記者の目 / ハウジング

2008/8/5

CO2排出ゼロ、電気代ゼロをめざして

アイフルホーム、研究住宅「クールアースモデル」を完成

 先日の洞爺湖サミット・首脳宣言に「世界全体で温室効果ガスの排出を半減させる」という長期目標を世界で共有することが盛り込まれたとおり、環境への対応は、日本、そして世界の喫緊の課題となっている。  こうしたなか、(株)トステム住宅研究所のアイフルホームカンパニーが「家での生活」だけではなく、「自動車」から排出されるCO2も含め、家庭の暮らし全体でCO2をゼロにする「CO2ゼロライフ」の実現をめざした実験住宅「クールアースモデル住宅」を開発。東京都葛飾区に完成した。  ほんとうに住生活でCO2排出をゼロにすることができるのか、自動車からのCO2排出もゼロにすることなどできるのか…。「クールアースモデル住宅」を見学してきたので、その様子をレポートする。

「クールアースモデル住宅」外観
「クールアースモデル住宅」外観
2階南面の大型開口部からは、2階はもちろん1階にも、太陽光がさんさんと降り込む
2階南面の大型開口部からは、2階はもちろん1階にも、太陽光がさんさんと降り込む
左下の写真が、硫酸ナトリウム(板状のプラスチックの中に入っている)。冬季はこれが蓄熱、夕方から冷え込みが厳しくなる時期に徐々に放熱されるという
左下の写真が、硫酸ナトリウム(板状のプラスチックの中に入っている)。冬季はこれが蓄熱、夕方から冷え込みが厳しくなる時期に徐々に放熱されるという
右上、○で囲んでいる箇所が雨水タンク。手前が雨水プール。庭の水まきなどに利用できる
右上、○で囲んでいる箇所が雨水タンク。手前が雨水プール。庭の水まきなどに利用できる
2階、南に面した大サッシ。ここはペアガラスとし、光を、そして冬季は熱をとりこむ
2階、南に面した大サッシ。ここはペアガラスとし、光を、そして冬季は熱をとりこむ
南の大サッシに面する形で配置された北面のサッシ。上の窓を開ければ、温まった空気はここから外にでていく。昔からある日本の知恵を生かしている
南の大サッシに面する形で配置された北面のサッシ。上の窓を開ければ、温まった空気はここから外にでていく。昔からある日本の知恵を生かしている
2階のルーフバルコニーには緑化をほどこしてある。緑の部分と、そうでない部分。「ひんやり」・「暑くてさわれない」くらいの差があった
2階のルーフバルコニーには緑化をほどこしてある。緑の部分と、そうでない部分。「ひんやり」・「暑くてさわれない」くらいの差があった
電気自動車は家庭用蓄電池としても利用する。なお、電気自動車がフル充電(16kwh)で走れる距離は約160km。この距離をガソリン車(1リットル=10km)で走った場合、1リットル180円として2
電気自動車は家庭用蓄電池としても利用する。なお、電気自動車がフル充電(16kwh)で走れる距離は約160km。この距離をガソリン車(1リットル=10km)で走った場合、1リットル180円として2


閉じる、開ける、ためる…
従来からある住まいの工夫を生かして


 「クールアースモデル住宅」は、高断熱などによる「閉じる技術」、太陽光、風、緑などの自然を最大限に活用するための「開ける技術」、電気や熱、雨水を「ためる技術」に加え、最新の省エネルギー技術なども積極的に導入。エネルギーコスト(光熱費+自動車の燃料費)を激減させ、生活全般のCO2排出を限りなくゼロにする「CO2ゼロライフ」を実現させようというものだ。
 
 具体的に説明していこう。まず、太陽光の利用について。
 南に傾く屋根には、太陽光発電6.48KWシステムを設置。これで年間6,383kwhの発電ができる(詳しくは後述)。さらに1階南面、坪庭のある東西面、2階吹き抜け南面の大サッシから、太陽光を有効的に取り込むことで、照明電力消費の大幅削減をめざす。
 取材したのは、陽が西に傾き始めた午後だったが、2階はもちろん、1階も室内照明がほとんど必要ないほど明るかった。

