不動産ニュース / その他

2012/1/5

業界団体トップ、2012年の年頭所感

 各業界団体が発表した年頭所感は、以下のとおり。

(社)不動産協会理事長 木村惠司氏
(社)全国宅地建物取引業協会連合会会長 伊藤 博氏
(社)全日本不動産協会理事長 川口 貢氏
(社)日本ビルヂング協会連合会会長 髙木丈太郎氏
一般社団法人不動産証券化協会会長 岩沙弘道氏

(順不同)

■(社)不動産協会理事長 木村惠司氏

昨年の我が国は、3月に東日本大震災に見舞われ、社会・経済の状況が一変した。その後、経済は持ち直しの動きが見られたが、後半に入り、円高や株安の進行、欧州の債務危機に端を発した海外景気の減速など、先行きに不透明感が増してきた。
そうした中、政府の「平成24年度税制改正大綱」においては、財政状況が非常に厳しい中、国際競争力の強化を図るための国内投資促進税制や良質な住宅ストックの形成に資する税制など、当協会の要望が概ね認められたことを高く評価したい。
引き続き、消費税率の引き上げを含む社会保障と税の一体改革に関する議論が行われている。住宅は豊かな国民生活の基盤であり、内需の柱である住宅投資に水を差さないためにも、消費税率引き上げ時に、住宅にはこれ以上の税負担を課さないよう、特段の配慮が必要である。

東日本大震災からの復興を支えるためにも、我が国経済の成長が必要であり、住宅・都市分野の成長戦略を強力に推進することが不可欠である。「特定都市再生緊急整備地域」と「国際戦略総合特区」を活用し、日本の大都市がアジアの諸都市との競争に打ち勝てるよう、魅力的なまちづくりに全力を挙げて取り組んでいきたい。
また、今回の震災を貴重な教訓とし、安心・安全な就業・居住環境を整備することは都市の国際競争力のためにも必要である。防災に優れた都市づくりについての我々の考え方を示すとともに、不動産業の果たすべき役割を改めて整理し、実践していかなくてはならない。
今年は被災地の復興が本格的に進展し、我が国経済が回復軌道に乗ることを期待するとともに、日本経済の成長と国民生活の向上に向け、業界を挙げて努力をしていきたい。


■(社)全国宅地建物取引業協会連合会会長 伊藤 博氏

謹んで新年のご挨拶を申し上げます。昨年は、みなさま方のご支援とご協力により、円滑な組織運営が出来ましたことを感謝申し上げます。

全宅連と全宅保証は、総会決議に基づき、昨年8月に公益社団法人への移行認定を申請し、国民の住生活環境の改善や、一層の消費者保護に資する事業等の公益事業を積極的に展開しております。その一環で、東日本大震災における被災者の住宅供給に関する支援として、都道府県宅建協会と連携を図りながら、国に対して提言活動を展開するとともに、応急借上げ住宅に関する情報提供やハトマークサイト等を活用して被災者に対する積極的な物件情報の提供による賃貸住宅の斡旋を推進してきました。さらに都道府県宅建協会を通じて、義捐金の募集を行い、全宅連、都道府県宅建協会あわせて約3億円の義捐金が寄せられ、まさに全宅連と皆様方との「絆」を実感致しました。この場を借りて改めて御礼申し上げます。

また、国民の住生活環境の整備向上を図るための活動として、都道府県宅建協会の協力のもと国に対する土地住宅税制・政策提言活動を行った結果、政府の平成24年度税制改正大綱においては、住宅取得資金等の贈与税の非課税制度の拡充・延長をはじめ、新築住宅に係る固定資産税の減額、土地・住宅に係る不動産取得税の軽減や新築住宅用土地に係る不動産取得税の特例、宅地評価土地に係る不動産取得税の課税標準の特例等に関する延長という成果が得られ、国民の住宅取得の負担軽減が継続されることとなりました。あわせて特定事業用資産の買換特例の延長においても、一定の成果を得ることができました。

平成25年秋に迫った公益法人改革への対応については、全宅連・全宅保証の公益社団法人移行とともに、都道府県宅建協会へ情報提供を行い、万全を期す所存であります。さらに、安全・安心な不動産取引の推進を通じて消費者保護を図るとともに、国民の住生活環境改善を図るため、各種調査研究、政策提言活動を通じて不動産取引の活性化ひいては我が国経済の牽引となるべく事業を実施していきます。

全宅保証においては、消費者保護を図るための苦情相談解決業務や弁済業務、手付金等の保管業務や紛争の未然防止のための研修業務等の実施を通じて、宅地建物取引の適正化に尽力していきます。全宅連と全宅保証は、これからも都道府県宅建協会や会員各位と連携し、消費者利益の擁護と増進に努め、国民の住生活環境の改善と向上を目的として邁進していく所存であります。


■(社)全日本不動産協会理事長 川口 貢氏

3月11日、マグニチュード9.0という観測史上最大規模を記録した東日本大震災は、我々の予想をはるかに上回って、極めて広範囲に被害が及ぶものでありました。さらに、台風12号、15号と立て続けに日本列島を縦断し、広い範囲で暴風や記録的な大雨をもたらすなど、自然の驚異をまざまざと見せつけられました。あらためて、被災された皆様に心からお見舞い申しあげます。

不動産市場においても、建物の耐震性はもちろんのこと、省エネや地盤にも消費者の大きな関心が向けられました。住まいに対する消費者の価値観が防災に転換した今、我々宅建業者も、安心安全な住まいを提供する責務があることをあらためて認識するとともに、各地方本部におかれましても、災害時に備えて行政庁との連携を進めていただければと思います。

