パーティーは自宅で…、が一般的なアメリカ
小さいアパートであろうが、大きな住まいであろうが、家の大小にかかわらず、アメリカ人は自分の家で人をもてなすのが好き。レストランより安く上がる、駐車場や時間を気にしなくてよいから合理的だ。婚約祝い、赤ちゃん誕生、銀婚式などの私的な集まりから、ビジネスにおいても互いに呼んだり呼ばれたり…、気さくに行なわれる習慣といえよう。 とはいうものの、いまや多くの女性達は働いているから、家でもてなすと負担が多くなる。そんな時に女性支援のサービス業、「ケィタリング」が大活躍。ケィタリングサービスは、メニューの相談から材料の買い出し、料理、客への提供、そしてあと片づけまですべて一切を引き受ける。だから女性は客とおしゃべりしたり、客同士を紹介したりできる。もちろん、自分自身が楽しむのが一番の目的であろうが…。 そんなわけで、最近かなりの友人達がケィタリングサービスを利用するようになった。サービス内容は客の目的や規模によりさまざま
ケィタリングサービスは、コンサートや美術館、ガーデンパーティなどに出向いて料理を供給する大規模なものから、顧客の家の台所で料理を温める程度の小規模なものまで、内容はバラエティに富んでいる。ガーデンパーティなど野外の場合は、ケイタラー（サービスを提供する会社）によってすでに調理は済み、あとの10％くらいを現地で仕上げる。ケィタリングサービストラックの中に台所が備え付けてあり、そこで仕上げをすることも。 企業が催す「引退パーティ」「クリスマスパーティ」「設立何十周年記念パーティ」などに、オフィスに出向いて飾り付けから配膳まですべてを引き受けるケィタリングサービスも多い。「朝食しながらのミーティング」もビジネスの場面で頻繁に行なわれるが、器具から食器類すべてを持ち込み、コーヒーやジュース、トーストなど軽い朝食をまかなうので、女性社員への負担はない。 カクテルパーティやBBQパーティなど、自宅に顧客を招く際、「奥様」は“奥”にこもらず表に出て客に目を配り話題を提供するもてなしの重要な役割を求められるが、そのようなビジネスに関わる時には、圧倒的にケィタリングサービスが使われる。海外からの友人家族を寛いだ雰囲気でおもてなし
卒業祝、銀婚式など人生の折り目節目にはたくさんのイベントがあり、自宅がもてなしの場になることは結構多い。 インドから友人家族がアメリカに遊びに来た時、一人住まいの独身女性、トルーディは友人20人位を自宅に招いてインド人家族を友人達に紹介するパーティを開いた。夜７時頃、玄関を入るとワインバーがセットしてあり、ケイタリングの男性からワインを注いでもらい、部屋の中へ。庭では人々がグラスを手におしゃべりに忙しい。客はトルーディに挨拶をして、友人達とインドの話で盛り上がる。やがて「食事の用意が出来たわ」とトルーディの合図で食堂へ入ると、テーブルの上にはサラダ、鶏肉、牛肉、野菜などの料理がおいしそうに大皿に盛られ、用意されたナイフ、フォーク、ナプキン、皿を手に各自好きなものを取る。バイキング形式なので、そのまま庭へ出てガーデンチェアにすわっていただく。皿が空になると、ケィタリングサービスの人がデザートの皿と入れ替える。コーヒーや紅茶も出て寛いだ楽しい雰囲気に浸れるのは自宅ならでは…？ デザートが出るころには、すでにケイタラー達は台所で片付け始め、客がトルーディの家を辞する頃台所はピカピカ、ケイタラーは全員退出していた。時間も手間も省け、働く女性には何よりのシステム
メニューの内容は多岐にわたり、予算によっても、内容によってもさまざま。経験した範囲ではバイキング形式が多い。日本の出前とどこが違うかと言えば、出前はできあがった料理を顧客に配達するのだが、ケィタリングは料理人が家に出向いてそこで調理するという点だ。契約によっては、ワインやカクテルなど客の好みで取り揃え出す係とか、料理を客の一人一人に取り分けるフォーマルなセッティングなど、たくさんのメニューが用意されている。 だから、最初の話し合いでケィタリングサービス側と細かい点に至るまではっきりと了解し合う必要がある。自分でメニューを考え、買うものを書き出して買い物に出かけ、料理をして客をもてなし、後片付けするまでの全ての時間と手間とを考えると、ケィタラーに肩代わりして欲しい場合もあろう。 サービスの価格は千差万別だが、仕事で忙しい時には女性のストレスをぐんと軽くしてくれるし、私的な集まりでは、多少の出費を覚悟しても、楽しい時間を多くの友人達と共有し話題を交換したいと思う。その新鮮な刺激が明日への活力になるのは確かだ。
＜参考＞
http://cateringchicagoland.com/gallery.html
www.corkyscatering.com/
www.foodforthought-chicago.com/
Akemi Nakano Cohn
jackemi@rcn.com
www.akemistudio.com
www.akeminakanocohn.blogspot.com
コーン 明美
横浜生まれ。多摩美術大学デザイン学科卒業。1985年米国へ留学。ルイス・アンド・クラーク・カレッジで美術史・比較文化社会学を学ぶ。
89年クランブルック・アカデミー・オブ・アート（ミシガン州）にてファイバーアート修士課程修了。
Evanston Art Center専任講師およびアーティストとして活躍中。日米で展覧会や受注制作を行なっている。
アメリカの大衆文化と移民問題に特に関心が深い。音楽家の夫と共にシカゴなどでアパート経営もしている。
シカゴ市在住。
