうそくを1日1本ずつ、7日間ともす。ユダヤ人が多く住むシカゴ市ロジャースパーク地区では、家々のキャンドルの明かりが美しい
ユダヤ教はクリスマスは祝わない。12月にはハヌカと呼ばれる「光の祈り」の時を1週間持つ。ろうそくを1日1本ずつ、7日間ともす。ユダヤ人が多く住むシカゴ市ロジャースパーク地区では、家々のキャンドルの明かりが美しい
ユダヤ系アメリカ人のパーティーで(イリノイ州ハイランドパーク市)。(左)リード・セチアン…リードの弟は弁護士だが、建物を買って改装し販売するビジネスマンでもある。サンフランシスコの小さなクイーンアン様式の古い建物から始めて、現在は南ロスアンゼルスからメキシコまで手を広げている。(右)リチャード・アーコック…コーネル大学の原子科学者
ユダヤ系アメリカ人のパーティーで(イリノイ州ハイランドパーク市)。(左)リード・セチアン…リードの弟は弁護士だが、建物を買って改装し販売するビジネスマンでもある。サンフランシスコの小さなクイーンアン様式の古い建物から始めて、現在は南ロスアンゼルスからメキシコまで手を広げている。(右)リチャード・アーコック…コーネル大学の原子科学者
三角形を重ねたダビデの星はユダヤ教のシンボルでもある。ろうそく立てや聖杯、皿など
三角形を重ねたダビデの星はユダヤ教のシンボルでもある。ろうそく立てや聖杯、皿など
信仰深いユダヤ人たちの「バミツバ」(少年の成人の儀式)。彼らは陽気で、男性同士、女性同士で輪になって、音楽に合わせ手拍子足拍子で全員踊りまくるのである(シカゴ市ロジャースパーク地区)
信仰深いユダヤ人たちの「バミツバ」(少年の成人の儀式)。彼らは陽気で、男性同士、女性同士で輪になって、音楽に合わせ手拍子足拍子で全員踊りまくるのである(シカゴ市ロジャースパーク地区)
ベルグラヴィア社が建設中のHartland Park Townhomes (シカゴ市)
ベルグラヴィア社が建設中のHartland Park Townhomes (シカゴ市)

宗教はアメリカでは重要な社会要因

もうすぐクリスマスがやってくる。アメリカに来た当時、多くの友人達に「メリークリスマス!」と言ったり、クリスマスカードを送ったりしたものだ。アメリカでは誰でもが祝うのかと思っていたが、大違い。後年、クリスマスはキリスト教の宗教行事であり、ユダヤ教徒、イスラム教徒、ヒンズー教徒、仏教徒などはクリスマスを祝わない、ということがわかったのである。 人に「宗教は?」と訊かれ、私が「家は仏教(仏壇がある)、父は神道(毎朝神棚を拝む)、母はクリスチャン」などというと、アメリカ人の誰もが信じられない!という顔をする。私を含め多くの日本人達はそれほど宗教にこだわらず日々を送っているのではなかろうか? ところがアメリカでは、自分の宗教の戒律に従い暮らしている人も多く、ふたつ以上の異なった宗教に従う人はまずいない。宗教は今回の大統領選挙でも学校教育に伴う問題のひとつに取り上げられたほど、アメリカ社会の中で重要な部分を占めているのである。

厳しい環境下、独自のビジネスを開拓したユダヤ人

さて、不動産ビジネス全般においては、アメリカ全国民のわずか2.5%にしか過ぎないユダヤ系アメリカ人が多く活躍しているのが注目される。というのは、家の売買に関し、金融業者や弁護士、税理士、計理士などが関わり、これらの職業にはユダヤ系が非常に多いのである。 弁護士であり、長年主要在米ユダヤ組織会長会議の議長を勤めたビアルキン氏は土井敏邦著「アメリカのユダヤ人」(岩波新書)の中で土井氏のインタヴューに答え、「戦後メジャーな仕事に就けなかったユダヤ人は、独自に新たなビジネスの分野を開拓していったのです。その一つは不動産業です。アメリカ市民なら誰だって土地やビルの売り買いはできますから。他には娯楽業やマスメディアの分野があげられます。また金融業も、伝統的な分野以外の部門にユダヤ人が進出しました。もし父親が大企業で高い地位についているような環境だったら、ユダヤ人はこんなビジネスに進出する事もなかったでしょう」と述べている。 ユダヤ人達に対する差別は1960年代まで非常に厳しく、彼らは同胞同士で助け合い、夢を彼らの子供達にかけたのである。大量に移民がやってきた1900年前後から100年を経た今、活躍中のユダヤ人の多くは3世代目にあたる。

風紀の悪い地域を様変わりさせたディベロッパー

シカゴで最も画期的な都市の再開発を行なっている総合住宅建設会社、Belgravia Group(ベルグラヴィア・グループ)を紹介しよう。 ベルグラヴィア社のCEO, 社長、副社長など重役12人のうち名前からみると5人か6人はユダヤ系と思われる。超高級住宅地であるリンカーンパークを皮切りに、ミシガン湖に面した一等地のシカゴ市中心地および中心地から西と南へ広がる多くの分譲住宅を建設販売中。 同社のウエブサイトに紹介されている数箇所の最新プロジェクトは建物自体がモダンで洗練されていて、ターゲットがよく絞り込まれている。例えば600 N. Lake Shore Driveのコンドミニアム。裕福なシニアを対象にした湖を見晴らす3ベッドルームの邸宅は3.5のバスルームがついて1億5,000万円から。ハンディキャップ向きの間取りも用意されている。フィットネスルームや、暖房付の車庫つきだ。 シカゴ市の南部は、市の中心には近くても以前は非常に風紀が悪く、昼間でもドライブするのをためらうような地域だった。西部も市の中心に近いが、第一次産業が衰退した後、操業停止の工場が多く放置されていた工場地帯であった。90年代に入り、ベルグラヴィアをはじめとするいくつかの住宅建設会社によって南と西の広い地域が再開発され、驚くほど様変わりしたのである。 ベルグラヴィア社による再開発地区のコンドはしゃれたデザインで、特に都心に働く若いプロフェッショナルを惹き付ける。建物には室内車庫つき、テラスつき、周囲にはしゃれたレストランや夜の娯楽があふれているのが強調されている(www.belgraviagroup.com)。美しく行き届いたサイトであるばかりでなく、地図やカラー写真、間取り、価格など分かり易く配置してあり、さらに購入に関し非常に実際的であるのに感心した。 さらに、融資の相談から税務関係におけるすべてのプロセスを専門家のアドバイスにより容易に行えるようよく配慮がしてある。参考にしていただきたいと思う。

明美コーン

コーン 明美
横浜生まれ。多摩美術大学デザイン学科卒業。1985年米国へ留学。ルイス・アンド・クラーク・カレッジで美術史・比較文化社会学を学ぶ。 89年クランブルック・アカデミー・オブ・アート(ミシガン州)にてファイバーアート修士課程修了。 Evanston Art Center専任講師およびアーティストとして活躍中。日米で展覧会や受注制作を行なっている。 アメリカの大衆文化と移民問題に特に関心が深い。音楽家の夫と共にシカゴなどでアパート経営もしている。 シカゴ市在住。

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