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2030年の東京の都市や住宅のあり方を議論/森記念財団

講演会の様子
「人口減少などかつてない状況に直面する東京が豊かな都市となるためにも、今、今後の都市計画を見直さなければならない」と話す伊藤氏

 森ビル(株)のシンクタンクである(一財)森記念財団は24日、昨年12月に刊行した研究報告書「2030年の東京 part3 成熟した世界都市東京の街づくり」をもとに、講演会を開催。約250名が参加した。

 同報告書は、東京オリンピック終了後の2030年における成熟した世界都市・東京の期待すべき姿と、その具体化の道筋を探るもの。少子高齢化と空き家問題に着目し、東京都区部において、民間の空き家の積極的活用と新耐震設計以前の都営住宅の大胆な用途転換を提案している。詳細は過去のニュース参照。

 会の冒頭、同財団の理事長である伊藤 滋氏は「東京が生活多様性を実現し、成熟した世界都市を目指すためには、東京の人口が減少に転じる2030年、さらにその先を見据えて、都市計画のあり方は大きく変わらなければならない。今日はさまざまな専門家の皆さんと検討していきたい」と挨拶した。

 基調講演では同報告書をもとに同財団都市整備研究所上級研究員の西尾茂紀氏が、今後の東京のまちづくりに必要なポイントについて解説。30年までに解決すべき事項として、安全とサスティナビリティの確保、空き家問題の解決、高齢化問題の解決、グローバル化への対応を挙げた。それを踏まえた上で、東京都区部で相当な面積を占める都営住宅のセーフティネット住宅化および同住宅に防災やグローバル化に対応した施設の合築、空き家リノベーションによる安価で広い住宅の提供などを提案した。

 続いて行なわれたパネルディスカッションでは、伊藤氏の司会のもと、パネリストに、西尾氏のほか、都市政策研究所長の原田敬美氏、國學院大學法科大学院教授の磯部 力氏、東京農業大学名誉教授の進士 五十八(しんじ・いそや)氏、(一財)医療経済研究・社会保険福祉協会医療経済研究機構研究主幹の白川泰之氏を招き、「生活多様性都市・東京の構築に向けて」をテーマにパネルディスカッションを開催した。
 パネリストは、グリーンエコライフや自然共生社会構築の必要性、アジアからの留学生にとって暮らしやすいまちづくりのあり方、「眠れる資産」の有効活用と法的観点からのハードル、民間主導の高齢者が暮らしやすい住環境整備方法など、それぞれこれからの東京に必要な都市や住まいのあり方について発表。伊藤氏は「それぞれの提案のポイントとなる点を組み合わせてまちに組み込むことができれば、深刻な高齢化や空き家問題に光が見えてくるのではないだろうか」等とまとめた。


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