海外トピックス

2013/10/21

vol.237 家庭ゴミの処理事情

家の正面は表通りに面している。裏にも通りがあってゴミ箱を置く。ガレージ出入口は裏通りに向いているから、車は裏通りから出るわけだ。ここに住んでいる人、ゴミ回収車と修理の車だけが裏通りを通行する(イリノイ州シカゴ市。以下同)
家の正面は表通りに面している。裏にも通りがあってゴミ箱を置く。ガレージ出入口は裏通りに向いているから、車は裏通りから出るわけだ。ここに住んでいる人、ゴミ回収車と修理の車だけが裏通りを通行する(イリノイ州シカゴ市。以下同)
早朝6時半頃、ごみ回収車がごみを集めている所。大きな車幅なので車のすれ違いは不可能
早朝6時半頃、ごみ回収車がごみを集めている所。大きな車幅なので車のすれ違いは不可能
表通りはこのようにすっきりしている。裏通りがあることで、シカゴの都市の美観を保っているのではなかろうか?
表通りはこのようにすっきりしている。裏通りがあることで、シカゴの都市の美観を保っているのではなかろうか?
150cmもある背の高いごみ箱。114kgまで入れられる程の大きさだが、下に大きな車輪がついていて(右下参照)、女性でも楽に動かせる
150cmもある背の高いごみ箱。114kgまで入れられる程の大きさだが、下に大きな車輪がついていて(右下参照)、女性でも楽に動かせる
市から配られたリサイクルブルーカートには、英語とスペイン語で書いた説明書が貼ってある
市から配られたリサイクルブルーカートには、英語とスペイン語で書いた説明書が貼ってある
学校のゴミ置き場。学校関係者以外の人がごみを勝手に捨てないよう、チェーンがかけてある。市の管轄でないので、業者に回収を委託する
学校のゴミ置き場。学校関係者以外の人がごみを勝手に捨てないよう、チェーンがかけてある。市の管轄でないので、業者に回収を委託する

最近ブルーのゴミ箱がシカゴ市から各家庭に無料で配布された。「リサイクルブルーカート」というのだそうだ。しかし、従来使っていた黒のゴミ箱は回収しないので、二人住まいのわが家でさえ、巨大なゴミ箱が黒2つと青1つの合計3つ。大人数の家庭ではなんと5~6個にも増えて、裏通りはぼこぼこと青と黒のどでかいゴミ箱行列だ。
幸い、ゴミ箱は家の裏に置かれるので、ゴミをそこへ捨てに行く時以外、目にすることはないが、裏通りがなく、ゴミ箱を回収日に家の前に出す地域もあるので、この青黒大名行列(!)はひどく街の美観をそこねる。

ゴミリサイクルは、市政改革の一つ

それというのも、ディリー元市長が21年間、その後息子のM. ディリー前市長が22年間シカゴ市を仕切り、多くの組織も延々と引き継がれてきたため、ゴミ処理の方法も何十年間変化なし。ゴミを回収する時も、回収車のフォークに巨大な黒ゴミ箱をはめこみ、ゴミ箱をモーターでぐーんと持ち上げ、さかさまにしてゴミをトラック内に落とすので、取り扱う人はゴミの内容をいちいち見るわけではない。ゴミは、回収後埋め立て地にすべて廃棄されていた。 M. ディリー前市長が引退後、2011年にラム・エマヌエル氏が新市長に就任し、市の経済を建て直す政策がいくつか提示された。無駄を省き、絞れるものはあらゆる所からとことん絞り尽くす方針で、今回のリサイクルブルーカートプログラムもエマヌエル市長の改革案のひとつ。

ゴミ回収ルートも変わり、清掃局も市民も大混乱

エマヌエル市長の号令一下、リサイクルブルーカート(高さ150cm、奥ゆき80cm、巾65cm、容量114kgまで) が試験的に市の4分の1にあたる26万世帯に配られた(/en.wikipedia.org/wiki/Chicago)。新聞紙、缶、瓶、プラスティック容器など、まとめて回収し、それらの膨大なリサイクルごみは、その後、人手により分別されるとか。 さらに、エマヌエル市長は燃費節約のために、従来のゴミ回収車の巡回ルート変更に踏み切った。詳細は省くが、回収ルートは何十年も継続していて、さらに複雑な地方行政の思わくが絡んでいたので、この大改革には清掃局も市民も度肝を抜かれた。ゴミ回収日は変わるし、黒のゴミ箱回収(生ゴミ)が従来通り週1回としても、青(リサイクルブルーカート)も週に1度か?黒と同じ日か?時間は?非難も混乱と同じ位多かったが、まだ廃止の声は聞かない。

市民の理解なくして、ゴミ問題は…

シカゴ市清掃局は、一戸建て住宅と4世帯以下の集合住宅のゴミを回収する。4世帯以上の建物や学校、病院、商業施設等はそれぞれ私設ゴミ回収業者に委託する。 ノースブルック市のコンドミニアム(マンション)に住む友人のシャロンは、各階にシュート(ゴミ投げ入れ口)があるので、ふたをあけてそこに落とすそう。リサイクルが奨励されているので、シャロンはすすいだ後にシュートから分けて捨てる。業者が建物のゴミ置き場から週1回回収するらしい。 隣のエバンストン市の一戸建て住宅に住むジュリーは、「市が週1回回収するわ。うちは分けずに全部一緒に捨ててしまう。リサイクル用の専用容器はただじゃないの。市から買うのだけど、まだ買っていないわ」とか。 エバンストン市のゴミ回収事項を調べてみると、シカゴ市同様、かなり細かく分別が指示、奨励されてはいるのだが…。ゴミ処理は市によって回収方法が違うし、市民の対応もさまざまだが、市と市民、双方の自覚と協力が絶対に必要となろう。

経費削減で、市民にどういう恩恵が…?

コンピューター、ファックスマシーン、TV、携帯電話機などの電気製品(e-wasteという)は、今後は黒ゴミ箱に捨てられず、市で指定された場所に持って行かなければならないらしい(www.cityofchicago.org)。 これらの e-waste からたったの14%がリサイクルされるだけにしても、エマヌエル市長はその収益を見逃さなかった。努力はわかるが、エマヌエル市長が市への収益政策を余りにも強く押し出すと、ひどく窮屈で身が縮む。「夢を」とは言わないまでも、経費削減によって増やした財源で楽しく前向きな改革案も示して欲しい。 市は盛り沢山の説明をウエブサイト上に掲載してはいるが、アメリカ人達は上から言われて素直に従う、というよりは、納得しないとやらない部分があるから、リサイクルに関してこれからどう変転してゆくか…、面白くなりそうだ。


Akemi Nakano Cohn
jackemi@rcn.com
www.akemistudio.com
www.akeminakanocohn.blogspot.com

明美コーン

コーン 明美
横浜生まれ。多摩美術大学デザイン学科卒業。1985年米国へ留学。ルイス・アンド・クラーク・カレッジで美術史・比較文化社会学を学ぶ。 89年クランブルック・アカデミー・オブ・アート(ミシガン州)にてファイバーアート修士課程修了。 Evanston Art Center専任講師およびアーティストとして活躍中。日米で展覧会や受注制作を行なっている。 アメリカの大衆文化と移民問題に特に関心が深い。音楽家の夫と共にシカゴなどでアパート経営もしている。 シカゴ市在住。

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