海外トピックス

2011/9/6

vol.186 サクセスストーリィ

新しくペンキを塗り替えた自宅。ご主人のジェフと娘のあみちゃん(ワシントン州ベリングハム市。以下写真提供パデュー聖子さん)  <a href=http://myweb.wwu.edu/~atsutas/index.html target=blank>http://myweb.wwu.edu/~atsutas/index.html</a>
新しくペンキを塗り替えた自宅。ご主人のジェフと娘のあみちゃん(ワシントン州ベリングハム市。以下写真提供パデュー聖子さん) http://myweb.wwu.edu/~atsutas/index.html
Western Washington大学で仕事中のSeiko
Western Washington大学で仕事中のSeiko
衣装が楽しいハロウィーンのお祭りで
衣装が楽しいハロウィーンのお祭りで
家の庭でB.B.Q.を料理中のジェフ
家の庭でB.B.Q.を料理中のジェフ
自宅で3羽の鶏を飼っている
自宅で3羽の鶏を飼っている

アメリカの第一線で活躍する日本女性

生まれた国を離れてアメリカにやってくるには人それぞれ目的がある。前回のレポートでは、政治的事情による難民や、密入国も辞さず仕事を求めて必死にやってくる移民をとりあげた。 努力次第で、外国人だろうと女性だろうと同等に受け入れる懐の深さがあるのもアメリカ社会の面白さ。よりよい教育を得るために、あるいはすでに優れた能力があって、さらにそれを新しい土壌で伸ばしてみたい、と高い望みを抱いてやってくる外国人も多い。 今回からアメリカの第一線で溌剌と活動している日本女性を、2回にわたって紹介しよう。

ご主人の協力を得ながら、子育て、仕事、そしてアーティスト活動

パデュー 聖子さん(Seiko A. Purdue 以下敬称略)は大阪出身。アメリカ西海岸シアトル北方のウェスタンワシントン大学美術学部の准教授。18年前に大学院をめざして留学。2つ目の大学院、School of The Art Institute of Chicagoで修士課程修了後、アメリカにとどまって自分の力を試してみたいと仕事を探し、大学のポジションを得た。 40歳前後で働き盛りのSeikoは、日本女性に対して“子供や家庭も大切だけれど、自分の得意な分野で少しでも能力を発揮して、自分が社会に役立っていると感じて欲しい”と希望を述べているが、彼女自身、7年前に結婚し、同じ大学で働くご主人ジェフの協力を得ながら、子育てと教職の仕事に加え、アーティストとして作品を制作発表するなど、超忙しい日々を見事にこなしている。

至ってシンプルなアメリカ人の暮らし。働く女性にはありがたい!

女性が仕事と子育てを続けるには家族の協力が必要だ。とりわけSeikoはアート活動で家をあける時があるが、その期間ジェフが子供の世話をしてくれるのは本当に有り難い、と感謝する。それでも家事や買い物で彼女に荷重がかかるのは否めない。 料理をするアメリカ男性は決して少なくないが、味が単調とか脂っこいなど、友人達の声を聞く。しかし、日本の料理の味の繊細さを求めるのは無理というもの。日本から友人が遊びに来て、「アメリカ人は大きな皿におかずを盛り合わせてたった一皿で済ませてしまう!」とびっくりしていたが、それは極端だとしても、食事の支度も後始末もアメリカ人の暮らしは至ってシンプル。それで満足してくれる家族は、われわれ仕事を持つ女性にとって、実は有り難い。

自己主張の強い女性たちの中で悪戦苦闘するSeiko

Seikoが住むベリングハムという町は、山と海に近く自然に恵まれている。ジェフと半分ずつ出し合って購入した一戸建ての家は、町の中心地へも大学へも近く、バスや自転車で行ける距離。価格は2,000万円しなかったそうで、シカゴのような都会で同様の住宅を見つけるとなると、倍の価格でも無理だ。 3BRの住宅、倉庫とスタジオ、広い庭にはリンゴの木や畑があり、夏はラベンダーやたくさんの花々が咲き乱れるとか。鶏を3羽飼っていて、“新鮮な卵や野菜が食べられて幸せ!”とSeiko。 こうした自然環境や子供の成長がインスピレーションとして彼女の作品に反映される。しかし、このような平和な幸せを楽々と手に入れたわけでは決してない。Seikoがアメリカ女性について“自己主張が強い。子育てが終わってから大学に戻って勉強したり、まわりを気にせず行動する、政治に対して意見を言える” と述べるように、そこにはしっかりとした個性を持つアメリカ女性が描かれ、その中で悪戦苦闘するSeikoが浮かぶ。

甘えの許されない社会で、自分の力を試していけるアメリカ

私自身、仕事の場で外国人として、また女性であるということで差別されているとは感じないが、それでも文化の違いからか、控えめになったり聞き役に回っている自分に気づく時は往々にしてある。英語が完璧でないことや、自信を持って主張する習慣に欠ける所以だろう。 アメリカの子供達にどんなことでもいいから「どう思うか」聞いてみるとすぐにわかる。男の子でも女の子でも幼児でさえ、はっきりと自分の意見を述べる。意見を言わないのは意見がないのだとみなされかねない。言葉で表現することを彼等は小さい頃から学んでゆく。 大学に限らず、あっという間に属する部門が縮小やら閉鎖、合併や新設も多いアメリカ社会。変化に富み流動的だから、巻き込まれる人々はたまったものではなく、そのストレスはいうを待たない。 Seiko自身、失望も失敗もあっただろうが、それでも彼女は自分で判断して一歩一歩築いてきたのだろうし、これからもそうして暮らしてゆくだろう。アメリカは女性としても外国人としても甘えが許されないかわりに、一人の人間として対等に自分の力を試してゆける豊かな土壌。 Seikoが根をはり枝を伸ばし、美しい花をさらにいっぱい咲かせてくれることを信じている。


Akemi Nakano Cohn
jackemi@rcn.com
www.akemistudio.com
www.akeminakanocohn.blogspot.com

明美コーン

コーン 明美
横浜生まれ。多摩美術大学デザイン学科卒業。1985年米国へ留学。ルイス・アンド・クラーク・カレッジで美術史・比較文化社会学を学ぶ。 89年クランブルック・アカデミー・オブ・アート(ミシガン州)にてファイバーアート修士課程修了。 Evanston Art Center専任講師およびアーティストとして活躍中。日米で展覧会や受注制作を行なっている。 アメリカの大衆文化と移民問題に特に関心が深い。音楽家の夫と共にシカゴなどでアパート経営もしている。 シカゴ市在住。

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