不動産ニュース

2014/9/18

「平成26年 都道府県地価調査」、業界各トップがコメント

 国土交通省が18日に発表した「平成26年 都道府県地価調査」結果について、業界団体・企業のトップから以下のようなコメントが発表された。(以下抜粋、順不同)

(一社)不動産協会 理事長 木村惠司氏
(一社)不動産流通経営協会 理事長 竹井英久氏
(公社)全国宅地建物取引業協会連合会 会長 伊藤 博氏
(公社)全日本不動産協会 理事長 林 直清氏
三井不動産(株) 代表取締役社長 菰田正信氏
三菱地所(株) 代表取締役 杉山博孝氏
住友不動産(株) 代表取締役社長 仁島浩順氏
東急不動産(株) 代表取締役社長 三枝利行氏
東京建物株式会社 代表取締役 社長執行役員 佐久間 一氏
野村不動産ホールディングス株式会社 取締役社長 中井 加明三氏

◆(一社)不動産協会 理事長 木村惠司氏

 今回発表された都道府県地価調査では、全国平均では住宅地・商業地ともに下落したが、下落幅は引き続き縮小した。三大都市圏では、住宅地は上昇に転換し、商業地は上昇率が拡大したが、地方圏でも下落幅の縮小が継続するなど、我が国経が緩やかに回復する中で、地価の回復の兆しが、広がりを見せつつある。

 不動産市場については、足元の住宅市場では、注文住宅を中心とした消費税率引上げに伴う駆け込み需要の影響等もあり、やや陰りが見らるが、オフィス市場等も含めれば全体的には実需に基づく堅調な状況が続いているとみており、このことが地価に反映された結果であると受け止めている。
 
 現在の我が国経済は、今後も持続的な成長を実現できるかどうかの岐路となる重要な局面を迎えている。経済を確実に本格的な成長に導くためには、内需主導による成長戦略の実現が不可欠であり、好循環を引き起こす国内投資の促進とともに、都市再生の推進や良好な住宅ストックの形成が重要である。

 当協会としても、成長戦略の実現に向け、引き続き魅力的なまちづくりや良質な住宅の供給等を通じ、貢献して参りたい。

◆(一社)不動産流通経営協会 理事長 竹井英久氏

 今回の地価調査をみると、地価は、全国平均では住宅地、商業地ともに依然として下落しているものの下落率は縮小傾向が継続している。三大都市圏平均では、住宅地が上昇に転換し、商業地は昨年に引き続き上昇し上昇率が拡大、地方圏平均では下落しているものの下落率の縮小が継続している。景況感の改善、ローン減税や低金利等の政策による需要の下支えもあり、地価は全体的に回復基調が続いている。

 2012年の安倍政権誕生以降、アベノミクスによる政策効果により景気回復の動きが継続し、デフレ脱却は目前まで来ている。しかしながら、足元では消費増税後の消費や生産の回復に鈍さが見られ楽観は出来ない状況である。中古住宅流通市場においても、顧客の動きに様子見の姿勢がみられ、取引は鈍化傾向にある。

 政府は、昨年6月に策定された『日本再興戦略』の中短期工程表において、2020年までに中古住宅流通・リフォーム市場の規模を倍増することを成果目標に掲げ、国土交通省においてもその政策の実現に向けて、市場活性化の具体的方策について検討がなされているところである。

 不動産流通市場が活性化し、地価の回復基調が持続することは、消費や投資の拡大につながり、経済の好循環を促し、デフレ脱却を確実なものにすると考えている。

 当協会では、消費者にとって今まで以上に利用し易い市場の形成に向けた取引の仕組みづくりや、税制改正・金融制度等に関する政策への提言等、市場のさらなる活性化のため取り組んでいるところである。不動産流通を促進することでデフレ脱却と持続的経済成長に寄与していくことが業界としての重要な役割の一つと考えており、政府におかれましても税制・金融及び制度面での一層のご支援をお願い致したい。

◆(公社)全国宅地建物取引業協会連合会 会長 伊藤 博氏

 平成26年の都道府県地価調査の結果は、全国平均では、住宅地・商業地ともに下落しているが、下落率は縮小傾向継続を保っている。一方、三大都市圏平均では、住宅地が下落傾向から上昇傾向に転換し、商業地においては、主要都市の中心部などで、空室率改善・投資用不動産等の需要が回復しており、昨年に続き上昇率拡大となっている。また、地方圏平均では、住宅地・商業地ともに下落率が縮小するなか、東日本大震災の一部の被災地では、上昇率拡大といった傾向が伺える。今後は、消費税増税の影響により、再び景気が冷え込むことのないよう、実行性のある政策に期待したい。

