記者の目 / 開発・分譲

2010/3/3

社宅を“1棟まるごとリノベーション”

リビタ、内装を自由に選べる「アライエ等々力」をプロデュース

 東京急行電鉄 (株)初の1棟まるごとリノベーション分譲マンション「アライエ等々力」(東京都世田谷区、全18戸)が、このほど竣工した。“1棟まるごとリノベーション”のリーディングカンパニーである(株)リビタが、これまで培ってきた事業ノウハウを生かして企画・設計・販売を手がけている。  ストック活用へと目が向けられるなか、同物件は、立地、価格、間取りにも妥協したくない人や、自分らしい暮らしを実現したい人から高い人気を集めた。見学会の様子をレポートする。

「アライエ等々力」外観
「アライエ等々力」外観
左の壁には、自由に絵を描いたり、画鋲を刺すことができるボードを設置。キッチン上部には埋め込み式のエアコンを備え付けている
左の壁には、自由に絵を描いたり、画鋲を刺すことができるボードを設置。キッチン上部には埋め込み式のエアコンを備え付けている
トイレの壁も自分好みの色に変更できる
トイレの壁も自分好みの色に変更できる
室内も好きな色を配色。フローリングはアッシュの無垢材を使用している
室内も好きな色を配色。フローリングはアッシュの無垢材を使用している
全戸オール電化となっており、エコキュートを採用
全戸オール電化となっており、エコキュートを採用
カーシェアリングも導入。1棟まるごとリノベーションでは初
カーシェアリングも導入。1棟まるごとリノベーションでは初

リノベーション住宅推進協議会会員企業間コラボで実現

 「アライエ等々力」は、従前は築17年の大手生命保険会社の社宅。元々取り壊して戸建てを建てる前提で東京急行電鉄が取得したが、市況の変化や既存建物の状況から、事業性を再検証し、ノウハウを持つリビタに企画・設計・販売を依頼し1棟丸ごとリノベーションマンションとして分譲した。

 東急大井町線「尾山台」駅徒歩13分、東急東横線「自由が丘」駅徒歩19分に立地。鉄筋コンクリート造壁式構造3階建て、敷地面積902.41平方メートル、延床面積1,377.63平方メートル。間取りは1LDK~3LDK。
 同プロジェクトは第三者機関による建物調査診断「デューデリジェンス」を行ない、建物全体の大規模修繕や共用部のリニューアルを実施。建物は中古住宅の性能評価で「A」判定を取得している。
 また、全戸が、リノベーション住宅推進協議会が定める「優良リノベーション住宅I型」基準に適合する。同協議会では、独自に品質を確保するた めの統一基準づくりを進めているが、第一段階として、区分所有マンション専有部の基準(I型)を設定。この統一基準を満たす住宅は、「適合状況報告書」が 発行され、品質確保と情報開示で消費者に安心感を提供する仕組みとなっている。

 同プロジェクトでは、中古マンションのリノベーション事業を展開する(株)インテリックス(東京都渋谷区)の子会社(株)インテリックス空間設計(東京 都目黒区)が販売するマンションリノベーションパッケージ「リノヴェックス ネクスト」を採用。「リノヴェックス ネクスト」は、国土交通省「第二回超長期住宅先導的モデル事業」に中古マンション専有部分改修で初めて採択された「リノヴェックス―インフィル超長期システム」で採用されている工法。
 スケルトン状態の専有部に、システム化された専用パネルで内箱をつくる「下地インフィル」と、入居者の好みに合わせて内装を選べる「表層インフィル」の 二重のインフィルを重ね合わせている。床と天井の施工後に間仕切りパネルを取り付けるため、ライフステージの変化に合わせて間取り変更が可能で、将来の間仕切り壁の移動も最小限の工事で対応できる。

 天井・床・壁の6面を断熱材で包み込む「6面断熱」は光熱費を節約でき、CO2排出量削減にも貢献できる。さらに、室内の遮音性能も高められるので一石二鳥となる。

購入者の多くがフリープランを選択

 専有部は、こだわりと予算に応じて選べる3つの設計コースを採用。標準的な仕様の「スタンダードコース」のほか、間仕切りや素材などを変更できる「カスタムコース」、水回りなど も自由に変えられる「自由設計コース」を用意。18戸中12戸の購入者が「カスタムコース」および「自由設計コース」を選んでおり、平均200万円の費用をプラスして、自分好みの住まいにしている。

 専有部を見学すると、居室やトイレの壁などに、紫、水色、黄緑など好みの色を配しており、各戸で個性的な空間が広がっていた。床材もパイン材やウイスキーの樽材など、さまざまなテイストに変更し、同じような間取りでも部屋の印象がガラリと変わる。
 カスタム仕様の部屋では、リビングスペースに自由に絵を描いたり、画鋲を刺すこともできる壁を設置。大きなホワイトボードのように活用できるため、子供のいる家庭などに喜ばれそうだ。
 オプションで、床暖房や埋込み式のエアコンを設置する人も多く、冷蔵庫置き場の寸法を細かく指定してくる人もいるなど、こだわりの強い人が多かったという。

 また、同プロジェクトでは、カーシェアリングを導入。近隣住民も利用可能なオープン型で、すでに購入者のうち8組から申込みがあったという。専用のカードを使い、同物件をはじめ、近所のステーション(カーシェアリングの利用場所)も利用することができる。
 さらに、共用部では、電気機器室だった空間をトランクルーム兼フリースペースにして、入居者向けにワークショップを開催するなど、コミュニティのきっかけづくりを行なっている。

“自分らしい暮らし”が魅力

 同物件は、自分らしい暮らしを実現できる商品性が人気となり、2009年夏に最高倍率12倍、平均倍率約5倍で全戸が即日完売した。販売価格は 2,998万~4,558万円。「購入者の多くは、30歳代のポスト団塊ジュニアと団塊ジュニアの世代。立地の良さと併せ、価格が同じグレード の新築マンションの7~8割という値ごろ感から、購入された方が多い」と、東京急行電鉄住宅事業部ア・ラ・イエチームチーフプランナーの市川岳志氏は話す。

 新築に比べて中古は、建物の劣化や品質への不安が原因で、これまで避けられる傾向にあったが、最近では、優良なリノベーションの登場により無理なく自分らしい暮らしを実現できる選択肢として、積極的に選ぶ人も増えてきているという。
 住まいとしての機能・価値を向上させることで、資産価値まで高められるようになってきたリノベーション。建替えに比べて、大幅に廃棄物量、CO2排出量を削減し、環境にも貢献できるため、今、注目されている。
 「アライエ等々力」のように、今後、きちんと再生させたものが高く評価される仕組みが定着すれば、より本格的な「中古の時代」が来るのではないだろうか。(さ)

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