記者の目

2014/9/26

地域の風物詩になった「ふるさとの祭」

ポラスグループの地域貢献活動 「南越谷阿波踊り」

 埼玉・千葉を地盤に不動産事業や住宅建設を総合的に手掛けるポラスグループが、全面的にバックアップしている「南越谷阿波踊り」。住宅・不動産業界を代表する地域貢献活動とも言われている大規模なお祭だ。今年も8月22~24日に行なわれ、30回目の節目を迎えた。歴史を重ね、「徳島」「高円寺」と並び『日本三大阿波踊り』と呼ばれるようになり、今年は70万人の来場者を集めた。これだけ大規模になった今でも、グループの全社員が何らかの形で参加しているという。

南越谷のまちの周辺道路で行なわれる「流し踊り」は、沿道で多くの人たちが見物する
南越谷のまちの周辺道路で行なわれる「流し踊り」は、沿道で多くの人たちが見物する
舞台上で息の合った踊りを披露する「舞台踊り」も見どころのひとつ。本場・徳島などから招待した連も
舞台上で息の合った踊りを披露する「舞台踊り」も見どころのひとつ。本場・徳島などから招待した連も
埼玉県知事の上田 清氏から、阿波踊りを通じたまちの活性化に寄与したとして吉澤氏に表彰状が贈られた
埼玉県知事の上田 清氏から、阿波踊りを通じたまちの活性化に寄与したとして吉澤氏に表彰状が贈られた
「同じ阿呆なら踊らにゃ損!」というわけで、見物客が飛び入りで「流し踊り」に参加。
「同じ阿呆なら踊らにゃ損!」というわけで、見物客が飛び入りで「流し踊り」に参加。

創業者が発案。「越谷を“ふるさと”にしたい」

 「南越谷阿波踊り」を発案したのはポラス(中央住宅)の創業者である故・中内俊三氏。田園風景だった越谷のまちで住宅を分譲していた同社では、当時から住民同士のコミュニティ醸成の一環として盆踊り大会や運動会などを分譲地ごとに主催していた。時が経ち、徐々に分譲地が増え、古い分譲地では自治会も立ち上がり、自治会主催での盆踊り大会も登場してきた。

 「ただ、お盆の時期には多くの住民が帰省してしまって、お祭がイマイチ盛り上がりに欠けるというようなこともあったようです」と語るのは、同社経営企画室参事の丸岡 淳氏。そもそも越谷はベッドタウンとして開発されたまちであり、地方から東京で働くために出てきた人が移り住むケースが多く、地元意識やふるさと意識といったものが醸成しにくい地域でもあった。今でも、お盆明けに行なうのは、その時の名残だという。

 そうした状況の中で、中内氏が考えたのが「地域を象徴する大きなお祭で、地域全体が参加できるようにすることが大切」ということ。「越谷の名物」をつくり出すことで、故郷を離れて越谷に移り住んだ人たちに、地元意識・ふるさと意識を持ってもらいたいという思いで中内氏の故郷・徳島の阿波踊りを越谷に持ち込もうと考えた。

最初は苦労の連続。地元の協力を得て開催へ

 第1回開催までの道のりは険しかったという。「ノウハウもなければやったこともない。そもそも、なんで徳島の阿波踊りを埼玉の越谷でやるのか、というような反論が多かったようです。道路の使用許可もなかなか下りず、構想から第1回の開催まで2年ほどかかりました」(同氏)。

 そこで中内氏に協力したのが当時商店会長などを務めていた吉澤勝治氏。現在の南越谷阿波踊り実行委員会の委員長だ。吉澤氏は商店会や地域の自治会との調整を担うなど、開催に向けて大きな力になったという。また、中内氏は本場・徳島の阿波おどり振興協会にも協力を要請し、徳島から越谷に踊りの指導者を呼び寄せるなど、多方面からの協力を仰いだ。
 そうして1985年に第1回の「南越谷阿波踊り」が実現。来場者は約3万人だった。

住民手づくりの「お祭」

 こうして始まった「南越谷阿波踊り」。当初はポラスグループが主体となって運営していたが、現在は越谷市や消防、警察、自治会などで構成する「実行委員会」が意思決定機関としてあり、ポラス社員を主体に構成する「南越谷阿波踊り振興会」が現場の実行部隊として活動する。ポラスグループ社員は「踊り手や舞台裏で支える事務方、警備係など、全員がなんらかの形で参加しています。このほかにも地域の自治会をはじめとして多くの人が参加する、地域の人たちが手づくりで開催する、まさに“地域のお祭”と言えます」(同氏)。こうした理念から、以前大手新聞社から冠スポンサーの申し出があったが断ったこともある。

 阿波踊りでは、「連」と呼ばれる集団が、メインストリートを踊り歩く「流し踊り」とコミュニティセンターのホールで踊りを披露する「舞台踊り」を披露。ポラスの社員はもちろんのこと、大工職人や取引先、地元企業、全国企業の越谷支店、地元住民、地元にある独協医大の医師や看護師、職員など、さまざまな人たちが「踊る阿呆」となり、祭を盛り上げる。

 30回の記念となった今年8月の阿波踊りには70万人、越谷市の人口の2倍以上もの「見る阿呆」が集まり、JR「南越谷」駅と東武スカイツリーライン「新越谷」駅の乗降客数も、例年よりも多かったそうだ。30年にわたる地域貢献の取り組みに対して、埼玉県知事の上田 清氏から「県知事賞」の表彰も受けた。

 また、ポラスグループでは社会貢献の一環として、社員有志のボランティアが宮城県名取市の仮設住宅への慰問も毎年行なっている。仮設住宅の集会所や敷地内で阿波踊りを披露し、仮設住宅で暮らす被災者に楽しいひと時を提供している。「毎年楽しみにしてくれている方もいるほどです。近隣の仮設住宅の方など、大勢の方がいらっしゃいます」(同氏)。

子供が親となり、その子供を連れてくる

 「30年が経過し、子供の時に参加した人が、今は別のまちに住んでいても、今度は親となって子供を連れてきてくれるようになりました。当初の“越谷をふるさとにする”という目的は達成できたのかもしれません」(同氏)。

 こうした活動は地域に密着して事業を展開してきた同社ならでは。今でこそ住民のコミュニティ活動を重視してさまざまな活動に取り組む動きが業界全体で活発だが、30年前に発案し、こうして地元意識の希薄なベッドタウンを多くの人の“故郷”にしたというのは特筆できる。地域とともに歩む不動産業の一つのあり方として参考になるのでは。(晋)

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