海外トピックス

2013/1/7

vol.218 お金持ちの住まいを夢に見る

プライベートジェット機が離着陸するアスペン空港(コロラド州)
プライベートジェット機が離着陸するアスペン空港(コロラド州)
ある金持ちの邸宅。沢山の美術品が室内にも戸外にも展示してあり、まるで美術館だ(コロラド州アスペン市)
ある金持ちの邸宅。沢山の美術品が室内にも戸外にも展示してあり、まるで美術館だ(コロラド州アスペン市)
古くて由緒のある石づくりの邸宅(イリノイ州ハイドパーク市)
古くて由緒のある石づくりの邸宅(イリノイ州ハイドパーク市)
シカゴ中心街にそびえたつトランプタワー(イリノイ州シカゴ市)
シカゴ中心街にそびえたつトランプタワー(イリノイ州シカゴ市)
トランプタワーの正面玄関入り口
トランプタワーの正面玄関入り口
リッツカールトンの正面玄関入り口。ペントハウスは13億円とか(イリノイ州シカゴ市)
リッツカールトンの正面玄関入り口。ペントハウスは13億円とか(イリノイ州シカゴ市)
シカゴ市内にある1894年に建てられた由緒あるリングレィマンション。9BR、9億円で売りに出されている(イリノイ州シカゴ市)
シカゴ市内にある1894年に建てられた由緒あるリングレィマンション。9BR、9億円で売りに出されている(イリノイ州シカゴ市)

お城か、御殿か…。移動も自家用ジェットで

「一富士、ニ鷹、三なすび」。 新年に見た夢でその年の吉兆を占うので、縁起のよい夢を見るようにと、元旦の夜は祖母の言いつけに従って枕の下に願い事を書いた紙を敷いて寝たものだった。お金持ちの住まいは正月の初夢としてはめでたい気も…? 金持ちが全米一多いと言われるコロラド州アスペンを訪れる機会があったが、飛行場で沢山の個人用のジェット機が離陸着陸し混雑しているのにまず目を奪われ、そして御殿かお城かと見まごう大邸宅のスケールに仰天した夢のような体験がある。フォーブ誌によると、全米ではビル・ゲイツ(マイクロソフト社、ITビジネス)が一番の金持ち。次にウォーレン・バフェット(投資家、実業家)、ラリー・エリソン(オラクル社、ITビジネス)が続く。 お金持ちはどのような家に住んでいるのだろうか? 雨風をしのぐ屋根さえあればいい庶民の住まいとどこがどう違うのだろう?

お金持ちにも2つのタイプ

お金持ちと一口に言っても、先祖代々の富を引き継ぎ生まれながらにして裕福な人々と、一代で富を築いた人々とに大きくわけられそうだ。 先祖代々の金持ちというと、フランクリン・ルーズベルト大統領が思い浮かぶ。鉄道で財をなした先祖を持ち、ニューヨーク州の北、森林に囲まれ浮き世の雑踏から隔離された広大な敷地で英国貴族のように育った。PBS ホームビデオ“Ameriacan Experience : FDR” は一見の価値あり、だ。上流階級の育ちからか、強い自信に満ちたルーズベルは、世界的大恐慌から第二次世界大戦に至る不安定な時期に12年間も大統領を務め危機を乗り切ったのだった。ルーズベルト家にみるように、代々裕福な家系は同じ場所に引き続き住むようである。最新の映画“Hyde Park on Hudson” では、ビル・マレィがルーズベルトを演じており、歴史的な邸宅が見られる。 一方、一代で富を築いたお金持ちはITビジネス業界に顕著に見られるが、住む場所を自由に選択するようだ。オラクル社CEOラリー・エリソンはカリファルニア州の広大な敷地に人工湖を作り日本風の邸宅に住む。推定65億円~110億円の豪邸の他、数々の不動産を所有、日本にも京都の東山に家を持っているとか…。ITビジネスだけに決断力が早いのか、実業家として投資の才覚があるのか? 世界の何ヵ所かに不動産を分散して持ち、彼等は取得も売却もスピーディである。

すべてを手に入れたがり、見栄っ張り

最近シカゴ市内に完成したトランプタワーは、シカゴ川やミシガン湖が一望に見渡せ、最も背が高い92階建てのホテルを含むコンドミニアム。486戸のうち89階のペントハウス(632平方メートル)は約30億円。地上からの高さも物件価格もはるかに他のコンドミニアム群を睥睨する。 市の中心地の高層マンションはいずれも高価だが、価格の最大の決め手は眺望の良さで、上の階に行く程価格は高い。シカゴトリビューン紙によると、お金持ちはあれもこれもとすべてを手に入れたがり、物件の半額を現金で支払い、見栄っ張りで自分が金持ちであることを誇示するきらいがあるそうだ。会社でも社長室は最も高い階にあって、眺めの良い部屋が使われるが、上へ上へと登る上昇志向の現れだろうか。

地下室に体育館、美術館並みのコレクションも…

一戸建ては、広さに加え由緒があってエレガントな邸宅が好まれるようだ。シカゴ市から北上した湖岸沿いのグレンコゥ市、ハイランドパーク市、レイクフォレスト市などの地域には大邸宅が集中し、車で走っても走っても大邸宅が立ち並ぶ景観はまるで別世界。お金持ちが望む仕様はいずれも特別注文で最高級品。地下室にバスケットボールやアイスホッケーが出来る体育館を備えるのが流行っているとか聞く。また、安全に留意してか、何台もの防犯ビデオカメラを装備。家自体の広さは743平方メートルから1,115平方メートル位だが、お金持ちは世界中を旅行して買ってくるみやげ物やコレクションを置くスペースが必要なのだとか。 芸術品を収集する人々も多く、美術館並みの邸宅も少なくない。しかし広ければどこでもいいわけでもなく、同じ富裕階級が住む高級住宅地で80年から100年は経た格調のある邸宅をステータスとして望むようである。

高級住宅は今がお買い頃?

不動産エージェントで友人のマイク・ホーベンによると、昨秋からこれらの高級住宅地でセールスが活発になってきたそうだ。大手不動産会社Koenig & Strey社所属のナンシー・ナギィも、“2011年に比べて豪邸(1物件5億円以上)のセールスは現在16%上昇している”と、マイクの言葉を裏づける。 5年間で30%下落した不動産を今買えばお得なので、頭の良い金持ち実業家達は投資を兼ねてこういった高級不動産物件に目をつけているのだろう。高級住宅地のバリングトン市でプール、劇場、娯楽室、ワイン貯蔵庫などを備えた新築の豪邸が2009年に約8億円で売りに出されたが、現在は半額の4億円に下落。 確かに「御殿」は今がお買い得だ。


参考資料
/www.trumpchicago.com/
en.wikipedia.org/wiki/Larry_Ellison Chicago Tribune newspaper 9/30/2011
www.jpost.com/JewishWorld/JewishFeatures/Article.aspx?id=187386


Akemi Nakano Cohn
jackemi@rcn.com
www.akemistudio.com
www.akeminakanocohn.blogspot.com

明美コーン

コーン 明美
横浜生まれ。多摩美術大学デザイン学科卒業。1985年米国へ留学。ルイス・アンド・クラーク・カレッジで美術史・比較文化社会学を学ぶ。 89年クランブルック・アカデミー・オブ・アート(ミシガン州)にてファイバーアート修士課程修了。 Evanston Art Center専任講師およびアーティストとして活躍中。日米で展覧会や受注制作を行なっている。 アメリカの大衆文化と移民問題に特に関心が深い。音楽家の夫と共にシカゴなどでアパート経営もしている。 シカゴ市在住。

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