海外トピックス

2014/12/22

vol.264 楽しませて楽しむ、アメリカ人のデコレーションにびっくり!

感謝祭(サンクスギビングホリディ)のための飾り(イリノイ州シカゴ市。以下同)
感謝祭(サンクスギビングホリディ)のための飾り(イリノイ州シカゴ市。以下同)
ハロウィーンから感謝祭にかけてかぼちゃは大人気。枯葉を入れるゴミ袋(下のかぼちゃ)がデコレーションに使われるという実用も兼ねる
ハロウィーンから感謝祭にかけてかぼちゃは大人気。枯葉を入れるゴミ袋(下のかぼちゃ)がデコレーションに使われるという実用も兼ねる
ハヌカはユダヤ教の光の祭り。キャンドル台を窓際に置くので、灯された灯りが外から見えて美しい
ハヌカはユダヤ教の光の祭り。キャンドル台を窓際に置くので、灯された灯りが外から見えて美しい
ロスアンゼルス南部の海岸沿いの町にはイルミネーションが美しく集中している地区がある(カリフォルニア州ハンティントンビーチ市。以下同)
ロスアンゼルス南部の海岸沿いの町にはイルミネーションが美しく集中している地区がある(カリフォルニア州ハンティントンビーチ市。以下同)
汽車がプレゼントの周りを走り回る。音楽も奏でる
汽車がプレゼントの周りを走り回る。音楽も奏でる
家中がデコレーション!これらを見に来るツアーバスも見かけた
家中がデコレーション!これらを見に来るツアーバスも見かけた

10月のハロウィーン、11月の感謝祭、そして12月のクリスマス…、秋から冬にかけて次々と行事があって忙しい。厳しい冬の訪れを「さあ、こい!」とばかりに迎え撃つ知恵とも考えたくなる。家々は玄関や前庭、窓、テラスにまでいろいろと工夫を凝らした飾りつけがなされる。元来は宗教に基づく行事なのだが、楽しい祭日の訪れを祝うデコレーションとなり、もはや厳粛さは見当たらない。
アメリカの多くの住宅は塀で囲まない作りになっていて、歩道から芝生の前庭が広がりすぐに玄関だ。鬱蒼と木々を前庭に生やした家は都会では稀で、歩道と車道の境に背の高い並木が続く。だから通りや歩道からは家全体が見渡せるが、そんな開放的なアメリカ人の家にはかぼちゃやサンタさんがよく似合う。

「みんなに見てもらおう!」という飾り付け

開けっぴろげな家の作りからか、アメリカ人は季節に応じてさまざまなものを飾るが、これらは自分や家族のためというよりは、歩道を通りかかる人々皆に楽しんでもらおう!というサービス精神からきているのでは?
一戸建てばかりでなく、アパートやコンドミニアムでも窓辺に飾り付けをしている人も少なくない。窓の飾りも自分で見るよりは通りかかる人が見て楽しい。
前庭の飾りはいつも自分が見るわけでもなく、特にイルミネーションは明るすぎて夜寝るときの邪魔にもなろう。電気がチカチカ光りながらおもちゃの機関車がレールの上を走ったり、子犬や子猫を乗せたソリがガタゴト動いたりといった仕掛けに至っては、「さあ、見てね!」「見ました。すごい!」とびっくりするほかはない。ちなみにイルミネーションの電気代は月に数万円かかるという。

イルミネーションを見学するツァーも

日本人は「見せびらかす」ことを極力控えるが、アメリカ人は陽気で開放的。ともかく楽しもうよ!という陽性志向が常にちらつくが、これらの飾りもその気質と関係があるのかもしれない。
ロスアンゼルス市南部に、クリスマス時期になると一帯の家々がイルミネーションで派手に飾られる地区がある。飾りが集中した通りをゆっくりと見て回る遊覧バスのツアーまであって驚いてしまった。この町は太平洋に面している港町なので、波止場にもイルミネーションで飾りたてたヨットや船が沢山並び、夜の海面に満艦飾の光がきらきら反射してロマンティックな夜景。
ロスアンゼルスは冬でも暖かいので沢山の見物客でごったがえしているが、シカゴは寒いので歩き回る人はさすがに少ない。それでもクリスマス時期に飾り付けを集中的にする地区があり、夜は車で見にくる人々で賑わう。雪に反射するイルミネーションは、暖かなロスの夜景とは違って張りつめた硬質な輝きに満ちている。

ユダヤ人の祭りでも、窓際にキャンドル

何でもでっかいアメリカ。グランドキャニオンでは、ヘリコプターでサンタさんが飛んできてホテルに着陸したのに遭遇、空からやってきたサンタ御一行を迎えたことがある。しかしいくら開放的とはいえ、敬虔なキリスト教信者は12月24日の夜は教会へ特別なミサに行く。家族が集まり、食事やプレゼント交換をするのはたいてい25日の昼間。ユダヤ系アメリカ人が多いシカゴでは、クリスマスと同じ時期にハヌカという光の祭りがあり、キャンドルを毎夜1本ずつ増やしながら8日間ともしてゆく。これも通りかかる人誰もに見えるようどの家もキャンドル台を窓際に置いている。

簡素でモダンな日本、派手で明るいアメリカ

元来、ハロウィーンもクリスマスもハヌカも正月も「神」とは深い由縁があり、どれも飾りには象徴的な意味が込められていた。日本でも、「寿」の字や鯛などを切りぬいた和紙を神棚に下げたり、藁を縒った太いしめなわや清楚なひらひらした和紙「しで」を垂らす、さかき、門松、そしてオタフクや宝船などのハッピーシンボルはまだ健在だろうか?
日本の正月の飾りは簡素にしてモダン、世界でも稀な美しい工芸品と思う。対照的にアメリカのデコレーションは派手で画一的でひたすら明るい。ハロウィーン、感謝祭、そしてクリスマスを同じ言葉「ハッピーホリディ!」で祝うように、アメリカの飾りは誰もが一緒に楽しみ、通りかかる人々まで呼び込んで大勢皆で祭りを共有できる素敵な習慣と言えないだろうか。


Akemi Nakano Cohn
jackemi@rcn.com
www.akemistudio.com
www.akeminakanocohn.blogspot.com

明美コーン

コーン 明美
横浜生まれ。多摩美術大学デザイン学科卒業。1985年米国へ留学。ルイス・アンド・クラーク・カレッジで美術史・比較文化社会学を学ぶ。 89年クランブルック・アカデミー・オブ・アート(ミシガン州)にてファイバーアート修士課程修了。 Evanston Art Center専任講師およびアーティストとして活躍中。日米で展覧会や受注制作を行なっている。 アメリカの大衆文化と移民問題に特に関心が深い。音楽家の夫と共にシカゴなどでアパート経営もしている。 シカゴ市在住。

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