



インターネット上に、「ZipRealty」や「ForSaleByOwner.com」など、オンライン上で不動産売買を行なう業者が急成長し、さまざまな現象を引き起こしている。
エージェントを通した売却は、手数料が6%
通常、家を売る場合、その地域か、友人などの紹介による不動産エージェントに依頼することが多い。エージェントは自分が所属する不動産会社を通して、売り家の詳細情報を記した広告を業界リストに登録し、リスティングエージェントとして売却業務を代行する。家が売れた場合は、売り手はコミッション(手数料)として、売れた物件の金額の(多くの場合)6%を不動産エージェントに支払う。例えば、5,000万円でその家が売れたとすると、300万円を不動産エージェントに支払うのであるから結構な金額だ。不動産エージェントは、自分が属する不動産会社とその金額を折半することになる。 家を売るもうひとつの方法として、売り手が不動産エージェントを使わず、直接売る場合もある。決まれば売り手と買い手との直接取引になり、6%のコミッション料が不要になる。しかし一方で、広告手段が限られる。例えば家の前庭に看板を立てるくらいしか出来ないため、買い手は通りすがりの人々であり、対象が限られるという弱点がある。インターネットで買い手がつけば手数料の一部がバック
その点、「ForSaleByOwner.com」では、同じ、売り手が直接家を売るにしても、インターネット上で広告するのであるから、全国どころか、世界中に買い手を求められる。同様にオンライン上で取引する「ZipRealty」での売買では、家が売れた場合に、売り手は従来通り6%のコミッション料をZipRealtyに支払うが、その金額の何割かは売り手に戻ってくるリベートシステムをとっている。M.L.S.は独禁法違反と、オンライン業者が訴訟
家の売買を目的とした情報を全国的に流すのは、これまで全米で最大の不動産業者の団体であるN.A.R. (National Association of REALTORS=全米リアルター協会)のM.L.S.(マルティプルリスティングサーヴィス)の独占であったので、これは独占禁止法にふれるのではないかと、オンライン不動産業者が訴訟を起こした(Chicago Tribune newspaper 12/05/04)。結果は上記のオンライン不動産業者が勝訴したが、1959年に制定された法律では2004年のインターネット上でのビジネスを裁くのに、多々問題があったと思われる。思いもかけないスピードで進化を続けるインターネットビジネスに対し、従来の法律での適応に問題点を投げかけた一例であった。オークションサイトは突飛な物件が人気だが…
もう一つの例として、オークションがあげられる。日本でもネット上での売買は盛んだと思うが、 eBayで「家」を検索したら168件出てきた。抵当物件が多く見受けられ、価格も安く設定されているが、実際の物件を見ないことにはなんとも判断できない。前回の記事で、的を絞ったサイトは有効だ、と述べたが、eBayオークションでも、レトロとして生まれ変われるような古くさいモーテル、紫色のネオンつき怪しげな雰囲気のナイトクラブ、南部のへんぴな場所のボーリング場など、普通人が思い浮かばないような突飛な物件に人気が集まるようである(ChicagoTribune01/16/05)。たしかにeBayオークションに出せば、全米規模で顧客を獲得できるのが最大の利点であろう。しかし現地でその物件を確認もせず、購入に踏み切る買い手が実際どれだけいるかは疑問である。

コーン 明美
横浜生まれ。多摩美術大学デザイン学科卒業。1985年米国へ留学。ルイス・アンド・クラーク・カレッジで美術史・比較文化社会学を学ぶ。
89年クランブルック・アカデミー・オブ・アート(ミシガン州)にてファイバーアート修士課程修了。
Evanston Art Center専任講師およびアーティストとして活躍中。日米で展覧会や受注制作を行なっている。
アメリカの大衆文化と移民問題に特に関心が深い。音楽家の夫と共にシカゴなどでアパート経営もしている。
シカゴ市在住。