海外トピックス

2005/2/21

vol.29 インターネット上のオークション

田舎の古い教会がのどか。情報、通信、交通網が発達した現在、こんな場所でのビジネスもいいのでは?(ウィスコンシン州)
田舎の古い教会がのどか。情報、通信、交通網が発達した現在、こんな場所でのビジネスもいいのでは?(ウィスコンシン州)
汽車より車が流通手段となった現在、線路は使われなくなり、同時に町もさびれていく。こういった場所は土地も建物も大変安く入手できるが…(ミシガン州北部)
汽車より車が流通手段となった現在、線路は使われなくなり、同時に町もさびれていく。こういった場所は土地も建物も大変安く入手できるが…(ミシガン州北部)
見渡す限り畑が広がる中西部。酪農が中心だが、若者は大都市に出て行ってしまい、人口が減少している(ウィスコンシン州)
見渡す限り畑が広がる中西部。酪農が中心だが、若者は大都市に出て行ってしまい、人口が減少している(ウィスコンシン州)
中西部のビールとチーズを売る典型的な雑貨屋。田舎ならではののどかな佇まいだ(ウィスコンシン州グリーンベイ市)
中西部のビールとチーズを売る典型的な雑貨屋。田舎ならではののどかな佇まいだ(ウィスコンシン州グリーンベイ市)

15年間放置されていた学校舎に買い手が!

見渡す限りトウモロコシ畑がひろがり、スカンク狩りくらいの楽しみしかないアメリカのど真ん中、カンサス州ゲイロード村に突然変化が起きた。アメリカ中西部の穀倉地帯の過疎地の話である。 若者達は都会に出てゆき、クリスマスの合唱隊にも事欠くほど若者が減り、学校はついに閉鎖に至った。小、中、高校合わせた3万スクェアフィートの校舎を取り壊すにも1,200万円以上費用がかかる。この金額は1年間の村の運営費にあたり、到底捻出不可能。どうにも処分に困っていた。たまたま農機具を「e-bay」で売ったという村人の話を聞いた町会議員のマックは、e-bayで校舎をオークションに出すことに決め、値段は思いついたまま、適当に300万円とした。 その日から電話が鳴り始め(コンピューターはない)、ついにシアトル在住のアーチャット夫妻が体育館や厨房、カフェテリアを含めた学校舎を入手した。 35歳、音響機器製造業者のアーチャット氏は、シアトルでは到底望めないスペースを手に入れ、現在、田舎暮らしを嬉々として楽しんでいる様子だそうである。15年前に閉校し、その後放置されていたので、改築には360万円以上の費用がかかったという。まだまだ、体育館やロッカールーム、カフェテリアの整備などが未着手で、今後、時間も費用もかかることであろう。しかし、都会に比べ、機械の音など、近隣に気兼ねはないし、必要な機械を運び込むにも、シアトルでは借りるのに1日6万円かかるフォークリフトを、ゲイロード村では隣人が喜んで貸してくれるそうだ。村では、校舎を売った費用で古びた下水設備を整備したという。アーチャット夫妻のビジネスにより、村に活気がよみがえるだろうと村人達は期待している。

小・中学校舎を買い取り新事業を始める女性も

エンジン販売をアリゾナ州フェニックス市で営んでいた33歳のスザンナ・アザレラは、同様に、e-オークションで小、中学校舎を約600万円で競り落とし、カンサス州にある人口210人のマックラッケン村へ引っ越してきた。以前より3倍以上も広いスペースなので、エンジン販売は中学校舎のみにし、小学校舎を使って近くビールの醸造を始める予定という。マックラッケン村では前述のゲイロード村と同様に児童数が減ったため、校舎を閉鎖せざるを得なくなり、これらを慈善団体に寄付しようとしたが、引き取り手がなく、放置されていた。e-オークションにかけた際も、村にはコンピューターを持っている者がいなかったので、近隣の牧場主に助けを乞うやら、大わらわだったという。 他にも、廃校になり、売りに出された学校舎はe-オークション上で人気がある。カンサス州という場所柄、これら学校舎はどれも大平原のただ中にあるため、フロリダの不動産業者が買い取り、転売。買い取ったのはバッファロー保護協会で、同協会は「バッファローの博物館」にするとの話もある(1月23日シカゴトリビューン紙より)。

世界規模で買い手を探せるのが強み

e-オークションの強みは売れるものすべての情報が全米規模どころか、世界規模で流される点ではなかろうか? だれかにとっては価値がなくても、ある人にとっては、新しい価値を与えられる可能性がある。ちなみに、先日ラジオで聞いた話だが、若い男性が思いついたアイディアで、自分の額に広告をのせて、あるいはペイントして、ある期間動きまわる、というe-オークションである。1万2,000円から競り開始、ついに何と420万円で競り落とされたそうだ(National Public Radio)。

若者の起業ニーズが「村おこし」につながる??

さて、不動産の場合は値段がはるし、実際に物件の場所の確認が必要である。購入者は現地へ何度か下見におもむくことになろう。勝者は競りとった物件をいざ購入の段、現地で契約書のとりかわしなどをせねばならぬから、従来の不動産売買のプロセスとそれほど違うわけではない。しかし、従来は取引の時点において、何人が自分と争っているのか、条件は、値段はつりあげてきているのかなど、明細は霧の中。その点、e-オークションは情報がすべて開示され、明快である。また、若い層には「村おこし」というような大層な使命感はなく、需要と供給、とさりげなく割り切っている様子が感じられる。若い人々の自営業が増えてきている昨今、都会から過疎の村への大移動は興味深い社会現象といえよう。

明美コーン

コーン 明美
横浜生まれ。多摩美術大学デザイン学科卒業。1985年米国へ留学。ルイス・アンド・クラーク・カレッジで美術史・比較文化社会学を学ぶ。 89年クランブルック・アカデミー・オブ・アート(ミシガン州)にてファイバーアート修士課程修了。 Evanston Art Center専任講師およびアーティストとして活躍中。日米で展覧会や受注制作を行なっている。 アメリカの大衆文化と移民問題に特に関心が深い。音楽家の夫と共にシカゴなどでアパート経営もしている。 シカゴ市在住。

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