




芸術分野でも多くのユダヤ人が活躍
私が芸術関係の仕事についてから、多くのユダヤ系アメリカ人達の活躍が目を引くようになった。それが彼らに興味を持ち始めたきっかけである。ユダヤ人が占める割合はアメリカ全人口の2.5%、100人のうち2人か3人の割合のはずであるが、思いついただけでも絵画では、ロイ・リヒテンシュタイン、ジョナサン・ボロフスキー、ジュディ・シカゴ、ベン・シャーン、バ-ネット・ニューマン、マーク・ロスコー、ミリアム・シャピロ、彫刻家ではルイーズ・ニーベルソン、ジョージ・シーガル、ジム・ダイン、フィリップ・ガストン、エヴァ・ハッセィ、音楽ではレナード・バーンスタイン、ジョージ & アイラ・ガーシュイン、脚本家ではニール・サイモン、写真家のリチャード・アベドン、アルフレッド・スティーグリッツ、シンディ・シャーマンなど、100人のうち2~3人どころか、指が足りなくなるくらい多いのである(http://www.jewishvirtuallibrary.org)。ユダヤ人特有の名前も多いが…
ではどうやってユダヤ人とわかるのだろう? まず名前。ユダヤ人特有の、例えばバーンスタイン、アインシュタイン、シャピロ、、、など。そして外見もしかり。ところが、カールした黒い髪やかぎ鼻はステレオタイプとして思いつくが、金髪やまっすぐな髪の人、青い目の人も多く、外見だけでユダヤ人と決めつけるのは難しい。 文芸評論家・松村剛氏は“ユダヤ人とは人種的概念というより宗教的概念”であるととらえ、“ヒトラーはユダヤ人の『血』ということを強調したが、血の問題だけで、ユダヤ人を説明することはできない。イスラエル政府は、ユダヤ人を定義して、母親がユダヤ人であること、という見解を採用した。ユダヤ教では、たとえ異教徒と結婚しても、女のほうは必ず子供をユダヤ教徒にするという掟があるから、これはユダヤ人とはユダヤ教徒のことである、と言っているのに等しい。”と述べている(松村剛著「ユダヤ人」中公新書)。 しかしながら、私は血の中に、つまり遺伝子DNAとしてユダヤ人としての要素が含まれているのではないかと思う。ユダヤ人の家庭に生まれ、キリスト教徒と結婚した友人が「小さな炎が存在し、ユダヤ人として反応する時がある」と述べている。一方、キリスト教の家庭に生まれ、のちにユダヤ教に改宗した何人かの友人がいるが、確かに敬虔なユダヤ宗徒ではあっても、私は彼らを「ユダヤ人」と呼ぶのをためらうだろう。同じ宗教の中でも4つのタイプが
宗教とのかかわり合いでユダヤ人を分類すると、正統派(Orthodocs)、 保守派(Conservative)、モダン保守派(Traditional)、改革派(Reform)など多様。 正統派は豚やエビ、貝を食べず、決められた昔ながらの調理法に従い、厳しい戒律の中で生活する。例えばシャガールの絵に出てくる、黒い帽子をかぶりひげをはやした老人のように。 保守派は普通の服を着ているが、男性はヤマカとよばれる小さな帽子をいつも頭にのせ、女性は長いスカート、地味な色づかい。 モダン保守派は豚もエビも食べるが、主なユダヤ教の行事には参加し、ユダヤ人としての自覚を持つ。 改革派はユダヤ人としての束縛は自分に課さず、他の宗教を信じる人も含む。多様な宗教が混在するアメリカでの不動産ビジネス
不動産ビジネスに関しても、人々との会話の中に微妙なニュアンスが含まれていることに気づくことがある。シカゴ市にユダヤ人が多い地区もあれば、他の宗教、例えばヒンズー教徒インド人やカソリック教徒ポーランド系、同イタリア系の多い地区もあるからだ。 ある時、引っ越してきたある日本人が「近所はクリスマスの明かりや飾りがなくて、いやに物寂しい所、、、」と嘆いていたが、そこはユダヤ人の多い地域であった。彼らはクリスマスを祝わないので、何も飾りはないのが当然だ。一方、ユダヤ人や黒人、アジア人を入れない「白人(WASP)のみ」の地区も驚くべきことだが、実際に存在する。アメリカはこれら多くの宗教の違う人々が住むのであるから、不動産ビジネスにかかわる場合、ある程度の知識と心遣いが必要となろう。(おわり)
コーン 明美
横浜生まれ。多摩美術大学デザイン学科卒業。1985年米国へ留学。ルイス・アンド・クラーク・カレッジで美術史・比較文化社会学を学ぶ。
89年クランブルック・アカデミー・オブ・アート(ミシガン州)にてファイバーアート修士課程修了。
Evanston Art Center専任講師およびアーティストとして活躍中。日米で展覧会や受注制作を行なっている。
アメリカの大衆文化と移民問題に特に関心が深い。音楽家の夫と共にシカゴなどでアパート経営もしている。
シカゴ市在住。