世界には首都の移転を計画している国がいくつかあるが、隣国韓国においても首都機能移転が着々と図られているようだ。2012年、国の中央部に「世宗(セジョン)特別自治市」が新設され、中央行政機関の移転等が進んでいる。
韓国の首都機能移転計画の歴史はこうだ。1976年、人口流入が著しい首都・ソウルの住宅不足解消を目的として、首都移転計画が浮上。ソウルは北朝鮮国境から約40kmの距離にあることから、安全保障の観点でも移転が望まれた。しかし、計画は進まず、その後2002年憲法裁判所により「遷都違憲判決」が下ったことで、暗礁に。政府は首都の”機能”を移転する計画に変更し、ようやく世宗の発足に至った。
24年6月までに日本の省庁に相当する「部処」など47の中央行政機関、16の国策研究機関、10の公共機関の移転が完了。世宗はソウルから120km離れていることから、多くの公務員は家族ぐるみで転居することとなり、発足当初約11万人だった世宗の人口は、今では約40万人までに増加。人々の暮らしの基盤を構築するべく、この10年間で大規模な住宅供給、商業施設開発、学校や病院の新設、インフラ整備などが急ピッチで進んだ。
近年は、価格高騰によりソウルでの住宅購入を諦めていた30〜40歳代の人々が世宗で物件を購入する動きが見られるなど、不動産市場も活況に。住宅需要が供給を上回ったことで、価格高騰が問題視されるようにもなってきた。
「月刊不動産流通2024年10月号」では、韓国在住の広告コピーライター兼フォトグラファー・佐々木 和義氏が同計画のあらましや、現状・課題、今後の展望等についてさらに詳しく紹介している。