記者の目 / その他

2013/7/1

住まいづくりフェアで感じた、“今、ユーザーが求めているものとは”

「自分の趣味を家でカタチにする」動きに注目!

 「朝日 住まいづくりフェア2013/スマートハウスEXPO2013」(主催:朝日住まいづくりフェア実行委員会・朝日新聞社/スマートハウスEXPO実行委員会)が5月24日からの3日間、東京ビッグサイトで開催された。ハウスメーカー、工務店、住宅設備・建材メーカー、不動産会社などが集結する住まいの総合展示会。今年は過去最多となる約300社が出展と聞き、訪れたところどうも様子が違う印象…。  キーワードは、「一般消費者の目」。  一般の消費者が今、求めているものは何だろうか。  彼らがフェアに何を求め、何を知りたくて足を運んでいるのだろう。  少し探ってみた。

来場者数は、3日間で、3万2
来場者数は、3日間で、3万2
263名
263名
土日の家族連れの一般客を狙った会場入口脇にあるのベビーカー。ファミリー連れにも安心のカート揃え
土日の家族連れの一般客を狙った会場入口脇にあるのベビーカー。ファミリー連れにも安心のカート揃え
住まいづくり・不動産投資セミナー「どうする消費税 いま買う?どうすればいいの?増税前の住宅購入術」((株)アドキャスト代表取締役の藤森哲也氏)
住まいづくり・不動産投資セミナー「どうする消費税 いま買う?どうすればいいの?増税前の住宅購入術」((株)アドキャスト代表取締役の藤森哲也氏)
住まいづくり・不動産投資セミナー「相続税大増税時代の賢い評価減・節税対策」(NPO法人地主家主協会理事長 岡田光雄氏、フジ税理士法人 税理士 高原 誠氏)
住まいづくり・不動産投資セミナー「相続税大増税時代の賢い評価減・節税対策」(NPO法人地主家主協会理事長 岡田光雄氏、フジ税理士法人 税理士 高原 誠氏)
各ブースでも、ミニセミナーを実施しているのが印象的
各ブースでも、ミニセミナーを実施しているのが印象的
「住宅リフォームEXPO」では、担当者に相談する姿が多く見られた
「住宅リフォームEXPO」では、担当者に相談する姿が多く見られた
「自分でも簡単に塗れる!!」「壁に塗るだけで健康になる住まい」がキャッチの、(株)ビーテックの塗り壁商品「しあわせ塗り壁」
「自分でも簡単に塗れる!!」「壁に塗るだけで健康になる住まい」がキャッチの、(株)ビーテックの塗り壁商品「しあわせ塗り壁」
フェアのクローズアップ企業の一つ。スウェーデンハウス(株)のブースは北欧の雰囲気たっぷり
フェアのクローズアップ企業の一つ。スウェーデンハウス(株)のブースは北欧の雰囲気たっぷり
(株)サイエンスは、ビルトイン型(内蔵型)/据置型の超微細気泡温浴「マイクロバブル」を展示
(株)サイエンスは、ビルトイン型(内蔵型)/据置型の超微細気泡温浴「マイクロバブル」を展示
隣接イベントスペース。隣はカフェスペース
隣接イベントスペース。隣はカフェスペース
「これから塗ります!」@リノベーションパビリオン
「これから塗ります!」@リノベーションパビリオン
あっという間に…!第一号のペンキ塗り体験
あっという間に…!第一号のペンキ塗り体験
次年度の開催は、5月30日(金)から6月1日(日)まで
次年度の開催は、5月30日(金)から6月1日(日)まで
まちに生きる人々の幸せを育む場所として、6月21日に誕生した「マークイズみなとみらい」
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 事務局によれば、今年度の来場者数は3日間で3万2,263名と、昨年の3万3,009名よりやや落ちたものの、一般の来場者数は3日間で2万2,068名と、昨年を1,000名以上上回る盛況ぶりを見せた。
 初日にいたっては、住宅業界関係者8,273名に対し、一般入場者数が4,051名と半数近くを占め、「初日は業界関係者・報道関係者向けの日」の固定概念を覆すような数字を示した。

