不動産ニュース / 団体・グループ

2012/3/23

「平成24年 地価公示」に業界団体・企業のトップがコメント

 国土交通省が22日に発表した「平成24年 地価公示」結果について、業界団体・企業のトップから以下のようなコメントが発表された。(以下抜粋、順不同)

(社)全国宅地建物取引業協会連合会 会長 伊藤 博氏
(社)全日本不動産協会 理事長 川口 貢氏
(社)不動産協会 理事長 木村惠司氏
(社)不動産流通経営協会 理事長 袖山靖雄氏
三井不動産(株) 代表取締役社長 菰田正信氏
住友不動産(株) 代表取締役社長 小野寺研一氏
野村不動産ホールディングス(株) 取締役社長 中井 加明三氏

◆(社)全国宅地建物取引業協会連合会 会長 伊藤 博氏

 平成23年の1年間の地価は、全国平均で4年連続の下落となったものの、低金利や贈与税に係る住宅減税等の施策による住宅需要や、商業地のマンション用地としての利用、賃料の調整が進んだ主要都市での新築・大規模オフィスの需要の高まり等により、下落率は縮小の傾向が見える結果となった。しかしながら、地方圏の下落率については、依然として高い状況である。

 内閣府の経済社会総合研究所によれば、バブル経済にあった平成2年末の土地資産額は、2477.4兆円であったのに対して、平成22年末では半分の1204.9兆円まで減少しており、資産デフレ対策は喫緊の課題である。

 このような状況下、本会では、昨年、国民の住生活環境向上と資産デフレの克服による日本経済の活性化のために、都道府県協会と連携して、不動産関連税制において国等に対する提言活動を展開した結果、政府の平成24年度の税制改正大綱では、新築住宅に係る固定資産税の減額措置の延長の堅持や住宅取得等資金に係る贈与税非課税制度の延長・拡充をはじめとする、各種税制特例措置の延長と拡充等が盛り込まれることとなった。

 さらに、現在、国会に提出されている消費税税率の引き上げ法案に対しても、国民の住宅取得時の負担をこれ以上増やさないように、他団体とも連携を図りつつ、関係方面に対する提言活動を展開しているところである。

 また、中古住宅流通市場の活性化を図るために、消費者が中古住宅を安心して取引できる環境を整備するための国土交通省の「不動産流通市場活性化フォーラム」の場において、中古住宅の取引に携わる宅建業者としての立場から、一般従業者の資質向上を図るための教育制度の構築と消費者に必要な情報を提供するための市場の構築の必要性を提言している。

 本会は、内閣府公益認定等委員会より、公益社団法人認定の総理大臣宛の答申を本年3月7日付けで、関連団体の全宅保証は3月16日付で得ることができた。これにより4月1日から新たに公益社団法人として、スタートすることとなっており、今後とも、一般消費者の利益の保護を図るために、安全、安心な不動産取引の実現と不動産取引の活性化に資する事業を行なっていく所存である。

◆(社)全日本不動産協会 理事長 川口 貢氏

 平成24年地価公示によれば、全国的に4年連続の下落となったものの、その下落率は縮小し、住宅地、商業地ともに一部で地価の上昇地点も見られるなど、住宅ローン減税などの施策の効果が表れているのだろう。
 東日本大震災の不動産市場への影響については、一次的には停滞したものの、被災地を除いて比較的早期に回復傾向が示された。しかしながら、大震災から1年が過ぎても、経済、雇用等の環境は厳しく、未だ復興の先行きは不透明である。政府におかれては有効な施策を速やかに実行し、日本の再生に全力で取り組んでいただきたい。

◆(社)不動産協会 理事長 木村惠司氏

 平成24年の地価公示は、下落率は縮小傾向を示したが、欧州債務危機等の先行き不透明感による地価への影響もみられる。震災からの復興を支える我が国経済を活性化させる上で、資産デフレに陥ることなく、景気が下振れしないよう支えていく必要があり、内需の柱である住宅投資は大変重要な役割を担っている。
 
 今回の地価公示において、住宅地は、住宅ローン減税等の施策による住宅需要の下支えもあって下落率は縮小したが、復興を支える我が国経済の成長に影響を及ぼさないためにも、こうした施策の充実を期待する。
 一方、消費税率の引き上げが大きな政策課題となっているが、これは先送りできない課題であると考えている。住宅は豊かな国民生活の基盤であり、価格が極めて高額であることから、消費税率の引き上げにあたっては、住宅取得時の負担をこれ以上増やさない措置がとられるようお願いしたい。

