海外トピックス

2008/7/18

vol.111 オバマの家(その1)

バラック・オバマ民主党上院議員の自宅。合衆国政府から派遣された車が前に停まっている。中にはセキュリティガードが乗り込み、常時警戒を怠らない(イリノイ州 シカゴ市。以下同じ)
バラック・オバマ民主党上院議員の自宅。合衆国政府から派遣された車が前に停まっている。中にはセキュリティガードが乗り込み、常時警戒を怠らない(イリノイ州 シカゴ市。以下同じ)
オバマが住んでいるハイドパーク/ケンウッド界隈の屋敷。すべて専門の職人が時間をかけてひとつひとつ制作したのであろう。
オバマが住んでいるハイドパーク/ケンウッド界隈の屋敷。すべて専門の職人が時間をかけてひとつひとつ制作したのであろう。
同じくオバマの家の近所のチューダー様式の屋敷。30くらい部屋があるのではなかろうか?
同じくオバマの家の近所のチューダー様式の屋敷。30くらい部屋があるのではなかろうか?
このコンドミニアムは精巧な手彫りの石細工が窓の上や下にほどこされ、古き良き時代をしのばせる。通りには、19世紀半ばハイドパークをつくり上げたポール・コーネル氏の名前がついている
このコンドミニアムは精巧な手彫りの石細工が窓の上や下にほどこされ、古き良き時代をしのばせる。通りには、19世紀半ばハイドパークをつくり上げたポール・コーネル氏の名前がついている
地元だけあって、そこここにオバマ支持のポスターを見かける
地元だけあって、そこここにオバマ支持のポスターを見かける

住まいの選択で、人となりがみえてくる

ワシントンの政治を主に取り上げる保守的な雑誌、ウィークリースタンダード誌で、アンドリュー・ファーガソン氏は「人がどんな場所に住まいを選択したかということはその人を判断する良い物差しになる」と述べている(www.weeklystandard.com)。 その人が家族と共に住み、その地域が彼等にとって快適であるということは、その地域の持つ特色がその人の暮らし方や人生観に合致しているからに他ならない。時期大統領候補オバマ民主党上院議員(以下敬称略)は1984年にシカゴにやってきて、市のコミュニティオーガナイザーとして働き始め、ハーバード大学大学院で法律修士号を得た後、シカゴ出身のミシェールと結婚し、現在2人の娘達と共に、ハイドパーク/ケンウッド地区に住まいをかまえている。その一帯は1,200万円から3億6,000万円位までの一戸建て住宅(www.ziprealty.com)が立ち並ぶ高級住宅地である。

欝蒼とした屋敷町にある、オバマの家

シカゴ市の中心街からミシガン湖に沿って南へ11kmドライブすると、15分ほどで科学博物館や東洋考古館、シカゴ大学などの古風な建築物を中心とするハイドパーク/ケンウッド地区に到着。鬱蒼とした大きな木々に覆われ、並木道は薄暗くてトンネルのようだ。ひとつひとつの家はいずれも由緒ありげで、全体のまち並みは19世紀に発展した屋敷町だと即座に推量できる。 番地も表札も出ていないオバマの家は玄関や窓が正面に向き、左右対称デザインの”ジョージアン様式”。煉瓦作りで格調高い大邸宅だが、明るく開放的でもある。気軽に門を通り抜けて玄関のドアをノックしたい気持ちに落ち入るが、合衆国政府から派遣されたとおぼしき車がぴったりと家に横づけられ,ガードマンが常時警戒している様子であった。