 初日の朝から開催された各種専門性の高いセミナーには、意外にも高齢者の姿も多く見られた。と思えば、一方で、商談をしているスーツ姿のビジネスマン。その横を早足で通り過ぎる若い女性の姿もあり…。
 改めてこのイベントの層の厚さを実感した。

 会場を歩いて、昨今のユーザーニーズの高まりを感じるような、いくつかの催しに注目した。紹介しよう。

注目度大!その(1)「消費増税」

 消費増税前に駆け込み需要を狙う業者。対し、慎重極める消費者。
 そんな消費者にとって、参考になるのが、専門家たちによるセミナーや個別相談会だろう。
 会場内の5つのスペースで、聴講無料で開催された「住まいづくり・不動産投資セミナー」でもひときわ盛況だったのが「どうする消費税 いま買う?どうすればいいの?増税前の住宅購入術」。
 (株)アドキャスト代表取締役の藤森哲也氏による講演で、気になる「増税タイミングの経過処置」や「増税と住宅ローン減税のスケジュール」から、「いつ購入すべきか」に至るまで丁寧に解説していた。テレビでも雑誌でもない、生の声で入る情報は、消費者にとっては、一際生きた情報として役立つことだろう。

注目度大!その(2)「相談窓口」

 住まいづくりあるいはリフォームを考えている消費者に向けて、商業的な立場ではなく、中立的なアドバイスをしている企業や団体がある。こうした組織はありそうでなく、あったとしてもお金の流れがわかりにくく、エンドユーザーには、信用面で不安がつきまとう。

 今回の展示会で出展をしていたネクスト・アイズ(株)は、消費者に対して、第三者の立場で、不動産資産や、住宅資産に関しての公正、中立なアドバイスを行なう企業だが、会場中央に総合窓口と相談スペースを設け、そのバックサイドで、同社に登録している会社をまとめて紹介していた。しかし、広い展示スペース内のどこを探しても、ネクスト・アイズという会社名は一切見当たらない。あくまでも、企業と消費者のハブに徹底している様子。会場内では、パネル展示されている企業の中から、興味を持った企業を見つけた人々が、中央の相談スペースで、担当者に相談をしながら、ネクスト・アイズ社の客観的な声を聞いているようだった。こういうスタイルでの家選びの提案の仕方は、消費者にとって安心だろう。
 後日、ネクスト・アイズ社を取材すると、成約後に、企業からの報酬は一切受けていないという。そうすることで企業側の立場になることを避けるためで、相談者からの相談料でビジネスが成立しているという。それにより、消費者は安心して相談をし、自分の理想に合った住まいづくりを実現できるという仕組みだ。

 偶然にも取材の同日に、エステティシャンの知人が会場にいた。こういう場にエステティシャンが、と意外だったが、聞いてみると、自宅兼用のリラクゼーションサロンを建てる計画があり、理想の住まいの実現のためのヒントを探しに来ていたとのこと。無料マッチング企画にエントリーをして、3社のプレゼンを聞くのも目的の一つだったと言う。
 
 「住宅メーカーや建築家だけでなく、基礎や構造の部分や、耐震の最先端技術、雨戸、キッチンなどの最新設備の多さに驚きました!イイなと思える物もいくつかあり、家づくりの参考になりました。一度にいろんなことに触れられるので行って良かったし、とても楽しかった。昨年も行きましたが、昨年はここ!と思える住宅メーカーに出会えなかったけど、今年は違ったんですよね。マッチング企画はとても役に立ちました」とのこと。

注目度大!その(3)「自分らしい住まいづくりの実現」

 やはり、一番の注目はここだろう。
 自分の趣味の住まいづくりを、どう実現させていくのか。そのヒントが詰まった展示会だったといえる。
 しかも、それが商品やサービスなどに細分化されている。
 たとえば、(株)ビーテック(東京都大田区)の商品、「しあわせ塗り壁」。この商品は、現代人が不足しているミネラルと酵素に注目し、「ケルザイム」(ケルプ(海藻)+エンザイム(酵素))を主成分にした壁材を使用している。珪藻土と比較すると、調湿効果や調温効果に優れているのだという。この企業は、「食&住環境改善セミナー」も実施している。
 また(株)サイエンス(大阪市淀川区)が展示していたのは、「サイエンスマイクロバブルトルネード」という商品。直径わずか1/1,000mmという超微細な気泡を作るもので、エプロンのついている浴槽ならどんなものにも取り付けが可能だという。極端に小さな気泡が弾けることで、これを取り付けた浴槽のお湯はマイナスイオンがたっぷりになるそうだ。バスタイムを充実させたい人、リラクゼーション目的に比重を置いて住まいづくりをしたい人には、いいのかもしれない。エステ気分が味わえそうだし、体も温まりそうだ。