 国土交通省では、中古住宅流通・リフォーム市場の環境整備を進めており、27年度の予算、各種施策でも引き続き取り組まれることを期待する。

 本会では、平成27年度の税制改正に対しては、不動産取得に関する様々な税金等の特例措置の期限延長などに向けての要望を行うとともに、中古住宅流通における事業者への負担軽減についても提言し、国民の安定した住生活確保の支援となるよう努めていきたい。

◆全日本不動産協会 理事長 林 直清氏

 全国平均では、住宅地、商業地ともに依然として下落をしているものの、住宅ローン減税、低金利等の施策により、下落率は縮小傾向を継続している。
 三大都市圏平均では、住宅地、商業地ともに上昇しているとはいえ、地方圏は8割弱の下落となっているところから、引き続き安倍政権には、効率的な政策実施と税制措置を期待いたします。

◆三井不動産(株) 代表取締役社長 菰田正信氏

 今回の地価調査結果によると、景況感の改善や住宅需要の拡大等により、三大都市圏において住宅地が上昇へ転換し、商業地の上昇率が拡大していることに加え、地方圏において上昇地点の増加が継続するなど、地価の上昇傾向が全国へ広がっている。

 首都圏のマンション市況は堅調で、今後の景気見通しや価格の先高観等から顧客の購入マインドは高い。建築費高騰等の影響で発売戸数は減っているものの、初月契約率が好調の目安とされる70%以上でほぼ推移しているほか、物件価格の上昇傾向が続いている。景気回復の継続に加え、住宅ローン控除等の政策的支援や低金利により、しばらくはこの傾向が続くとみている。

 オフィスビルについては、好調な業績を背景として企業の事務所拡張と移転の動きが活発さを増しており、東京都心のオフィス空室率低下と平均募集賃料の上昇が続いている。また地方都市においても、景気回復への期待と拠点拡充の動きから空室率の低下が進み、全国的にオフィス需要が高まっている。BCP対応への意識の高まりにより防災・省エネ対策に優れたビルへのオフィス移転ニーズは引き続き高く、今後も企業業績の向上や人員増加によりオフィス需要のさらなる拡大が期待される。

 不動産投資市場においては、実体経済の成長やオフィス賃料上昇等の不動産市況の先行きへの期待感などから、海外勢を含む投資家の意欲は引き続き高く活発な取引が続いており、市況は好調に推移するものとみている。

 当社グループにおいては、民間企業が成長の牽引役を担うとの認識のもと、「街づくり」を通して日本の国際競争力の強化に一層貢献していきたい。

◆三菱地所(株) 代表取締役社長 杉山博孝氏

 今回発表された都道府県地価調査では、三大都市圏において、住宅地は上昇に転換し、当社が中心的に事業を展開する丸の内をはじめとする商業地につき、上昇率が拡大したことは、経済が緩やかに回復する中、地価の回復の兆しと捉えている。

 住宅市場においては、景気の回復、デフレ脱却への期待感、金利や物件価格の先高感による旺盛な住宅需要、オフィス市場も企業業績の改善等に起因する立地改善、統合移転、増床ニーズによる空室率の改善、賃料の反転等、不動産市場の実需に基づく堅調な状況が地価に反映された結果であると受け止める。

 今後も経済の持続的で本格的な成長の実現には、内需主導による成長戦略の実現が不可欠であり、好循環を引き起こす国内投資の促進とともに、再開発を含めた都市再生の推進や旺盛な住宅需要に対する良好な住宅供給、住宅ストック活用について、当社事業を通じて貢献したい。

◆住友不動産(株) 代表取締役社長 仁島浩順氏

 今回の地価調査では、三大都市圏平均で住宅地が6年ぶりに上昇に転換、商業地も上昇率が拡大した。特に東京圏では、住宅地、商業地ともに上昇地点が過半数を占めるなど、地価の回復傾向がより鮮明となっている。
 
 東京のオフィスビル市場では、企業業績の回復を背景に増床ニーズが顕在化し、空室率の改善や成約賃料の上昇傾向が続いている。低金利下で分譲マンションの需要もまだ底堅く、都心では販売価格が上昇基調となっている。このように足元でも地価の上昇は続いているが、その一方で先行きは不透明感が増しており、楽観できない情勢だ。建築費の高騰問題は依然として懸案であり、消費税増税による駆け込み需要の反動も尾を引いている。政府には、内需の柱である住宅分野への投資促進のため、需要刺激策の継続、拡充を強く望みたい。

