海外トピックス

2014/1/8

vol.242 ペンキ塗りは今いちばんお洒落なメークアップ

大手ホームセンターのホームデポでは、沢山のペンキの色見本がメーカー別に展示してある(イリノイ州シカゴ市 以下同)
大手ホームセンターのホームデポでは、沢山のペンキの色見本がメーカー別に展示してある(イリノイ州シカゴ市 以下同)
彩度も明度もやや落として落ち着いた色が多いようだ。トレンディな色彩が見て取れる
彩度も明度もやや落として落ち着いた色が多いようだ。トレンディな色彩が見て取れる
2種類のスポンジローラーとハンドル、容器がセットになって1
2種類のスポンジローラーとハンドル、容器がセットになって1
000円位だろうか。ホームデポにて
000円位だろうか。ホームデポにて
友人のマリー・ベイムは、アーティストらしく微妙なミッドナイトブルーをダイニングルームに配した
友人のマリー・ベイムは、アーティストらしく微妙なミッドナイトブルーをダイニングルームに配した
壁と天井との境に当たるトリムには、やや濃い目の色を塗ってアクセントにすることが多い
壁と天井との境に当たるトリムには、やや濃い目の色を塗ってアクセントにすることが多い

微妙な色のペンキが驚くほど沢山揃っている。「これ!」という色がみつからない時には、イメージしている色のカラー写真を持ってゆくと、店員がコンピューターでその色を分析し、可能な限り近い色を作ってもらえる。例えば、カーテンとかカーペットと同じ色のペンキが欲しければ、布地の見本を持参する。キッチンのローズウッドのキャビネットなど家具と同じ色のペンキが欲しければ、家具の木地見本を元にして特別注文色が得られる。
最近の若い世代は、最小限の家具や小物でシンプルな空間を形作る傾向があり、その場合、広い壁面は部屋の印象を決定づける大切なデザイン要素。壁をトレンディな色に塗り替える人が増えて来た。

サイズ、色、材質、価格など、多種多様な商品が…

そのためか、ペンキの需要はアメリカでは驚くほど多い。ペンキ専門店や大手のホームセンターでは、さまざまなサイズ、高級品から使い捨ての簡便な品まで、ペンキ塗りに必要な道具が揃っている(/www.homedepot.com)。 最低限、刷毛とローラーとペンキを入れる容器があれば事足りるが、天井を塗る時ローラーにつける長いハンドルとか、床をカバーするドロップクロス(キャンバス地かビニール)、梯子、違う色を塗り分ける時に貼るマスキングテープなどは用意するに越したことはない。 最も多く使われるペンキは水溶性のレイテックスペイントで、同じ色であっても、つやの有る無しで種類が分けられ、(1)グロス(光沢がある)、(2)セミグロス(やや光沢がある)、(3)エッグシェル(卵の殻のような柔らかいつや)、(4)フラット(光沢がない)等あり、もっと細かく区分しているメーカーもある。天井はフラット、部屋はエッグシェル、洗面所はセミグロスが好まれるようだ。屋外や風呂場には水溶性レイテックスエナメル系の良い製品が出回っている。

色見本をもとに、店員がペンキを調合

ところで、色見本に示されるような何百色ものペンキが、在庫として店に存在するわけではない。大きさの違うペンキ缶やつやの程度でも一色に対して何種類かあるわけで、それだけの品揃えは不可能。人気商品は店頭に出ているが、多くはその場で混ぜ合わせたペンキを買う。 例えば、ベアー社のペンキ、約400色近くある色見本のうち、渋い赤、PPU2-2d (Red Pepper)が欲しいとしよう。色見本を店員に示し、必要な量とつやの有無を言う。店員はペンキ専門ブースで色見本のレセピ(混合率)に従い操作する。主要な色のペンキを元に、何種類かのティント(濃縮された色で、彩度や明度を決定する)が機械からたらたらと一滴、二滴…、レセピ通りにそれぞれ自動的に流れ込み、その後(遠心分離機のような?)機械で完璧に混ぜ合わせると、注文通りの色が仕上がる。

賃貸入居者が壁を塗り替えたいと言ってきたら?

ビジネスとして、賃貸住宅の場合は白い壁が多いが、「白」と一口に言っても10色以上も選択があり、青っぽい白は冷たい印象を与えるためか好まれず、暖かめのオフホワイトが一般的だ。最近ではサンドベージュ系が借り手を惹き付ける色と見るが…? 新しい入居者から「色を塗り替えたい」との要望があった時はどうするか? あるいは住んでしばらくしてから問い合わせがあった時の対処は? 数人のアパートオーナー達に聞いてみたところ、これはケースバイケースのようだ。例えば学生だと短期間で退去する場合が多いから塗り替えの要望は断る。しかし、信頼できる入居者の場合は、どんな色に塗り替えたいか(濃い色や強い色はノー)、自分で塗るのか職人に頼むのか、など話し合ってからオーナーは判断する。 長く住んでいる入居者から「汚れたので塗り替えたい」と要望があった時は、オーナーがペンキ代を負担して塗り替えを許可することもあるようだ。

以前は壁紙張替え、最近はペンキ塗りが主流に?

一般的な住宅では、木材を組み立てた上にドライウォールを留めつけ、約5cm幅の紙テープを貼ってドライウォールの隙間をうめる。接着した凸凹部分をやすりでなめらかにしてからプライマーを全体に1度か2度塗る。プライマーというのは下地部分を覆い隠し、補強する役目の白っぽい液体。今住んでいる部屋や、中古住宅に引っ越した時など、すでにペンキが塗ってある部分を好みの色に塗り替えたい場合は、プライマーを塗るプロセスから始める。 プライマーが乾くと、さて、いよいよペンキ塗りだ!壁と天井との境や床から1メートル辺りに飾りと実用を兼ねた細板(トリムとかベースモールディングとよばれる)が貼ってあるインテリアもある。トリムは壁の色より一段濃い色を塗ったり、アクセントとして反対色を使うと個性的になろう。 1960年代ごろまでは布やビニールの壁紙を貼るのが一般的だったが、最近はカラフルなペンキ塗装へと変化している。数ある美しい色彩群から望みの色を選べるし、職人に頼まず素人でも簡単に塗り替えられる。便利な道具も出回ってペンキ塗りを容易にし、トレンドに一層拍車をかけている。


Akemi Nakano Cohn
jackemi@rcn.com
www.akemistudio.com
www.akeminakanocohn.blogspot.com

明美コーン

コーン 明美
横浜生まれ。多摩美術大学デザイン学科卒業。1985年米国へ留学。ルイス・アンド・クラーク・カレッジで美術史・比較文化社会学を学ぶ。 89年クランブルック・アカデミー・オブ・アート(ミシガン州)にてファイバーアート修士課程修了。 Evanston Art Center専任講師およびアーティストとして活躍中。日米で展覧会や受注制作を行なっている。 アメリカの大衆文化と移民問題に特に関心が深い。音楽家の夫と共にシカゴなどでアパート経営もしている。 シカゴ市在住。

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