 最近のバス関連商品の多くが、「既存の商品に簡単に取り付け可能」といったものが多く、「今よりももっと快適なバス空間を作りたい」という女性たちのニーズをうまく汲み取っているなぁという印象だ。
 ここ数年流行りの水素水サーバーや、浄水フィルター付のシャワーヘッドなども、年々進化しており、しばらくこういうニーズは続くのではないだろうか。

 その他、セカンドライフのイギリス流バックヤードスタイルを提案する相陽建設(株)(相模原市緑区)が展示していた引退後の生活を豊かにするための、趣味の空間を提案する家づくりも、多くの人で賑わっていた。シニア向けだとのことだが、こだわりを持った暮らしを追求する中年層も十分ターゲットに入ると思われた。庭と家との一体感が素晴らしかった。
 展示された家の中に入ると、ふっとイギリスの田舎の家におじゃましたような錯覚になり、夢も膨らむ。これぞ、展示会の魅力、なのだろう。

おまけ:注目!消費者の引き寄せ方の巧さ

 このように大きなイベントだと、求められるのは、見せ(魅せ)方といえるだろう。  今回、ブースの作り方や、引き寄せ方が巧妙だと思えるところがいくつかあったので紹介したい。

 まず、「住まいづくりのcafé & gallery」。広々とした空間で、通行人のほとんどが「ここはカフェかしら」と立ち止まったことだろう。が、実はそこではミニセミナーを隣で行なうちょっとしたスペース。たまたま通った時は、インテリックス住宅販売による「大切なのは物件選び!その秘訣を教えます」を行なっていたが、思わず足を止めて聞き入ってしまった人、多いのではないか。
 通路を挟んだ向かいには「リノベーションパビリオン」があり、「ワークショップ」スペースを通りがかると、「ペンキを塗りませんか」と担当者から声をかけられた。「ペ、ペンキ塗りですか」。
 意外と楽しそうなので、人生初のペンキ塗りに挑戦することに。ちょうど近くで取材中だった編集者にも声をかけ、二人でエプロンにビニール手袋姿で、無心に壁にペンキ塗り。…気づけばいつの間にか、人だかり。
 ペンキ塗りという作業は、実はやってみるとこれまたなかなか面白い。まっさらだった壁が、自分のハケ次第で、色使いで、いかようにも変化していく。まさに壁そのものに愛着が湧く。家族全員でやればなおさら楽しいことだろう。
 作業終了後、ペンキ塗りを教えてくれた(株)NENGOの女性と名刺交換すると、頂戴した名刺の肩書きは、Colorist!
 ここにいると、何か新しいことをしたくなる。そう思わせるサービスや言葉があった。ここは、住まいづくりの楽しさの潜在意識を掘り起こす場でもあったのだ。

ショッピングしながら、リフォームを買う時代がやってきた!?

 さて、6月21日には、横浜に新しい商業施設「マークイズみなとみらい」が開業した。話題となっているのは、その中に東京ガスが商業施設内初となるショールームをオープンし、古民家に最新の床暖房を入れた展示や、バスルーム用のミストサウナを体験できるコーナーなどを設置し、立ち寄り客の取り込みを狙っている点。消費増税前に活況となっているリフォーム事業に力を入れる企業も多く見られ、ますます住まいづくりの提案は、さまざまなシーンで展開されていくことだろう。
 その一つに、今回のような展示会があるのだが、消費者の目も肥えてきているのも事実。厳しいし、鋭い。そして早い。それに、業界がどう対応していけるか、なのだ。

 これからも業界の動きに注目していきたい。(yukizo)

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