海外トピックス

2011/2/21

vol.173 サステーナブルな家って?

LVM Home  モダンでコンパクトなプレハブ住宅。(写真提供:Rocio Romero LLC.撮影:Richard Sprengler 禁無断転載)
LVM Home モダンでコンパクトなプレハブ住宅。(写真提供:Rocio Romero LLC.撮影:Richard Sprengler 禁無断転載)
ロフトキューブ (写真提供:Studio Aissinger   写真:Steffen Jaenicke 禁無断転載)
ロフトキューブ (写真提供:Studio Aissinger 写真:Steffen Jaenicke 禁無断転載)
リサイクルの素材を豊富に使った美術大学院生のスタジオが並ぶ(ミシガン州 クランブルックアカデミーオブアート)
リサイクルの素材を豊富に使った美術大学院生のスタジオが並ぶ(ミシガン州 クランブルックアカデミーオブアート)
窓を2重のガラスに替えている近所の家。全面大きい窓なので改築後は熱効率がかなりよくなる(イリノイ州シカゴ市)
窓を2重のガラスに替えている近所の家。全面大きい窓なので改築後は熱効率がかなりよくなる(イリノイ州シカゴ市)
改築中の家。最初は多少値段が高くてものちのち光熱費が倹約出来るのでサステーナブルな壁材を使っているそうだ(イリノイ州シカゴ市)
改築中の家。最初は多少値段が高くてものちのち光熱費が倹約出来るのでサステーナブルな壁材を使っているそうだ(イリノイ州シカゴ市)

新進建築家が目をつけた「プレハブ住宅」

サステーナブル (sustainable)、あるいはサステナビリティ (sustainability) という言葉は、半永久的に継続使用が可能な状態を言うが、エネルギーや環境問題に使われる場合は、環境保全を目的とする言葉として理解されている。 住宅に関しては、再利用の工夫や太陽熱、地熱などが取り入れられ、特に1990年代からサステーナブルな家作りは飛躍的に伸び、一般化してきた。その原因として次の3点があげられる。 まず、サステーナブルな環境作りに貢献している、という満足感。2番目は、最初は金がかかるが、長い目でみれば元がとれておつりがくるというもの。そして、将来売り易い、などだ。 これらサステナビリティに留意した人々の要望に、業者もビジネスの突破口を見出す。特に最近は、新進建築家がプレハブ住宅の持つ利点に注目し、従来とは違ったイメージでプレハブ住宅をサステーナブルな住宅として取り上げている例が注目される。

合理的な面をうまく生かして…

プレハブ住宅というと、簡便、安っぽい、一時的、などのイメージが浮かぶ。これらのマイナスイメージに反し、プレハブ住宅が持つ合理的な特徴をうまく生かしたプレハブ住宅を、建築研究家のシェリィ・クーンズが最近出版した本の中で紹介している(“PPREFABULOUS+SUSTAINABLE building and customizing an affordable, energy-efficient home” by Sheri Koones. Arbams. NY)。 プレハブ建材は工場で規格に従って切断、区分けされ、半ばまで組み立てられる。出荷するまで作業は工場1ヵ所で行なわれるので、無駄が少なくゴミは最小限に抑えられる。 クーンズの本の中でリサイクル建材を使っているプレハブ住宅が紹介されているが、多くのプレハブ住宅製造会社は予想以上にサステーナブルな傾向があり、サンドイッチにした防寒パネル使用、大豆使用のフォーム、屋根に組み込むソーラーパワーシステムなどが随所に見られる。さまざまなサステーナブルな建材を使うことで、従来の住宅に比べ、光熱費が15%節約できるという。

個性的でサステーナブルな住宅に人気

プレハブ住宅をうまくビジネスに取り込んだ例がある。 建設業者レオとロンは長年続けてきた建築業を再考せねばならなかった。天候による工期の遅れ、建材の不足や遅延、下請けがある日突然現れなかったり…。仕方なく彼等だけで下請けを使わずに仕事をさばいていくうちプレハブ工法に行きつく。そして彼等は数年間の試行錯誤ののち、2006年にプレハブ住宅会社を立ち上げたのである。 レオとロンだけで管理ができるし、充分目が行き届くために住宅を高品質に保てる。建材は常に寸法どおりに裁断されているから、トレーラーで現地に配達されてから2~3日で組み立てられる。 また、建築家とプレハブ住宅会社が組むと、個性的でしかもサステーナブルな住まいに仕上がるのも人気の元となっている(www.marmolradzinerprefab.com)。

