




日本がすっぽり入ってしまう広大なテキサス州
ヒューストン市中心部にある「テキサスメディカルセンター」を訪れた。テキサス、といえば「西部」のイメージがあったが、日本がゆうゆう入る程大きいテキサス。西は砂漠、東は緑あふれ、南へいけばヒューストンのようにメキシコ湾に接し蒸し暑い平地・・・、気候も地形もさまざまである。初代テキサス共和国大統領であったサム・ヒューストン(1793-1863)の名をとったヒューストン市は、100年以上の歴史を持つが、宇宙開発スペースセンター、IT技術、医療関係などに力を入れた1970年代以降急発展した。40以上の医療関連機関が集中する一大センター
テキサスメディカルセンターは世界最大規模の総合医療地区である(以下、www.tmc.eduによる)。 60年代以後、同エリアには次々に医療関係のビルが建てられ、現在では、テキサス大学医学部、薬学部、歯学部をはじめ、ライス大学、テキサス女子大学、薬科大、看護大学、テキサス大付属病院、癌専門病院、子供病院、その他いくつもの総合病院、医療図書館、血液センター、ヒューストン健康医療市役所、リサーチ専門研究所、テキサス心臓研究所、臓器移植研究所、リハビリ研究所など、健康に関する看護、リサーチ、教育など、40以上の機関、100棟余の建物が1.6km四方に集中する。世界50カ国から訪れる患者
5万人がここで働き、9万人がここで学んでいるそうだ。うち2万人はフルタイムの学生である。1日10万人以上の患者と訪問客でにぎわうこのエリアでは、無料のシャトルバスが関係者のために絶え間なく各建物の間を走り回っている。 施設のひとつ、テキサス子供病院に例をとると、1,580人の小児科関係の医師と6,000人以上のスタッフがおり、世界50カ国以上から患者が訪れるという。 テキサス大学付属病院のM.D. Anderson Cancer Center(M.D.アンダーソン癌センター)は世界最大規模の設備を誇る癌専門病院であるが、各国からの患者を受け入れるため、約40カ国の医療通訳者の対応など、インターナショナルサーヴィスが設けられている。中近東の石油王が自家用機で治療に来て、病院のワンフロアを貸し切りにした、という話も聞いた。住まいをはじめ、関連ビジネスも多種多様に
全米だけでなく世界各国からの訪問者をさばくため、輸送網、宿泊設備は驚くべきものがある。メディカルセンターを中心としたおよそ3km圏内にはホテルと短期宿泊用アパートが点在しており、例えば、病院に隣接するロータリーハウスインターナショナルは、M.D.アンダーソン癌センターが遠来からの癌患者と家族のために、ロータリークラブその他の寄金により設立したホテルだが、このホテルには、患者と付き添いのために空港往復の車や搭乗券、車いすなど特別の手配をするトラベルサーヴィスまで設けられている。 他にも患者用のホテルが数多くあり、どこも室料割引や通院の巡回シャトルバスのサーヴィスが受けられる。ホテルの「スウィート」とよばれる2部屋続きの部屋は患者の家族にとって便利だ。簡単なキッチンを備え、洗濯もホテル内でできるし、掃除は週に1回メイドサービスがある。1週間ほどならホテルでもよいが、長期滞在となると、家具付きのアパートが経済的であるからだ。 それにしても・・・、病院の周囲の住まいの受け入れ対策など、医療に関連したさまざまなビジネスにおそれいってしまうのであった。

コーン 明美
横浜生まれ。多摩美術大学デザイン学科卒業。1985年米国へ留学。ルイス・アンド・クラーク・カレッジで美術史・比較文化社会学を学ぶ。
89年クランブルック・アカデミー・オブ・アート(ミシガン州)にてファイバーアート修士課程修了。
Evanston Art Center専任講師およびアーティストとして活躍中。日米で展覧会や受注制作を行なっている。
アメリカの大衆文化と移民問題に特に関心が深い。音楽家の夫と共にシカゴなどでアパート経営もしている。
シカゴ市在住。