◆東急不動産(株) 代表取締役社長 三枝利行氏

 緩やかな回復基調が続く中、消費増税の駆け込み需要の反動に伴う個人消費の低迷や、海外景気の下振れ、建築コストの上昇などの変動リスクが内在しているものの、駆け込み需要の反動影響が薄まってきたと認識をしており、消費者物価指数や設備投資額など、経済指標の動きからも日本経済の回復はより確かなものとなってきた。
 なお、都道府県地価調査の結果については、以下のとおりと理解しており、ご参考として頂きたい。

 住宅地については、低金利や住宅ローン減税等の政策的支援に加え、景気回復を背景に、全国的な下落傾向は継続するものの三大都市圏では地価上昇に転換した。
 近年、利便性の高い都心物件の引き合いが再び強まっており、東京オリンピック・パラリンピック開催決定に伴うインフラ整備への期待などもあり、都心立地の希少性が一段と強まっている。
 関連産業が多い住宅産業は、内需の柱として経済成長に寄与するものであり、私どもは、多様なお客様の価値観、ライフステージやライフスタイルに応じた住宅を供給していくことが使命であると認識している。当社においてもお客様に必要とされる住宅性能の充実に加え、防災や省エネ・創エネといった環境配慮の質を向上させていくとともに、高齢化社会など社会の変化に対応できるよう、住まいづくりに取り組んでまいりたいと考えている。

 商業地においても、回復傾向が堅調に現れており、主要都市の中心部では増床事例が多くなっているほか、BCPの観点から耐震性の高い新築オフィスや、駅前などの利便性の高い地域への移転が見られ、空室率の改善が進むとともに賃料の底入れ感が見られるようになってきている。
 また、外国人観光客の復調に合わせ、銀座や表参道といった競争力が強く商業集積の高い地域では、店舗賃料に底入れ感が見られ、再開発計画も予定されていることなどから、更なる繁華性の向上も見込まれる。
 当社においては、渋谷駅周辺の再開発事業や、銀座数寄屋橋交差点に面する「(仮称)銀座5丁目プロジェクト」、神宮前交差点周辺の商業施設開発、内幸町の旧新生銀行ビルの建て替えなど、優良立地において都心再開発の積極展開を図ってまいりたい。
 2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催決定以降、企業収益の改善や、設備投資への資金流入、資金調達環境の好転などにより、都心部のオフィス需要や店舗の出店意欲については、継続して回復傾向が続いているとの認識を持っている。

◆東京建物(株) 代表取締役 社長執行役員 佐久間 一氏

 今回発表された地価調査では、三大首都圏において、住宅地については上昇に転換しており、特に利便性や住環境に優れた住宅地では上昇基調が顕著であった。また、商業地については、昨年に続き上昇しており、資金調達環境の改善や景況感の改善等を背景に下落率縮小や上昇率の拡大が見られた。

 不動産業界においては、賃貸オフィス市場については、BCP等の観点から耐震性に優れる新築・大規模物件への動きが見られ、都心部での空室率の低下傾向が継続しているほか、平均賃料においても上昇の兆しがみられるなど、本格的な回復に向けての動きが見られる。分譲住宅市場については、低金利や景況感の改善等により消費増税に伴う影響も軽微なものに留まったが、ここにきてやや調整過程に入った感がする。堅調な方向感は変わらないものの、一方で、建築費の上昇や用地取得競争の激化などの懸念材料もあげられる。不動産投資市場については、引き続き良好な資金調達環境を背景とした積極的な物件取引が続くなど、事業環境は堅調に推移した。

 今後は、規制緩和、税制支援等を引き続き要請し、成長戦略の推進による持続性を伴った景気回復へと着実に転換していくことを期待する。

◆野村不動産ホールディングス(株) 取締役社長 中井 加明三氏 

 分譲住宅市場においては住宅価格の先高観、住宅ローン金利が引き続き低水準であることを背景として、契約率は首都圏を始め、主要地方都市でも堅調に推移している。
 特に東京都心部および都心部への交通利便性に優れるエリア、再開発等により生活利便性の向上が見込めるエリアへの評価が高く、マーケットを牽引している。
 但し、マンション用地の取得競争の過熱化による土地価格の高騰や、建築費の上昇が依然として継続しており、今後も良質な住宅を適切な価格で安定供給できるかが大きな課題である。

 J-REITに代表される不動産投資市場においては、事業の再構築や財務体質の改善目的で、事務所、店舗、工場などの不動産売却を検討する企業が見受けられる中、不動産取得も活発であり、好調なマーケット環境がうかがえる。

 今回の都道府県地価調査は、こうした不動産市場の動きを反映したものであり、今後の地価動向は、不動産市場の中長期的トレンドの重要な指標として参考にしていく。

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