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品確法等級3の標準試験体での検証成功/「木質構造建築物の振動実験研究会」が実大実験

阪神・淡路大震災相当の振動実験を行なった後の標準試験体
実験後の内部チェックでも、致命的な損傷はなかった
「耐震等級3の仕様であれば、変形・ねじれがあったとしても倒壊することはない」と語る、坂本委員長

 (財)建材試験センター内に設置された「木質構造建築物の振動試験研究会」(委員長・坂本功慶応大学理工学部教授)は23日、茨城県つくば市の独立行政法人土木研究所で、実大木造住宅の振動実験を行なった。

 同研究会は、施工方法・データの測定・解析方法など木造住宅の実大実験の標準化とコストダウン、データの蓄積と有効活用などを目的に、研究者や住宅供給者が中心となって2003年に発足。翌2004年度から2年間で、10棟の木造住宅の振動実験を行なってきた。
 このうち、参加企業の仕様を標準化した建物(標準試験体)による実験を5回実施。2004年度のバージョン1は、建築基準法・住宅の品質確保に関する法律(品確法)での耐震等級1相当のもので、振動実験により建物は大きくねじれて変形。1階部分が倒壊状態となった。2005年度のバージョン2は、耐震等級2の仕様で、振動試験後も接合部の緩みがあったが、倒壊の危険性はなかった。今回は最高等級となる等級3の試験体を準備。3年間の実験で、等級1から3までのデータを整備し、今後の耐震構造設計法の検証に生かしていく。

 実験ではまず、阪神淡路大震災の揺れに相当する振動で加振したところ、開口部が大きく採られた南面の変形量が26分の1と、限界とされる30分の1以上に変形したが、ほかの3面はいずれも変形は少なく、外周部の損傷も合板の浮きや石膏ボードのわずかな傷みにとどまった。その後、新潟県中越地震の余震相当の加振を行なったが、変形量は40分の1程度と安定していた。

 今回の実験結果について、坂本委員長は「加振により相当大きな変形で建物がねじれたが、変形があったとしても耐震等級3の仕様にしておけば大きな揺れに対して充分持ちこたえられることが実証できた」とコメントした。同研究会は、これまで3年間かけて行なってきた実証結果を一般消費者に公開する予定。また、今後は木造軸組工法だけでなく、2×4工法、木質ラーメン工法、ログハウスなどにまで範囲を広げ、実大振動実験による耐震性の検証を行なっていきたいとしている。


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