不動産ニュース / 開発・分譲

2014/10/30

施工コスト3割ダウン目指す。新設計手法「BIM」、16年度までに全面導入/長谷工コーポレーション

 (株)長谷工コーポレーションは、「BIM(Building Information Modeling)」を活用した新たな設計手法を、自社が設計・施工するマンションに順次導入する。BIMのデータを、設計・施工だけでなく販売・管理・修繕などあらゆる場面で活用することで、施工コストダウンと顧客(事業主、ユーザー)満足度向上を図る。

 BIMとは、コンピューターに建築にまつわる部品データ(約5,000点)を登録。それらをコンピューター上で組み上げ3次元の建物モデルを作成し、部品情報・仕上げ情報、管理情報といった属性データを紐づけたデータベース。長谷工は、4年前から自社BIMの開発に着手。システムの開発と並行して、これまで設計・施工で別々に持っていた設計データと管理を統合する新部署を今年4月に立ち上げ、データのワンストップ利用体制を構築した。同社が設計・施工の両方を手掛けるマンションにBIMを順次導入。今年度中に1割に、15年中に5割に、16年度までに全物件へ導入する。BIM導入のイニシャルコストは約2億円。全物件展開に係るコストは約10億円。

 BIM内で組み上げられたモデルには、建物意匠・構造・設備・外構に関する部品や仕上げのデータが紐づけられており、このモデルを使い、設計図書・販売図面・施工図の図面データを一元化。モデルデータの修正が即座にすべてのデータに反映される。これにより、図面や部品の整合や事前の干渉チェックが容易になり、施工段階での工程や部品の修正リスクが低くなることから、コストダウンにもつながる。設計効率が高まり余剰となった時間を使い事業主への提案数を増やし、情報の可視化で理解を深めてもらう。

 BIMモデルデータは、販売に用いる完成予想CGや住戸図面などでも活用。モデルデータをもとに3DイメージCGやバーチャルモデルルームなどを作成し、間取り図や完成予想CGは、セレクトプランやカラーセレクト等を瞬時に反映させ、ユーザーに提示できる。そのため、従来必要不可欠であったモデルルームの完成模型や、パンフレットのペーパーレス化も可能になる。

 また、設備機器等の耐用年数データ等を用い、メンテナンス時期をユーザーに知らせたり、リフォーム、大規模修繕の場面でもモデルデータを活用し、満足度の高い提案を行なっていく。

 BIMモデルデータを設計から販売まで活用したモデルケースとなる「ブランシエラ板橋西台」(東京都板橋区、総戸数80戸)の販売を、2015年1月に開始。同物件のモデルルームでは、完成模型は置かず、シアターと個別商談ブースのパソコン・モニターを使い、BIMによるバーチャル住空間を体感してもらう新しい販売手法を導入する。

 29日会見した、同社取締役兼常務執行役員の池上一夫氏は「当社は、設計施工比率が90%と高く、データが設計だけでなく施工現場で活かせること、分譲マンションに特化しているため部品数が厳選されその品質や価格が把握できていること、販売・管理・リフォームなどグループ全体でデータを活用できることから、導入を検討してきた。単にマンションの品質を高めるだけでなく、事業者や消費者の満足度を高めることも狙っている。システムは、今後も進化させていき、設計施工の効率を高めることで、将来的には施工コストを3割程度引き下げたい」と語った。

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