記者の目

2010/12/1

「家」を作る工場を見に行こう!

精密、スピード、環境配慮を実現する工場

 購入金額が高ければ高いほど、その商品がどのように作られているのか知りたくなる。住宅しかり、自動車しかり。  先般、(社)プレハブ建築協会が主催した工場見学会で、東北セキスイハイム工業(株)の生産拠点である、東日本工場(宮城県亘理郡)を訪ねた。

外壁パネル接合のようす。専門スタッフが丁寧に作業を進める
外壁パネル接合のようす。専門スタッフが丁寧に作業を進める
ほぼ完成の段階。この後、キッチンやバスなどの設備を組み込んでいく
ほぼ完成の段階。この後、キッチンやバスなどの設備を組み込んでいく

 同工場は、1976年に積水化学工業(株)武蔵工場傘下の「セキスイハイム」組立工場として設立され、その後、新商品の組立工場を新設しながら、98年には環境マネジメントシステム規格である「ISO14001」を、99年には「ISO9002」の認証を取得するなど、技術面と環境面で進化を続けてきた。
 現在は鉄骨系住宅と木質系住宅のラインを持ち、東北エリア全般の生産を担当。年間で約2,000棟を生産。2009年にはセキスイハイム東北グループ傘下に改組し、社名を東北セキスイハイム工業(株)に変更している。

工場生産のメリットは「精密」と「短時間」

   同社の住宅は、工場生産したユニットを現場で組み立てる「ユニット工法」で知られている。年間で約1万2,000棟の住宅を販売しているが、そのすべては全国に8ヵ所ある工場で生産されている。

 工場で生産するメリットは大きく分けると2つある。一つはコンピューターを使用して工作するため、部材等を完全に管理することができ、精度の高い商品を作れるということ。同社の主力商品「あったかハイム」などは床下で蓄えた熱を放出して家全体を暖める仕組みのため、気密性の高さが問われるが、こうした課題も難なくクリアできるのだ。

 また、徹底した部材管理は無駄を省き廃棄物を減らすこともできる。同社では家作りにおける過程で発生した廃棄部材の100%再生に成功しており、業界で初めて生産および建築現場でのゼロエミッションを実現している。

 もう一つのメリットは、天候に左右されずに工事を進められるということ。結果、工期は短くなり、部材が雨風にさらされることもないため、変形によるズレなども生じない。家作りは着実にスピーディに進んでいく。ちなみに標準の現場工期は約40日程度。大規模な工事は近隣に住む人に少なからず迷惑をかけてしまうが、それも短い期間とすることができる。

工場を公開。実際の工程が確認できる

 住宅が精密にスピーディーに完成するとはいっても、やはり自分の家がどんな風に作られているのかは気になるところ。同社では定期的に、「工場見学会」を開催することで、こうした気持ちに応えているのだ。それでは、以下で、実際に見学した東日本工場の木質系住宅の工程を追ってみよう。

 生産ラインは全部で8工程。まず、厳選された木材に防腐剤を処理するなどの木材加工を行ない、次にパネルの組立てに移る。特に精度が求められる部分なので、コンピューター制御による自動釘打機を使用して作業が行なわれる。
 続いて、構造体総組を実施。壁パネルと床パネルが組立式で垂直に固定されユニットが完成する。この段階ではプロフェッショナルな専門スタッフによる接合が行なわれる。
 その後、木材への細繊維グラスウールの固定、専用ブースでの外壁と塗装が行なわれ、キッチン、バス、収納といった設備機器の組み込みや配線工事が施される、という流れだ。
 最後は、完成検査。1ユニットに250以上のチェック項目があり、検査員がチェック。合格したユニットだけが出荷されていく。

 とはいえコンピューターが100%確実とは限らない。エラーが発生するリスクもあるからだ。しかし、同工場では、特に精密さが求められる過程で「人の目」による力が工程のところどころ発揮されていた。こうした光景を公開することは、住宅購入者に安心感を与えるのではないだろうか。

品質を体感できる「見聞館」を併設

 さらに同工場の敷地内には、住宅を建てるにあたり注意すべきポイントをわかりやすく体験できる「なるほど見聞館TOHOKU」を07年にオープンしている。

 ここでは住宅に関するいろいろな疑問が解消できるよう、多数の設備を設置している。セキスイハイムとツーユーホームの構造をスケルトンで見ることができるコーナーのほか、東北の地形や気温、湿度や風・雪などの気候についての学習スペースも設けられており、「東北に適した家」を建てるためのポイントを整理することができる。
 また、高気密・高断熱性能といった、湿度や換気などの室内空気環境を体感できる施設もある。
 
 この中で最も興味深かったのが、東北初で初めて導入された地震体感シミュレーション「グラット」。最近発生した大規模な地震の揺れを体感できる設備で、阪神・淡路大震災や新潟県中越地震などを縦揺れ・横揺れから強度まで正確に再現できるもの。シミュレーションではポールに捕まり、かがんだ状態で揺れを体験するが、「阪神・淡路大震災」は明け方に起こったため、寝ている人が多く、揺れをより強く感じたとのこと。「耐震性」がいかに大切かを実感した。

住宅の品質を上げ、家族が住みやすい住宅を作っていく

 今後、日本の人口は減少の一途をたどると予測されているが、住宅購入者の減少は住宅メーカーにとって重大な問題だろう。
 しかし、注文住宅については2000年に入ってからも、だいたい39万戸(国土交通省:建築着工統計より)ほどで推移しており、不況の中でも健闘していることがわかる。
 各住宅メーカーが質の向上に真摯に取り組み、新たなニーズを掘り起こしてきた成果ともいえるだろう。

 今後、ライフスタイルや家族構成はますます多様化していくだろう。ハッとするような戸建て住宅が登場するのが楽しみだ。(中)

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