ひとり暮らし女性と子育てママがターゲット
PC工法（壁式プレキャスト鉄筋コンクリート造）のパイオニアとして数多くの集合住宅を企画・設計・施工している大成ユーレック（株）（東京都品川区、代表取締役社長：八田敬明氏）。同社は今年1月、女性社員の視点と発想を生かした新コンセプト「ECLAT（エクラ）」と「DOUCE（ドゥース）」を立ち上げた。「女性目線」「ママ目線」を重視した設備や空間づくりについて、このほど開設したモデルルームで考えてみた。
◆住まいに対する不満や要望を具体化
「人口減で先細りしていく賃貸市場において、他社との差別化を図ることが生き残りの策。ユーザーニーズが多様化・複雑化している中、そうしたニーズに対応できるさまざまな引き出しを増やしていくことが求められています。その一つとして、まずは女性にターゲットを絞り、“女性に選ばれる部屋づくり”を目指すこととしました」と話すのは、同社営業統括部営業推進部長の本堂健一氏。
そこで昨年、女性社員や子育て真っ最中のワーキングマザーを集め、プロジェクトを発足。約1年をかけ、「ひとり暮らし女性がキレイに輝ける理想の部屋」「共働き子育てファミリーをサポートする住まい」といったコンセプトをつくり上げた。
同社が企画・施工した賃貸マンション「エルズレジデンス小竹向原」（東京都練馬区、総戸数33戸）の2戸を借り上げ、「ECLAT」「DOUCE」の2つのコンセプトを再現。「女性目線」「ママ目線」を重視した設備や空間づくりを、モデルルームに反映させた。
◆住まうことで「女子力アップ」の部屋
主に単身女性をターゲットにした「ECLAT」のモデルルームはスタジオタイプで、45.27平方メートルの1LDK。家具で仕切ることでプライベート空間を確保するなど、自由にアレンジすることができる。
「友達を呼んでホームパーティをしたい」という要望に応え、ワイドサイズのキッチンを採用。3コンロ付きのシステムキッチンは、楽しく料理ができる広さと機能を併せ持っている。しっかり料理ができるキッチンなので、美容や健康のため食事に気を遣う女性にもうってつけだ。
また、バスタイムは働く女性にとってリラックスできる大切な時間。「ゆっくりお風呂に入りたい」という意見を取り入れ、足を伸ばせる広い浴槽を採用。半身浴やマッサージが楽しめる空間となっている。
圧倒的に要望の多かった収納に関しては、玄関にウォークインタイプのシューズクローゼットを設置。靴や傘だけでなく、ゴルフバッグやスノーボードなども収納できる。そのほかにも、自由な収納スペース「マルチストレージ」や、ニッチな空間を利用した「ウォールニッチ」は、雑貨を置いたりマガジンラックとしても使え、インターホンも収まる仕様だ。
中でも、特徴的だったのは、玄関とつながっているアレンジスペースの「DOMA（土間）」。観葉植物を飾ったり、テーブルとイスを置いてカフェ風にしたりと、さまざまな使い方ができそうだ。また、廊下部分に設えたガラスブロックは、目線は遮られるが人の気配は感じられるという、ひとり暮らし女性向けの配慮。随所に「女性目線」の工夫が施されている。
◆ママも子供も大満足の工夫
一方、子育てファミリー向けの「DOUCE」は、54.44平方メートルの2LDKタイプ。ペニンシュラタイプのオープンキッチンと、可変間仕切りを開けば約14帖もの広さになるリビングダイニングスペースが特長の住戸だ。ママは料理をしながら子供の様子を常に見守ることができ、家族みんなが集えるスペースとなっている。
こちらのタイプにも収納が豊富に設けられている。リビングとベッドルーム、どちらからも使えるウォークスルータイプの「ファミリークローゼット」をはじめ、置き場所に困る掃除機などを収納できる「マルチストレージ」、お気に入りの写真や雑貨を飾ることのできるカウンター付きの「廊下収納」なども充実させた。
忙しいママに嬉しいちょっとした気遣いも多い。エントランスには姿見のほか、座って靴が履ける格納式ベンチやコートフックを設置。洗濯した衣類をいったんハンガー掛けできるランドリーラックも備えた。雨の日や花粉の多い季節に大活躍の室内物干しも必須アイテム。また、トイレは手洗いキャビネットも設置、清潔で子供にも使いやすい仕様となっている。
◆賃貸住宅で夢のある住まいを！
「今は手探りでニーズを探っているのが本音のところ。女性をターゲットにしたモデルルーム展開は初の試みなので、反響を見つつ、賃貸オーナーにプランを提案していきたいと考えています。設備のフル装備は難しいかもしれませんが、リフォームの際に部分的に導入してもらうなど、柔軟な姿勢で対応していきたい。夢のある賃貸住宅を供給し、ユーザーからの希望があれば、モデルルームでの“1泊体験”なども考えています」（本堂氏）。
同社は2月13・14日に一般向けのモデルルーム見学会を実施。32名の来場者があり、評判は上々だったという。今後3年間で、約1,000戸の女性向けコンセプト住戸を供給していきたい考えだ。
近年、女性の社会進出が活発となり、若い世代でのひとり暮らしが増えている。自立した女性は物件を見る目も厳しく、住まいに対する要望も高い。一方、ある調査によると、今や共働き世帯数は片働き世帯に大きく差をつけているという。働くママにとって、ストレスを溜めずにゆとりある子育てができる住まいは、日々の生活の中で安らぎを得ることのできる空間となるのではないだろうか。
そうした女性をターゲットにした同社のコンセプトがどこまで受け入れられるのか、今後の動きに注目したいと思う。（I）
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