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公的不動産の活用、需要の明確化がポイント

シンポジウムの様子

 (公社)日本不動産学会は3日、すまい・るホール(東京都文京区)で2019年度春季全国大会シンポジウム「街づくり視点での公的不動産の有効活用」を開催。官民連携しての公的不動産の有効活用について、取組事業者が事例を解説した。

 基調講演では、大東公民連携まちづくり事業(株)社長の入江智子氏が「北条まちづくりプロジェクト」(大阪市大東区)を紹介。同プロジェクトは、同市の人口が、隣接する大阪市や人気の高い北摂エリアへ流出し続けていることから、まちの魅力向上を目指してPPP手法を活用し、点在する公的資産を一体的に再開発。借り上げ公営住宅、民間賃貸住宅、生活利便施設、公園等の整備を行なう。19年7月より建築物工事着工、20年春に完成する予定。

 同氏は、「公的不動産は、過去に大量の公的資金が投入されたことで、周辺マーケットとのバランスが崩れ、需要が低下している。加えて、建物の維持管理に関しては適切な予算が割かれず、結果荒廃し、一層市民が寄り付かなくなる」と課題を分析。「需要を明確にするためにテナント先付けの逆算開発を行なうこと」、「コミュニティが生まれるような施設づくりを行なうこと」等、竣工後の運営・維持管理をポイントに計画を進めていくと話した。
 「まだ着工していないが、生活利便施設に入居するテナントが開発地を活用してマーケットを開催するなど、すでににぎわいが生まれ始めた。竣工後も周辺住民の生活に役立ち、入居テナントや運営する当社の利益も追求できる施設とし、サスティナブルなサービスを提供する」(同氏)。

 その後のパネルディスカッションでは、同氏に加え(株)オガール代表取締役の岡崎正信氏やハイアス・アンド・カンパニー(株)執行役員兼東洋大学大学院経済学研究科公民連携専攻客員教授の矢部智仁氏らが登壇し、公民連携による公的不動産の活用の課題点について議論した。公的不動産活用の取り組みが増えない理由について、「行政側も民間企業も互いに情報不足」、「公的なサービスは“みんなのために”が基本だが、意味のある施設をつくるためには明確なゴールが必要」といった指摘がなされた。


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