 熱の活用では、玄関正面の壁の壁内に、硫酸ナトリウムを蓄熱体として設置。冬季は日射エネルギーを蓄熱、夜間ゆっくりとエネルギー放出する。また、ベタ基礎外断熱の蓄熱土間が、冬季は日射熱を蓄熱、夏期は部屋の熱を地下に放出する。実際にこの土間に足で触れると、真夏日であったにもかかわらず、ひんやりして実に気持ちの良い涼しさであった。
 
 窓は、2階南面の大サッシを除き、遮熱効果の高いLOW-Eガラスを採用。断熱性能を向上させ、冷暖房負荷の低減を図っている。
 なお、南面大サッシがただのペアガラスなのは、「冬にここから熱を取り入れるため」(トステム住宅研究所 キッズデザイン研究所主席技術研究員・野口浩行氏)とのこと。

 ルーフバルコニー部分には緑化を施し断熱性能を向上させ、表面温度上昇緩和を実現。コンクリート部分は暑くて触れないほどであったが、緑化した部分は、逆に触るとひんやりとする。温度差は20度以上になるのではないか、というほどで、その効果に驚いた次第であった。

 また雨水も積極的に活用する。東西2箇所に雨水タンクを設置、さらに2つある坪庭の片方に、雨水プールを設置した。貯めた雨水は、庭の水まきなどに使用できる。
 
 日本家屋では昔から取り入れられていた「風の通り」も有効に利用している。南西からの風を室内に取り込み、温度差換気により、天窓・高窓から廃熱。そのため、窓の位置などを緻密に計算した。取り込む風が涼しいものとなるよう、庭、バルコニー、坪庭などに緑化を積極的にほどこしているのである。

車からのCO2排出ゼロ。 そして、太陽光発電電力の蓄電へ

 さて、先に説明した太陽光発電。
 これまでは、日中は太陽光発電で発電した電気を利用できても、余った電気は電力会社に売電、そして足りない分や夜間は、電力会社からの電気供給に頼らざるを得なかった。
 しかし今回の「クールアースモデル住宅」では、太陽光発電で発電した電力を蓄電、夜間や太陽光の弱い時期は、その蓄電した電力を活用するということにトライしている。
 その蓄電する場所はというと…、なんと電気自動車に搭載される蓄電池なのだ。

 今回東京工業大学、三菱商事と共同で、電気自動車の開発、およびインフラ整備について共同開発を進めており、電気自動車の燃料として太陽光を活用、そして家庭用電力の蓄電として電気自動車を活用するという研究が進められている。その実験の舞台としても、「クールアースモデル住宅」は活用される。

 家庭用蓄電池は、これまでもなかった訳ではない。ただ、コストの面から普及は難しかった。しかし、電気自動車が量産化されれば、「大容量の蓄電池が量産・普及する」(同氏)。家庭での蓄電が、いよいよ実現化するのである。

 何しろ太陽光発電は、CO2をまったく排出しない。そして、その電力を使用する自動車のCO2排出もゼロとなる。
 冒頭の「CO2の排出半減」の目標達成には、このくらいドラスティックなことを実現化しなければ達成は難しいのではないか。故に、この住まいが商品化されれば、一気に普及が進むことが考えられる。
 ランニングコストである「電気料」が限りなく下げられるのであれば、ある程度の初期投資も納得する購入者は多いのではないか。
 「今回盛り込んだすべての工夫を搭載しての商品化はすぐには難しいが、今年一年効果測定をして、有効的なものを一部、あるいはある程度搭載させた商品は、来年あたりに発売予定」(同氏)とのこと。

 ガソリンの値上げが止まらず、来年には電気料金の値上げもささやかれている。環境に、懐に優しい住宅の商品化、待ち望む人は多いに違いない。きっと国も待ち望んでいるはず???(NO)

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