サステナビリティに関する2つの大きなプログラム

アメリカにはサステナビリティに関して2つの大きなプログラムがある。LEEDと全米建築業者組合によるCGPである。 政府によるグリーンビルディング カウンシルが2007年に設置され、LEED (Leadership in Energy and Environmental Design) がガイドラインとされた。LEED は4つの段階(資格有り、銀、ゴールド、プラチナ)に分けられ、認定されればそれを表示できる。 2008年には、National Association of Home Builders (全米建築業者組合)がサステーナブルな建設工法に合致する資格をLEEDと同様、4段階の資格、CGP (Certified Green Professional) として設置した。LEEDと似てはいるが、建設業者に対して与えられる資格で、州と地域の建設業者の利益を計ったものともいえる(www.nahb.org/category.aspx?sectionID=1174) 。

将来のことを考えて、住宅はサステーナブル仕様に

サステーナブルな家、“グリーン” であることは、経費がかかる、金持ちなど特定の人々のすることだ、と言う声を時折耳にする。以前はサステーナブルな製品は高価で特別注文が多かったが、いまや数多くの製品が生産されるようになり、競争が生まれて手頃な価格となった。 オバマ大統領の「グリーン宣言」声がかりもある現在、政府からの税控除や販売者側からのディスカウントや特典もあって、サステナビリティは一般化してきた。全米グリーンビルディングカウンシルによると、2005年には2%だったグリーンマーケットが、2008年には10~12%に伸びたという。2013年までには20~25%になるだろうと予測している(Chicago Tribune newspaper 03/14/2010)。 現在、家を改造するにしても新しく家を買うにしても、サステーナブルな仕様にしておかないと、将来家を売ろうと思った時に売り損ねる不安も…? 倫理面からも、光熱費節約という実際的な面からも、そして実利的な見地から眺めても、社会全体がサステーナブルな方向に動いているのは疑いようもない。

Akemi Nakano Cohn
jackemi@rcn.com
www.akemistudio.com
www.akeminakanocohn.blogspot.com

明美コーン

コーン 明美
横浜生まれ。多摩美術大学デザイン学科卒業。1985年米国へ留学。ルイス・アンド・クラーク・カレッジで美術史・比較文化社会学を学ぶ。 89年クランブルック・アカデミー・オブ・アート(ミシガン州)にてファイバーアート修士課程修了。 Evanston Art Center専任講師およびアーティストとして活躍中。日米で展覧会や受注制作を行なっている。 アメリカの大衆文化と移民問題に特に関心が深い。音楽家の夫と共にシカゴなどでアパート経営もしている。 シカゴ市在住。

新着ムック本のご紹介

ハザードマップ活用 基礎知識

不動産会社が知っておくべき ハザードマップ活用 基礎知識
お客さまへの「安心」「安全」の提供に役立てよう! 900円+税(送料サービス)

2020年8月28日の宅建業法改正に合わせ情報を追加
ご購入はこちら
NEW

月刊不動産流通

月刊不動産流通 月刊誌 2024年6月号
「特定空家」にしないため…
ご購入はこちら

ピックアップ書籍

ムックハザードマップ活用 基礎知識

自然災害に備え、いま必読の一冊!

価格: 990円(税込み・送料サービス)

お知らせ

2024/5/5

「月刊不動産流通2024年6月号」発売開始!

月刊不動産流通2024年6月号」の発売を開始しました!

編集部レポート「官民連携で進む 空き家対策Ⅳ 特措法改正でどう変わる」では、2023年12月施行の「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」を国土交通省担当者が解説。

あわせて、二人三脚で空き家対策に取り組む各地の団体と自治体を取材しました。「滋賀県東近江市」「和歌山県橋本市」「新潟県三条市」「東京都調布市」が登場します!空き家の軒数も異なり、取り組みもさまざま。ぜひ、最新の取り組み事例をご覧ください。