平成24年度税制改正では、当初の議論では増税色が強くなるのではないかと危惧していましたが、先般、取りまとめられた税制改正大綱では、住宅に係る固定資産税の軽減措置はほぼ現行どおり延長することになりました。また、住宅取得に係る贈与税の特例や事業用資産の買換特例も延長することが認められ、大きな成果を得られたと思います。ご尽力をいただいた関係各位に感謝申し上げるとともに、住宅に係る消費税についても、予断を許さず動向を注視していきたいと思います。

さて、社団法人不動産保証協会は平成23年12月1日をもちまして、公益社団法人へ移行いたしました。これも、全国の地方本部役職員並びに会員の皆様のご理解とご協力のおかげであり、心より感謝申し上げます。平成24年度は、公益社団法人として、次のとおり消費者目線の公益目的事業の充実を図って参ります。
1.宅建業法に定められた保証業務の堅実な事業の遂行
2.一般保証業務の平成24年度中の事業再開
3.公益目的事業の実施状況の確認

社団法人全日本不動産協会につきましては、平成23年度中を目途に公益社団法人への移行認定の申請を行うこととしており、創立60周年を迎えた業界最古の歴史を踏まえ、これまで以上に消費者及び会員の利益に資するような事業を進めて行きたいと考えております。
1.公益社団法人への移行
2.公益目的事業の充実
3.一層の会員増強についての方策

平成24年度も、協会の組織基盤の強化を図っていくとともに、新たな協会の歴史の一歩に相応しい公益性に重点を置いた事業展開を行ってまいります。引き続き、皆様のご指導とご鞭撻を願い申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。


■(社)日本ビルヂング協会連合会会長 髙木丈太郎氏

新年おめでとうございます。
2011年は日本にとって忘れられない1年となりました。
3月11日に発生した東日本大震災は、われわれ日本人に自然の猛威と被害の悲惨さを知らしめ、国民生活や経済活動の大前提として「安全安心な社会」が不可欠であることを再認識させました。こうした未曾有の被害を受けた被災地が、全国からの支援のもと、復興に向け着実に歩み始めている姿を目にするたび、逆境に負けない日本人の逞しさを改めて感じているところです。

2012年を迎え、わが国の経済は震災後の混乱から立ち直りつつあるものの、欧州債務危機や急速な円高の進行などに伴う景気下振れリスクが解消されず、先行き不透明な状況にあることは間違いありません。そうした中、オフィスビル市場については、需給関係が持ち直しつつあり、各種調査においても空室率の改善傾向が表れています。予断を許しませんが、今後オフィス市況は次第に回復基調を示していくものと期待しています。

連合会では、震災を契機に関心が高まっている耐震性のより一層の向上に加え、ハード・ソフト両面からの防災対策に取り組んでまいります。また、ビル経営における最重要課題に位置付けている地球温暖化対策についても、オフィスビルにおけるエネルギーの効率的な運用管理に向けた取組みをより一層推進していきます。さらに、原子力発電所の再稼動問題に伴う電力需給の逼迫が全国的に懸念されるところであり、政府の動きを注視しつつ、連合会として適切に節電対策などの対応を図ってまいります。

わが国を取り巻く環境は、グローバル化が進展する一方で、地域間の経済連携の動きが活発化するなど複雑化・多様化しており、これまで以上に都市の国際競争力強化が求められてくるものと思われます。

連合会としては、業界の総力を結集し、健全で持続的なビル経営と活力ある都市づくりに向けて、引き続き積極的に取り組んでまいる所存です。


■一般社団法人不動産証券化協会会長 岩沙弘道氏

本年は、わが国の強みを活かした新産業による産業復興や雇用創出を実現し、震災復興を新たな日本創生につなげる年にしたい。復興と成長戦略の一体的な推進が、わが国の持続的な成長を可能にする。国家の経済成長の牽引役である都市の成長はますます重要性をましており、都市再生において大きな役割を果たしている不動産投資市場の更なる活性化が求められている。

昨年Jリートは10周年を迎えた。当協会では個人投資家や機関投資家へのJリートの認知度向上に特に注力し、「Jリート10周年記念シンポジウム」や、個人投資家向けの「Jリートセミナー」等のイベントを開催し、延べ3,000名を超える皆様にお集まりいただいた。国民の資産形成に果たしてきた役割や、都市再生・地域活性化といった役割の重要性を再認識するとともに、期待の大きさを実感した。

Jリートが、このような期待に応えていくためには、市場規模をできるだけ早い時期に時価総額10兆円まで拡大することが必要と考える。Jリートの新たな10年のスタートにあたる本年は、以下の市場拡大施策の実施に注力する。

まず投資対象不動産の拡大については、PPPやPFIの活用により公的施設を投資対象資産に加えることを検討する。

投資家層の拡大については、賃料に基づく安定的な利回りという商品特性をより一層ご理解いただき、公的年金を含む年金に今まで以上に投資いただけるよう働きかけていきたい。

市場基盤となる制度の整備については、金融庁が平成25年度に投信法制の見直しを予定している。当協会としては、資金調達手法の多様化など国際的なイコールフッティング等の実現に向けて全力で取り組んでいく。

9月には、世界のリート関連団体の代表者や投資家を東京に招いて「REESA東京大会」を開催する。日本をはじめとしたアジアの不動産投資市場の魅力をご理解いただき、更なる投資を呼び込みたい。

当協会は、不動産投資市場が早期に国際的な競争力を取り戻し、大きな発展を遂げることで、新たな日本創生をリードする存在となるよう、引き続き邁進してまいりたい。

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