◆(社)不動産流通経営協会 理事長 袖山靖雄氏

 今回の地価公示をみると、リーマンショック以降4年連続の下落となったが、下落率は前回同様、縮小傾向を示している。
 昨年は3月に東日本大震災が発生し、その影響により不動産市場は一時停滞したが、被災地を除き、地価は比較的早期に回復してきたといえる。
 実際、半年毎の地価動向を都道府県地価調査(7月1日の地価を調査)との共通の調査地点でみると、東日本大震災のあった23年前半(1~6月)に下落率が拡大し、23年後半(7~12月)に下落率が縮小したことからも、そのことが伺える。

 圏域別にみると、東京圏は年前半は他の圏域に比べ下落率が拡大したが、年後半は他の圏域を上回る回復を示した。大阪圏は年間を通じて下落率が縮小、名古屋圏は年前半に下落率が拡大したが、年後半は横ばいとなった。また、地方圏においても、前年より下落率が縮小し、価格が上昇した地点が増加した。
 用途別にみると、住宅地については、住宅ローン減税、「フラット35S」に代表される低金利の住宅ローン、住宅取得等資金贈与における非課税措置等の施策による住宅需要の下支えもあり下落率は縮小したものと思われる。
 とりわけ住環境良好な地域、いわゆる人気エリアや交通利便性の高い地域においては価格が上昇する地点も増加してきている。
 商業地については、前年より下落率が縮小したが、オフィスにおける高い空室率・賃料下落の影響から、地価は未だ弱含みといえる。

 円高、欧州債務危機等わが国経済への影響が懸念された事案については、最悪の事態は回避されつつあり、また東日本大震災の復興需要の本格化による内需拡大等経済の順調な回復が期待される中、「新成長戦略」の大きな柱のひとつである既存住宅流通市場の拡大に向け、業界としてもその活性化に一層努めていく所存であるが、国内外の経済の下振れリスクが継続している状況に鑑み、政府における予算・税制・金融等による継続的な政策支援を要望したい。

◆三井不動産(株) 代表取締役社長 菰田正信氏

 平成24年の地価公示では、下落率の縮小および一部地域での回復が見られるなど、地価は改善傾向にある。政府による諸施策の継続や低金利等により住宅取得検討者にとって良好な環境が維持されており、分譲マンションの販売状況は一次取得ファミリー層向け物件を中心に引き続き堅調に推移している。

 また底堅い企業実績を反映するとともに、防災面、環境面に配慮されたビル等へのニーズの高まりもあり、オフィスマーケットも回復基調となりつつある。

 不動産投資市場においては、欧州金融不安の後退と米国景気の回復期待の高まりを受け投資家の投資意欲が高まってきており、今後投資用不動産市況全般に好影響が及んでくるものとみている。

◆住友不動産(株) 代表取締役社長 小野寺研一氏

 今回の地価公示では、リーマンショック以降4年連続の下落となったものの、年間の下落率は縮小した。東日本大震災による影響が薄らいだ年後半(7~12月)の下落幅が縮小に転じたためであり、震災前に広がっていた地価の下げ止まり感が再び顕著になってきた。

 東京のオフィスビル市場では、耐震性をはじめ防災機能が優れたビルへの移転需要などにより市況は底入れしつつあり、年央からの回復が期待できる。また、低金利など良好な住宅取得環境に加え、防災意識の高まりから、分譲マンションの販売も底堅く推移している。マンション用地の価格は、既に上昇しているというのが実感だ。市場は概ね震災前の水準に戻りつつあり、この回復感が今後の地価公示にも反映されてくるだろう。

 年明け以降、株価は上昇に転じたが、景気の先行き不透明感は払拭しきれていない。景気回復とデフレ脱却のため地価の安定は不可欠であり、政府には住宅需要刺激策の継続、拡充を期待したい。

◆野村不動産ホールディングス(株) 取締役社長 中井 加明三氏

 分譲住宅市場においては、東日本大震災発生後、一時的に供給戸数が減少したものの、昨夏以後は順調に回復してきた。住宅ローンの金利が引き続き低水準であることに加え、ローン減税等の施策による下支えもあり、実需層の動きは主要都市圏中心に活発である。再開発等により整備が進み、生活利便が向上した各沿線の主要ターミナル駅周辺の住宅地における需要が牽引役となり、契約率は順調に推移している。

 J-REITに代表される不動産投資市場においては、欧州債務危機問題を始めとする不安定なマクロ経済の状況などから、昨年後半は低迷したものの、年明け、特に日本銀行による追加金融緩和策発表以降、株式相場の回復とともに投資口価格の上昇も見られる。
 また、不動産売買においては、J-REITによる公募増資に伴い、オフィスビル・賃貸マンションを始めとする物件取引が増加する等、マーケット環境に回復の兆しが窺える。

 今回の地価公示における下落率の縮小も、このような不動産市場の動きを反映したものであり、今後の地価動向は従来にも増してグローバルな金融マーケットや金利動向による影響が強まってくるだろう。今後も地価公示は不動産マーケットを反映した中長期的トレンドの重要な指標として注視していく。

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