“次世代”型販売現場をレポート
新築住宅における販売手法といえば、モデルハウスやモデルルームに来訪をうながし、見学してもらう。パンフレットや概要、ちらしなどを渡し、口頭で説明し…といった流れで進められるのが通常だ。昨今、このながれに変化が起きつつある。住宅の販売現場でVR(仮想現実)の活用が進んできているのだ。







◆未完成の分譲マンションを“体験”
当社で発行している月刊不動産流通2017年2月号では、「不動産テックが営業現場を変える」を特集した。同誌で紹介したとおり、革新的な技術が、住宅の販売現場で活用され始めている。
そうした、活用が進む技術の一つが“VR”だ。コンピューターを用いて人工的に立体的な環境を作り出し、その世界を体感するシステムである。
(株)ワンダーリーグ(東京都新宿区、代表取締役:北村勝利氏)ではこのほど、マンションディベロッパー向けに「マンションVRカタログ」制作サービスの提供を開始した。建設に当たり作成する物件のCADデータを用いて3Dデータを作成。未完成物件を“仮想体験”してもらえるようにするというサービスである。記者は、これを体験してみた。
ヘッドマウントディスプレイにスマートフォンを装着し、ゴーグルをのぞくと、これから建設されるマンションの完成後の外観を見ることができるのである。それも、実際の物件を目の前にしているかのように。
前進のためのマークをクリックしていけば、マンションの周りを一周することも可能。見上げれば、そびえ立つマンションの上階をも確認することができる。
作り込んだデータなので、見た目のイメージは建物探検のゲームのような感じである。しかしそれでも十分に物件のイメージは把握できる。周辺状況についても近隣の建物のシルエットまで確認できるため、実際のまちの様子は十分に把握できる。
同社代表取締役の北村氏は、「その世界に“没入”できるのが、VRの最大の特徴。これまでのように『ジオラマを眺めて』という形ではなく、実物を疑似体験できる情報を提供することで、より完成後に近いイメージを抱いてもらうための手助けとなるはず」と語っている。
なお、作成データはfacebookのタイムラインに掲載することも可能。ヘッドマウントディスプレイがない分、没入感には欠けるが、建物を360度パソコンで確認することができる。
「マンションVRカタログ」は、すでに導入企業も出てきており、今後販売現場には急速に普及していきそうだ。
◆家族みんなで各地の展示場を“仮想体験”
VRを住宅の販売現場で活用する動きは、徐々に増えてきている。ヘッドマウントディスプレイを通して見るタイプ、パソコンやスマホなどで確認するタイプなどさまざまな手法で展開されているが、旭化成ホームズ(株)東京営業本部(東京都新宿区)では、体験型シアタールーム「THE VISION HEBEL HAUS」(同)をオープン。各地の展示場をこの1ヵ所で体験できる映像サービスの提供を開始した。
同社から受け取った招待状を持ってシアタールームを訪問すると、各地の展示場の住空間を現地に赴くことなく気軽に体験できる、というものだ。
ソファに着席すると、壁や天井など上下左右4方向に配置されたスクリーンに映像が映し出される。手のひらを画面に向けて動かして、操作するのはちょっとしたアトラクションのようで非常に面白い。特に子供は喜ぶことだろう。スクリーンに映し出された展示場を確認し、映像を動かせば、展示場空間を360度疑似体験することもできる。
「VRは専用ゴーグルが必要なため、着用している本人だけしか映像を見ることができない。そこで、見学者全員が同じ体験をできるよう、このようなシステムを設置しました」(同社東京営業本部 マーケティング室室長・野口豪之氏)
家探しを始めようかどうしようかと考えあぐねているような初期段階の方から、どこのハウスメーカーに依頼しようかと悩んでいる段階の顧客まで、さまざまな顧客を案内しているという。体験した人には大変好評だそうだ。
しかし、これは複数で体験できる楽しさがある一方で、VR特有の没入感、つまり本当にその場にいるような感覚はやや弱い。
しかし、同施設にはOculusRiftのVRシステムも用意。これは処理能力の高いパソコンを用いたシステムで、VRでいう所の“ハイスペック”版。ヘッドマウントディスプレイをのぞくと、同様に住宅の中を疑似体験できるのだが、その感覚、いわゆる没入感が非常に優れている。まるでその部屋の中央に位置し、部屋を見渡しているような形で体験ができる。映像も大変美しく、まるで映画の中に入り込んだかのようであった。
「シアタールームだけでは物足りない、さらに高度な疑似体験をしたいという方に、こちらも体験していただいています」(同社東京営業本部マーケティング室・山本大輔氏)。とのこと。両方のサービスを用意することで、楽しみも二重に用意。相乗効果も見込んでいるようだ。
なお、前出のワンダーリーグでも、OculusRiftのVRシステムで提供する体制を整備している。「データ容量が大きくなり、このシステムを利用するにはハイスペックなパソコンが必要となる」(北村氏)ことから、まずはスマートフォンを活用した「マンションVRカタログ」を、積極的にPRしていく考えだ。
そこにない建物を“体験”する、実際にはできあがっていない物件を“見学”する…。そういうことができるのは映画やゲームの世界だけだと思っていたが、すでに現実の商業世界で実現していることに驚いた。
現在は体験する方も、アミューズメント感覚で楽しんでいるが、そう遠くない将来、こうしたハードが各地の現場にあるのが当たり前となるのかもしれない。(NO)
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