シカゴ大学の躍進で名をあげたイリノイ州

ハイドパーク/ケンウッドは1850年頃、手広く商売をし不動産業者でもあったポール・コーネルにより開発された。イリノイ州は奴隷解放を南北戦争のスローガンに掲げたアブラハム・リンカーンの生地である。解放後、逃げ出してゆく奴隷達をかくまう隠れ家が、逃亡ルート沿いにアメリカ北部各地にあったが、コーネルも自分が所有していたいくつかの住まいやホテルを潜行中の奴隷達に提供したとか。 リンカーン未亡人が泊まったといわれ、当時シカゴビジネスの中心で繁盛していたコーネル所有のホテルは1879年のシカゴ大火で残念ながら燃え落ちてしまった。1890年代にジョン・ロックフェラーが同地にシカゴ大学を設立し、その後百十数年経た現在、大学院や研究所を含めたシカゴ大学は、80人以上のノーベル賞受賞者を出した優秀校となった。1893年には世界大博覧会が催され、シカゴ大学は大きな役割を演じ、その名を世界に知らしめた(http://en.wikipedia.org)。 

住宅地再開発阻止へ、周辺土地を購入したシカゴ大学

1950年代になると、経済不況を打破するために、全米で最初の都市再生計画の一環として、シカゴ市に合衆国政府および市の後援で新たなコミュニティ作りが始まった。そのゴールは高水準を保つ多人種混合のコミュニティを作り上げることで、低所得者向けの住居が多数都心の住宅地に建設され、ほとんどは黒人であった多数の低所得者を迎え入れた。高い理想に裏付けられた画期的なプランではあったが、しかし、その結果、犯罪が増加、低所得者向けの住居が建てられた界隈の土地の価格が下落した。いよいよハイドパーク/ケンウッド地区にもその都市再生計画が適用されそうだと察知したシカゴ大学では、アリゾナ州かニューメキシコ州などへ大学移転を考慮し始めた。しかし、大学ぐるみ引っ越すのは莫大な金額と労力を伴う。熟慮の末、シカゴ大学では、引っ越す代わりにシカゴ大学周辺をより素晴らしく保つ方法を選択したのである。 できうる限りの”土地を購入、支配し、そして我々の近隣を再建” (www.weeklystandard.com)する決意を固めて実行に移した結果、シカゴ大学が望んだとおりの父権干渉主義的なコミュニティに変貌したのである。

オバマの邸宅をめぐるさまざまな噂

シカゴ大学で法律学の教鞭をとったこともあるオバマは、シカゴ大学界隈のハイドパークに住み、その後2005年にケンウッド地区にジョージアン様式の屋敷をおよそ2億円弱で購入した。ローンはイリノイ州のノーザントラスト社から30年固定ローン、利率は5.625%。それは当時のシカゴ市において平均より低い金利であり、オバマは月々3万6,000円以上節約できる計算になるという。 なぜ普通の人々には同様の低金利が適用されず、上院議員がそういった特別待遇を受けられるのか、とジョージタウン大学法律学教授のアダム・レヴィティン氏らが疑問を投げかけている(www.washingtonpost.com)。 また、オバマが民主党代表選出選挙の際、資金集めに多大な協力を惜しまなかったトニー・レズコーはオバマの友人である。不動産会社やレストランなど手広く経営をし、政治家に深く繋がりのある大物レズコーは、5年前にオバマがケンウッドの邸宅を買う際に、隣接する狭い帯状の地所(レズコーの妻が買った)を非常に安い価格でオバマに提供したとか。この取引は法的に合法で何の不正もないものの、レズコーは今年1月にいくつかの罪に問われ、服役し、4月には9億円近い保釈金を積んで自宅に戻ったという話題の主。 オバマは困惑したに違いないが、オバマの邸宅をめぐっていろいろあることないこと、取沙汰されている現在である(4/18/08 www.wbbm780.com)。

明美コーン

コーン 明美
横浜生まれ。多摩美術大学デザイン学科卒業。1985年米国へ留学。ルイス・アンド・クラーク・カレッジで美術史・比較文化社会学を学ぶ。 89年クランブルック・アカデミー・オブ・アート(ミシガン州)にてファイバーアート修士課程修了。 Evanston Art Center専任講師およびアーティストとして活躍中。日米で展覧会や受注制作を行なっている。 アメリカの大衆文化と移民問題に特に関心が深い。音楽家の夫と共にシカゴなどでアパート経営もしている。 シカゴ市在住。

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